平成17年6月28日
四国電力株式会社


伊方発電所3号機 空調用冷凍機の損傷の原因と対策について


 通常運転中の伊方発電所3号機(加圧水型、定格電気出力89万キロワット)で、空調用冷凍機の期間外定期点検において、羽根車の回転音に僅かに高い徴候が確認された冷凍機Dを念のため分解点検したところ、5月12日、17時00分頃、冷凍機の羽根車の入口部が一部損傷していることを確認しました。
 本事象によるプラント運転への支障はなく、また、環境への放射能の影響もありません。
 本事象は、法律に基づく国への報告事象です。

(5月12日お知らせ済み)
 原因調査の結果、空調用冷凍機Dの期間外定期点検において、
  圧縮機の分解点検を行って組み立てた際に、羽根車主軸の中心と羽根車カバー(ケーシング)の中心が僅かにずれた状態で組み立てられ、羽根車カバーに取り付けられているシールリングと羽根車が接触しやすくなっていた
  その後の試運転時の自動停止試験において、羽根車の振動が通常運転時よりも大きくなったため、羽根車とシールリングが強く接触し、その摩擦力で損傷に至った
ものと推定されました。

 当該冷凍機については、羽根車とシールリングを新品に取り替えることとし、取り替えに当たっては、羽根車カバーの取付位置を測定器で計測してずれを調整し、運転時に羽根車とシールリングが接触しないように組み立てます。
 また、作業要領書に、そのずれを調整する手順を追記することとします。

 なお、3号機の他の3台の空調用冷凍機には異常は認められておらず、1,2号機の空調用冷凍機は構造が異なることから本件と同様な事象は発生いたしません。


添付資料 「伊方発電所第3号機 空調用冷凍機の損傷について」の概要
別添−1 伊方3号機 空調用冷水系統概略図
別添−2 空調用冷凍機 圧縮機断面図
別添−3 原因推定メカニズム概要図
報告書 伊方発電所第3号機 空調用冷凍機の損傷について
 
以 上

添付資料

「伊方発電所第3号機空調用冷凍機の損傷について」の概要


1.事象発生の状況
 
 伊方発電所第3号機は、定格熱出力一定運転中のところ、空調用冷凍機の定期点検を実施中、4月27日、28日の空調用冷凍機3Dの試運転において圧縮機の回転音が通常より僅かに大きいことが確認された。(振動値は許容値内であった。)
 その後、点検準備を整え当該機を分解点検した結果、5月12日17時、圧縮機の羽根車(吸込部)とシールリングの一部が損傷していることを確認した。
 
 
2.状況調査結果
 
  (1) 外観目視調査
   
  1. 羽根車
    吸込部先端の全周に摺動傷および欠損が確認されたが、それ以外の部位には損傷は認められなかった。
  2. シールリング
    シールリングの内表面および外表面に、摺動傷が確認されるとともに一部が破断していた。また、内表面に金属付着物が認められた。
  3. バネ座金
    バネ座金の内側の一部に変色が認められたが、変形、損傷は認められなかった。
  4. 主軸等
    主軸、羽根車カバー(ケーシング)等に変形、変色、損傷は認められなかった。
 
  (2) 内部調査
     ベーンコントロール装置部に金属粉が確認されたことから、組成分析を行った結果、損傷した羽根車およびシールリングと同じ成分であることが確認された。
 
  (3) 破面観察
   
  1. 羽根車(吸込部)
    ・破面は熱影響を強く受け、黒く変色していた。
    ・破面の金属組織観察の結果、高温下で強度低下した樹枝状晶(デンドライト)境界および結晶粒界から破壊した破面が確認された。
  2. シールリング
    ・内表面に瘤状の金属付着物が認められた。なお、金属付着物の組成分析を行った結果、損傷した羽根車およびシールリングと同等の成分であることが確認された。
    ・破面の金属組織観察の結果、高温下で強度低下した樹枝状晶(デンドライト)境界および結晶粒界から破壊した破面が確認された。
     以上のことから、羽根車とシールリングが接触し、羽根車およびシールリングの一部が高温となったことで強度が低下し、摩擦力により損傷に至ったものと推定された。
 
