徹底した感染症対策で安心して楽しめる場に高知のソウルフード調理や接客に専念できるのだ。もう一つ特徴的なのは、店内に客席がある店舗によっては、飲み物を注文すれば料理の持ち込みができる店舗があること。出前さながらに市場内の他店から料理を取り寄せる強者もいるそうだが、「市場全体で盛り上がろう」という大らかさが、いかにも高知らしい。 見知らぬ同士が意気投合し、会話を交わすのが「ひろめ市場」の醍醐味。だが、コロナ禍ではそうした楽しみ方は一切できなくなった。「ひろめ市場からクラスターを出してはならない」と、8人掛けテーブルは定員を半分に減らしてソーシャルディスタンスを確保。3年間で3回の長期休業にも踏み切った。運営とテナントが一丸となり、マスクをしていない客には着用を促した。これに対して、「ひろめ市場は厳しすぎる」という不満の声も聞こえてきたそうだが、これも高知の大切な文化「おきゃく(酒宴)」を守るため。「コロナ禍で生まれた『お酒を飲むこと=悪いこと』というような風潮に対して、きちんと感染症対策をすれば楽しむことは悪いことではないと伝えたかったのです」と西岡さんは振り返る。不特定多数が出入りし、飲食をする施設でありながら、「ひろめ市場」からクラスターが出ることはなかった。行動制限がなくなった今年のゴールデンウイーク、「ひろめ市場」は朝から満席状態。5月5日の来場者数は2万人に上り、場内のあちらこちらで「日常」を満喫する人の笑顔が見られた。「私たち管理スタッフも、店舗のスタッフさんも、忙しさに右往左往しながらも『これこそが、ひろめじゃき!』とうれしい気持ちになりました」と顔をほころばせる百田さんだ。コロナ禍では、やむを得ず閉店 ら 5する飲食店もあったが、一方で出店をした店もある。30年以上前から「土佐の日曜市」で人気の「日曜市のいも天(有限会社大平商店)」は、昨年11月にひろめ市場店をオープン。アフターコロナに向けて、「高知を元気づける場所になれば道みち」貴たかとさ出ん店はを、「決日め曜た市。は店食長べの歩矢やき原はが基本。ひろめ市場店は、ドリンクと一緒にいも天を食べられるのが売り。いも天をトッピングしたアイスクリームなどさまざまなメニューがあり、テラス席でゆっくりと味わっていただくことができます」と話す。 いも天は、ほっくりとした食感の「土佐紅」というさつま芋に、独自レシピの衣をかけて、揚げたてを提供する。やさしい甘みと食感は、老若男女から人気。高知に帰省したオールドファンが、「日曜日じゃないきに、食べられんがと思うちょった!」とうれしそうに買い込むこともある。また下校途中の学生が寄り道し、熱々を頬張る姿もほほ笑ましい。「多くの人が訪れるひろめに店を出して、本当に良かったと思っています」と矢原店長は頷く。 「ひろめ」で出会える090812101108_ずらりと並んだお総菜から好きなものを選べる店。鯖寿司や田舎寿司などご飯ものもいろいろ09_ニンニクなど薬味を盛り付けた鰹のたたきはダントツの人気。グループなら食べ比べもおすすめ10_テキパキと使用済みの食器を片付ける「食器センター」のスタッフは、縁の下の力持ち的な存在11_肉料理なら、幻の和牛と呼ばれる土佐あかうしが味わえる「プティ・ヴェール」12_「バラエティ豊かな店が揃っているので、2度3度と足を運んでほしい」と話すひろめカンパニーの浜田泰伸企画営業部長
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