9_『大日本植物志』に掲載されたユキノシタ科の植物シコクチャルメルソウの植物図の原画(高知県立牧野植物園 所蔵)国分川←至高知市内幼少期に培った画力で完成させた『牧野式植物図』いました」と橋本さん。当時、日本の植物分類学は草創期にあり、国内で見慣れない植物が見つかっても新種かどうかの判断は、海外の研究者に委ねられていた。当然のことながら学名も海外で付けられていた。だが富太郎は、「日本で見つかった新種には日本人が学名を付けるべきだ」と考えていた。 その想いは、1889年(明治知県内で発見した日本固有種の多年草に「ヤマトグサ」と名付け、自身が創刊に関わった『植物学雑誌』に論文を発表したのだ。これが日本固有種を日本人が発見し、 「ヤマトグサ」は4月から5月和名を付けて日本の学術雑誌に発表した国内で最初の例となった。にかけて可憐な花を咲かせる。その様子は高知県立牧野植物園で見られる年もある。 橋本さんが考える第2の要素は卓越した画力。「当園でも富太郎が描いた植物図を多数所蔵し、その一部を展示していますが、植物の特徴を的確に捉え、精緻に描かれた図は『牧野式植物図』と呼ばれています」。 『牧野式植物図』は多くの個体を観察した上で、描こうとする個体 49が典型的・標準的なものであるかどうかをしっかりと吟味。全体図に加えて、生殖器官や栄養器官などの部分図、解剖図、拡大図、時間の経過による形態の変化などをバランスよく表現している。橋本さんは「こうした画力は、少年時代に夢中になった写本により培われたのではないでしょうか」と推測する。そして第3の要素は、全国に広げたネットワーク。「富太郎は植物分類学の普及・教育活動にも熱心で、沖縄県以外の全都道府県に足を運び、講演や指導を行っていました」と橋本さん。地方でのフィールドワークでは、黒山のように富太郎の周りに人々が集まり、彼が動くと黒い山が動くと言われるほどの人気ぶり。10111210_貴重な資料が展示された牧野富太郎記念館展示館11_富太郎が発見した「ヤマトグサ」が見られる年もある★12_南園で植物に囲まれた牧野富太郎像高知県立牧野植物園■高知県立牧野植物園高知県高知市五台山4200-6開園時間/9:00~17:00(最終入園16:30)休園日/年末年始(12月27日~1月1日) 2023年(令和5)は5月30日、 10月30日、11月27日入園料/730円(高校生以下無料)駐車場/有り https://www.makino.or.jp★…高知県立牧野植物園 提供富太郎が逝去した翌年の1958年(昭和33)に開園。植物図など貴重な資料約60,000点を収蔵しており、約8haの広大な園地にはゆかりの植物など3,000種類以上が植栽されている。園内には「牧野富太郎記念館」や「50周年記念庭園」「温室」などのたくさんの見どころがあり、繰り返し足を運ぶ人も多い。高須公園五台山公園高知南IC高知東部自動車道195323762023.03088-882-260122)に実現することができた。高土佐の自然が導いた植物界の巨人・牧野富太郎高知県立牧野植物園牧野富太郎を知る上で訪ねたい施設
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