 
3.原因調査
 
  (1) 製作状況調査
     材料調査および寸法測定結果から、問題は認められなかった。
     
  (2) 保守状況調査
     今回の定期点検における分解組立手順を確認した結果、作業要領書通り行われていた。また、組立時に羽根車を手動で回転させ、羽根車とケーシング内の各部との接触音のないことを確認するとともに異物混入のないことを確認し、組立を行っていた。
 
  (3) 組立寸法調査
     圧縮機の各部の寸法の測定を実施した結果、全て公差範囲内であったが、各部の嵌合部の隙間等を累積評価すると、最大で0.89mmのずれが生じるおそれがあり、その状態で組み立てた場合、羽根車とシールリングとの隙間が1.15mmから0.26mmに減少することが判明した。一方、運転中の羽根車の振れは最大で0.35mmと推定され、羽根車の振れが大きくなった場合には、羽根車とシールリングが強く接触する可能性があることが判明した。
 また、組立の際、羽根車の主軸の中心とケーシングの中心のずれを調整しておけば、羽根車の振れが最大に達した場合でも、羽根車とシールリングが強く接触することはないことが確認された。
 
  (4) 試運転状況調査
     分解点検後に実施した自動停止試験および負荷試運転の影響を調査した結果、
    自動停止試験時には、冷媒ガスの流量を調整するベーンが全閉となる場合がある
    ベーンが全閉となった状態で圧縮機を運転した場合、圧縮機内の流体に乱れが生じ、羽根車の振動が通常運転時より高くなる
     ことが判明した。
 このことから、ベーン開度が全閉となった際、羽根車の振動が大きくなり、羽根車とシールリングが接触しやすい状況になっていたものと推定される。
 
 
4.推定原因
 
 圧縮機の組立の際、羽根車を手動で回転させ羽根車とケーシング内の各部が接触していないことの確認は行っていたが、この方法では、ずれの状況を確認し確実に調整することができないことから、僅かにずれが残り、羽根車とシールリングが接触しやすい状態で組み立てられた。
 この状態で組立後の自動停止試験を実施した際、ベーン開度が全閉となり羽根車の振動が通常運転時よりも大きくなったため、羽根車とシールリングが接触して高温となり強度が低下し、摩擦力により羽根車とシールリングの一部が損傷したものと推定された。
 
 
5.他の空調用冷凍機の評価
 
 3号機の当該機以外の空調用冷凍機3台については、前回点検時において、ベーン開度が全閉となった状態での運転を経験しており、特に問題が認められておらず、その後も問題なく運転できていることから、同様な事象は発生しないと考えられる。また、1、2号機の空調用冷凍機については、構造が異なっており、最大のずれを考慮しても羽根車とシールリングが接触しないことを確認していることから、同様な事象は発生しない。
 
 
6.対  策
 
  (1) 当該機については、羽根車及びシールリングを新品に交換する。
  (2) 当該機については、羽根車の主軸の中心とケーシングの中心の位置を測定器で計測してずれを調整することにより、運転時に羽根車とシールリングが強く接触しないように組み立てる。
  (3) 作業要領書に、ケーシングの取り付け時に、羽根車の主軸の中心とケーシングの中心の位置を測定器で計測し、ずれを調整する手順を追記する。
 


以 上

別添−1 伊方3号機 空調用冷水系統概略図
別添−2 空調用冷凍機 圧縮機断面図
別添−3 原因推定メカニズム概要図

別添−1


別添−2


別添−3



伊方発電所第3号機 空調用冷凍機の損傷について

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 ・ 報告書 本文 [PDF 17.3KB]
 ・ 上記報告書の添付資料 [PDF 1.04MB]


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