ライト&ライフ12月号
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■まなべ商店※入野さとふを販売愛媛県四国中央市豊岡町長田168-10896-77-4422営業日と時間は要問い合わせhttps://manabeshoten.theshop.jp/ 愛媛県四国中央市土居町は、瀬戸内海式気候により、温暖で雨が少ない。その気候を利用し、藩政時代末期には黒糖作りが始まっていた。西条藩の一部(現在の四国中央市など)にて「甘かん蔗しゃ(サトウキビ)栽培に着手した」という記録も残されている。その後、紀州から砂糖作りの名人を招き、讃岐から技術を導入したとの記録もある。水利の乏しい畑でもよく育つサトウキビは、この地域の貴重な農作物として、藩の重要な財源であった。しかし、この地の黒糖も昭和に入り衰退の憂き目に遭う。 当時のことを知る60代の人たちが顔を合わせると、昔話に花が咲いた。「子どもの頃、サトウキビをおやつ代わりに齧かじっていた」、「牛に石臼を碾ひかせてサトウキビを粉砕し、黒糖を作っていた」などと思い出を語り合ううち、誰からともなく「自分たちには時間が十分にある。もう一度、黒糖を作ってみないか」という声が上がった。有志数人は2010年(平成22)、「ロハス倶楽部」を結成。まずは遊休農地を借りて、サトウキビの栽培を始めた。当初は製糖設備がなかったため、収穫したサトウキビを黒潮町へ運び、「入野砂糖研究会」の工場を借りて製糖した。 賛同者も収穫量も増えた2年後、自前の製糖工場を建設。黒潮町までの往復の手間が省け、黒糖作りにいっそう専念できるようになった。2015年(平成27)には、より強固な組織にしようと「ロハス企業組合(以下:ロハス)」に改松山自動車道11山の神公園伊予三島豊岡郵便局大地川豊岡小まなべ商店土居IC13JR予讃線サトウキビとともにあった人々の暮らし左上/「四国の良いものを多くの人に知ってほしい。黒糖もその一つ」と話す眞鍋さん。雑誌制作、ブロガーを経て「まなべ商店」を開業した上/眞鍋さんが生産者や加工者に会い、選りすぐった品だけを置いた店内13/ロハスの大広さん。「課題は後継者の育成。そのためにもビジネスとして成り立たせることに注力しています」と話す作業の重要性を強く感じるようになった秋吉さん。よりサトウキビの成長を促すために、分蘖までの間、畑にビニールをかけて温める工夫も始めた。また色や味の異なる数品種のブレンドにより、さらにおいしい黒糖を生み出したいと試行錯誤している。「毎年、前年よ【どい黒糖】DOI KOKUTOU愛媛県四国中央市土居町13黒糖の魅力を多くの人に伝えたい 黒糖をどのように食卓に取り入れるのか、四国産の食品を中心に取り揃えている「まなべ商店」の店主・眞鍋久美さんに聞いた。 「普段使っている砂糖をそのまま置き換えて使用してください。黒糖には粒状と液状のものがあります。溶けやすさを考慮して使い分けるといいですね」。 大粒は煮物に、小粒は合わせ調味料などすぐに馴染ませたい料理に、ボカ(糖蜜)はヨーグルトやアイスクリームにかけて…と黒糖の出番は多い。とりわけ和食に使うと照りとコクが際立ち、おでんの隠し味に使ってもおいしい。 「黒糖は、ミネラルが豊富でビタミンも含まれています。お子さんに、大粒の黒糖を飴玉がわりに舐めさせるのもおすすめ」と眞鍋さん。かつてサトウキビとともに暮らした先人たち。その伝統が受け継がれていくことを願う眞鍋さんだ。Voiりも良いものを目指し、農作業に向き合っています」と秋吉さん。 黒糖の重量は、サトウキビの10%にまで減る。歩留まりの悪さは高い純度の証。黒糖の深いコクは、秋吉さん夫妻ら生産者の苦労の結晶といえる。大切に味わうことで、その苦労に報いたい。5

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