み214523 5 フラワーデザイナーとして活躍していた齋藤住す子こさんは、代々続くれんこん農家に嫁いだ。幸いなことに義父母や夫の理解があり、大好きな花の仕事を続けてきた。ウェディングブーケなど美しい花の世界に没頭していたが、夫を見送ってから、どこか頭の片隅で「このままだと齋藤家とれんこんの関わりがなくなってしまう」と考えるようになった。転機となったのは2013年(平成25)、地元のれんこん農家の女性会から、「6次産業化商品コンクールに手を貸してほしい」と相談を受ける。 住子さんが思いついたのは、れんこんのピクルス。「輪切りにしたれんこんが、花のように愛らしいことに気付いたんです。これを食卓で感じてもらいたいというのが原点」と住子さん。その結果、れんこんピクルスは会長賞を受賞した。この評価に勇気を得た住子さんは、ピクルス作りを事業化しようと考えるようになった。しかし作ることはできても、どう販売していいのか皆目見当がつかない。そこでサポート役を買って出たのが、息子の彰さん。企業の海外進出支援の仕事に就いていた彰さんは、いわばマーケティングのプロ。他のピクルスとの差別化を図るために、贈答にも適した高級品にするという方針を決め、専門機関で加工品の製造技術を学んだ。自宅倉庫を改装してキッチンを整備し、れんこんピクルス「花れんこん」の製造がスタートした。 「花れんこん」で使用するのは、収穫から24時間以内の新鮮なれんこんのみ。細すぎるので通常は廃棄されてしまうこともある先端の一節目、柔らかな芽、蓮の実なども余さず使う。れんこんを無駄にしないだけではなく、それぞれの食感や味わいの違いにより、魅力を深く知ってほしいと願ってのことだ。調理方法や味付けにもこだわり抜いた。すべて手作業で皮を剥き、カット。調味液は、和三盆糖を加えた醸造酢に、本枯節でとった出汁をブレンド。やさしい酸味のピクルスに仕上げた。滑り出しは順風満帆。ANA国際線のビジネスクラス機内食、JR東日本新幹線グランクラスの軽食に採用され、各所で取り扱われるようになった。ほっそりとしたガラス瓶に詰められたピクルスは、クコの実やパプリカの彩りを添えており、目論見通り土産や贈答用として重宝された。売れ行きが伸びるにつれて、切り落とした端や折れたものなど余材も多く出るようになった。それらを「無駄にしたくない」と「れんこんポタージュ」も開発し、販売を開始した。デザインとマーケティング生かしたのはそれぞれの得意技花れんこん高付加価値の加工品を生み出している人老若男女に好まれるやさしい味わい■鳴門ピクルス 花れんこん徳島県鳴門市大津町段関字東の越106http://www.hana-renkon.com088-624-8358
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