2021年11月30日
四国電力株式会社

2021年11月 社長定例記者会見の概要

 

 令和3年11月30日、長井社長が今年最後となる定例記者会見で一年を振り返り、「伊方発電所を巡る動向」、「冬期の電力需給」および「国内外での脱炭素に向けた動きの加速とエネルギー情勢」について説明しました。

【伊方発電所を巡る動向】
 伊方発電所3号機については、来月2日に原子炉を起動し、一昨年12月以来、1年11カ月ぶりに運転を再開する予定です。

 これまでを振り返りますと、昨年1月、広島高等裁判所で運転差止を命じる仮処分命令が出されましたが、本年3月、異議審において、同仮処分命令を取り消す決定をいただきました。これは、伊方発電所が地震や火山事象等に対する安全性を十分に有しているとの当社の主張が、裁判所に認められたものと受け止めております。
 また、先月には、テロ攻撃など万一の緊急時でも発電所の安全性を確保する特定重大事故等対処施設が竣工し、運用を開始しました。これにより、伊方発電所は従前よりさらに安全性を高めることができたと考えております。

 一方で、昨年1月に連続トラブルが発生、また本年7月には、過去の保安規定違反が判明し、地域の皆さまに多大なご心配をおかけしました。
 皆さまからの信頼を裏切る結果となり、私自身、忸怩たる思いであります。当社としては、これらの事案を重く受け止め、実効性ある再発防止策を策定し、着実に実施しているところです。
 今後も、技術力の維持・向上はもとより、発電所に勤務する一人ひとりの原子力安全に対する意識の一層の向上に努めるとともに、そうした取り組みを丁寧にご説明し、地域の皆さまのご理解をいただきながら、伊方発電所を運営してまいりたいと考えております。

 本年3月で、東日本大震災から、ちょうど10年が経過しましたが、当社としては、福島第一原子力発電所の事故の教訓を忘れることなく、改めて「あのような事故は決して起こさない」との強い決意のもと、伊方発電所の安全性・信頼性向上に不断の努力を重ねてまいります。

【冬期の電力需給】
 本年1月、厳しい寒波による暖房需要の増加や、悪天候による太陽光の発電量低下に加え、一部事業者の発電トラブル停止により火力発電所の高稼働が続いたため全国的に発電用燃料の在庫が減少したことなど、様々な要因が重なった結果、全国で電力の需給ひっ迫に陥りました。
 また、この冬も、四国を含む西日本エリアにおける来年2月の供給予備率が3.9%という、安定供給を行う上で最低限必要な3%をかろうじて確保できる見通しで、過去10年間で最も厳しい状況であります。

 こうした厳しい見通しとなった背景には、近年、太陽光の増加に伴い卸電力市況が下がり、発電事業の採算性の悪化により全国大で高経年火力の休廃止が進んだ結果、国内の供給力が減少しているという状況があります。
 社会の効率を追求するエンジンとして「市場」における競争を活用する一方で、エネルギーという生活や産業に不可欠なインフラに対して必要な投資が適切に行われる仕組みが十分でないため、今後、持続可能性という長期的な観点から、こうした仕組みが制度設計全体の中にビルトインされる必要があります。

 伊方発電所3号機は、四国における安定供給の要となる基幹電源であり、来週以降つつがなく運転再開を果たし、安全かつ安定して運転できるよう全力で取り組みます。また、その他の電源等もトラブルが発生しないよう、設備の運用・保全に細心の注意を払い、燃料在庫を十分に確保するなど、電力の安定供給に万全を期してまいります。
 お客さまにおかれましても、日常生活に支障のない範囲で、効率的な電気の使用にご協力いただけますと幸いです。

