ょ1りきか 7 3 鳴門市でれんこん栽培が本格的に始まったのは、1946年(昭市の沿岸地域の水田が塩害に見舞われたため、稲作が困難になった。そこで先人たちが着目したのがれんこん。れんこんは塩害に強いことから、転作する農家が相次いだ。れんこん専業の「仲須農園」の仲須真理さんは、父親が始めたれんこん栽培を夫の清さんとともに受け継いだ。「鳴門れんこんの栽培は体力勝負です」と真理さん。 れんこんの収穫といえば、水圧掘り(水掘り)を行う地域が多い。だが鳴門市内の圃ほ場じうの多くは、昔ながらの熊手掘り(手掘り)が行われている。というのも、鳴門れんこんが育つ土壌は肥沃な粘土質。高圧の水をかけても、土を取り払うのが難しいのだ。 収穫前には圃場の水を抜き、ショベルカーで表面の土を取り除く。長男の之ゆ法のさんらは、1本1本、熊手を使って傷をつけないよ和21)の昭和南海地震発生以降。うに丁寧に掘り出していく。粘土質の土壌からほんの少し顔を覗かせたれんこんの「芽」を頼りに、熊手を入れる場所を見極めている。熊手を入れる場所を間違えれば、れんこんに傷が付いてしまう。粘土に足を取られながらの過酷な作業を慎重に進めていく。「大変ですが、粘土質の土壌で育つれんこんは、圧力に負けまいと身が引き締まるのです。鳴門れんこんの価値はこの粘土が生み出しているんです」。収穫したれんこんはきれいに土を洗い流して、箱に詰める。これらもすべて手作業だ。れんこんの旬は晩秋から冬にかけて。だが収穫は初夏の約1カ月を除いて、ほぼ一年中行われる。3月頃に種れんこんを植え付け、それが収穫できるのが8月半ば。この時期にとれたものは「新れんこん」と呼ばれ、瑞々しくあっさりとした食感が持ち味だ。その後、圃場で成長させながら順次掘っていき、前年に植え付けたれんこんの収穫が終わるのは7月初め。すべて掘り切った後の約1カ月だけ、作業が休みとなる。仲須農園の作付面積は約16ヘクタール(東京ドーム約3・5個分)もある。そのうち3ヘクタールが自園所有で、それ以外は耕作放棄地となった圃場を順次借り受けたことで増えていった。一方伝ってくれていた人たちが、高齢化により作業が困難になってしまうという事態が発生。人手の確保が急務となった。そこで大きな力となってくれたのが、幼稚園児の頃から「れんこんを作る」と宣言していた之法さん。宣言通りに農業大学校卒業後はれんこん農家となり、家業を盛り立てている。で20年ほど前から、長年作業を手粘土質の土壌が育む極上の鳴門れんこん仲な須ず農園こだわりの栽培方法を守り続ける人増えていく圃場に対して力となった家族の存在
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