06/刈り取ったばかりのサトウキビ。茎にたっぷりと糖分が蓄えられている★07/手前の2本はサトウキビの脱葉に使用する専用の鎌。奥の1本は根元を切る際に使用する08/糖分が低い梢頭部などを取り除きながら、手作業で刈り取っていく収穫作業★★写真提供:二木亜矢子05/潮風を受けても倒れないよう茎の中程に紐をかけたサトウキビ畑に立つ秋吉さん夫妻。「これにより畑には光が差し込み、風が通り抜けます」と話す 太平洋に面した高知県幡多郡黒潮町は、カツオの一本釣り漁業の町。また、年間の平均気温は約17度と温暖で、降水量も多いことかみないか)」と声が掛かった。声の主は研究会の酒井貢みつぐさん。「面白そうだからやってみようか」と、秋吉さん夫妻は軽い気持ちで、2015年(平成27)からサトウキビの栽培を始めた。 入野地区の土壌は砂地で水はけがよく、入野海岸から吹き込む潮風はミネラル分を含んでいる。そんな地の利を味方に付けたサトウキビ栽培は、2月頃の圃ほ場じょう整備から始まる。日当たりの良い畑に有機肥料をすき込み、植え付けの準備を行う。3月半ばからは植え付けを始め、約1カ月で発芽したら、分ぶん蘖けつを待つ。分蘖とは根元から伸びた新芽が枝分かれすること。分蘖が多いほど収穫量は増える。「分蘖した茎は、垂直に伸びていきます。日を追うごとに面白いくらい成長するんですよ」と秋吉さん。夏場は草取りをしながら、茎に紐をかけて真っ直ぐ伸ばす。これにより光合成を促し、ミネラル分を含んだ潮風を畑に通す。 気温がぐっと下がり始める11月初旬、サトウキビの茎の中に糖分ら、水稲や花か卉きなどの農業も盛んに行われている。かつて入野海岸に面した入野地区は「入野砂糖」の産地でもあった。その伝統を復活させようと、1987年(昭和62)に結成されたのが「入野砂糖研究会(以下:研究会)」。結成当時、製糖の経験者は数名残っており、その指導のもと製糖所を建て、サトウキビ栽培と黒糖作りに取り組み始めた。 以降、賛同する人が増え今や会員は25人。定年退職した人や兼業者がそのほとんどを占めている。そんな中、専業で取り組んでいるのが、農園「イノタネアグリ」の秋吉隆雄さんと和香さん夫妻だ。「黒糖作りを生なり業わいにするとは思ってもいませんでした」と話す秋吉さんは、2005年(平成17)、黒潮町の豊かな自然に惹かれて大阪から移住。林業に従事しながら、自家用の米や野菜作りに取り組んでいた。 移住から10年目のある日、農作業をしていた秋吉さん夫妻に、「サトウキビを作らんかよ(作ってが蓄えられたら、いよいよ収穫の時。専用の鎌で葉を落とし、糖度の低い梢しょう頭とう部を切り落とした茎を搾汁機で搾る。このサトウキビジュースを釜で煮込んで、徐々に糖度を上げていく。 刈り取ったサトウキビは、できるだけ新鮮なうちに製糖作業ふとした出会いからサトウキビの栽培を開始サトウキビの糖度を生む黒潮町の日照と潮風【入野砂糖】IRINO SATOU高知県幡多郡黒潮町入野060807053
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