【国内外での脱炭素に向けた動きの加速とエネルギー情勢】
 今年は、国のエネルギー基本計画が3年ぶりに改定され、「2050年カーボンニュートラル」に向けた長期展望と、それと整合的で野心的な2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標(2013年度比で▲46%)が打ち出されました。また、その目標を踏まえ、2030年度の電源構成において、
・再生可能エネルギーについて、主力電源化に向けて最優先で取り組み、
・原子力は、引き続き、安定的な利用を推進する一方で、
・火力については、安定供給を大前提に、できる限り割合を引き下げる、とりわけ非効率石炭のフェードアウト
 を着実に推進する
との方針が示されました。

 また、このほどイギリスで開催されたCOP26でも、石炭火力の今後の取り扱いについて、「段階的な削減に向けた努力を加速する」とした合意文書が採択されました。

 一方、足元のエネルギー情勢に目を転じると、脱炭素化の世界的潮流を受け、化石燃料の開発投資が抑制基調となっている中、コロナによるダメージからの世界経済の回復に伴う需要の急増に供給が追いつかず、エネルギー資源の価格が高騰しており、企業活動から消費者の暮らしまで、大きな影響が出ています。
 こうした中で、エネルギー政策の転換に踏み切る国もあります。欧州では、これまで原子力への依存度を下げる立場をとっていたフランスが、原子力発電所の建設を再開する方針を打ち出すなど、改めて原子力の役割を重視する動きも出てきております。
 将来の脱炭素に取り組みつつ、足元でエネルギーをいかに確保し、コストをどう抑えるか。各国にとって、そのバランスのとり方は非常に悩ましい問題です。
 こうした状況に鑑みても、資源の乏しい我が国のエネルギー政策においては、安全性を大前提として、安定供給、経済効率性、環境適合を同時達成する、いわゆる「S+3E」の視点が重要であり、昨今の全国的な供給予備率の低下を踏まえれば、中でも特に安定供給に主眼を置くことが重要であると考えております。

 当社は、本年3月、2030年度を見据えた長期目標と目指すべき将来像を掲げた上で、2025年度までの5カ年をターゲットとした具体的な取り組みと目標を取りまとめた新たなグループ中期経営計画を発表しました。
 当社は、国内外で事業環境が大きく変化する中で、エネルギー供給を支える責任ある事業者として、「電源の低炭素化・脱炭素化」と「電気エネルギーの更なる活用」の推進を通じて、「2050年カーボンニュートラル」へ挑戦していくことで、持続可能な社会の実現に貢献してまいりたいと考えております。

 「電源の低炭素化・脱炭素化」の取り組みとして、伊方発電所3号機の安全・安定稼働の継続や火力の高効率化とともに、再生可能エネルギーの新規開発に積極的に取り組むこととしております。
 今年は、愛媛県久万高原町での新たな水力発電所の建設に着工したほか、高知県での陸上風力発電事業や、坂出市におけるバイオマス発電事業への参画など、再生可能エネルギー開発の拡大に向けた取り組みが動き出した年でありました。
 今後も、こうした取り組みをさらに加速させ、まずは、開発目標として掲げる「2030年度までに50万kW」の早期達成に向けて、国内外で、またグループ一丸となって取り組んでまいる所存であります。

【最後に】
 以上、今年一年を簡単に振り返ってまいりましたが、今年は、当社創立から70年の節目の年でもありました。
 これまで当社は、電力の安定供給を通じて、四国地域の皆さまの暮らしや産業を支え、豊かな地域社会づくりに貢献できるよう努めてまいりました。
 この間、電気事業は、小売の全面自由化や送配電事業の法的分離など、一連の電力システム改革に加え、デジタル化や分散化、脱炭素化、さらには人々の生活様式や消費行動の変化など、大きく構造変化しております。
 こうした時代の移り変わりや、社会構造の変化をビジネスチャンスと捉え、新たなサービスや事業を創出・育成していくことで、将来にわたり、お客さまから愛され、選択され続ける企業となることを目指すとともに、そうした取り組みを通じて、当社の事業基盤である四国の活性化にも貢献してまいりたいと考えております。


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