ライト&ライフ6・7月号
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ほあ  5日本の珊瑚漁発祥の地で水揚げされる血ちか赤珊瑚頭に浮かんだイメージを確かな技術で形にうしょうわた その美しい姿から「海のお花畑」とも呼ばれる珊瑚。「樹木のように枝分かれしていたり、色鮮やかであったりすることから、植物と思っている人もいますが、実はれっきとした動物。イソギンチャクやクラゲなどと同じ刺しう胞動物の一種です」と話すのは、珊瑚の宝飾品・工芸品のデザインから製作、販売までを行う株式会社ワールドコーラルの近藤健治さん。珊瑚は、珊瑚礁を形成する造ぞ礁性珊瑚と単体で成長する非造礁性珊瑚に大別される。工芸品や装飾品として加工される宝石珊瑚は非造礁性珊瑚の一種で、その骨格は人間の歯ぐらいの硬さがある。 人類と珊瑚の関わりは古く、旧石器時代のドイツの遺跡から、装身具にしたと思われる珊瑚の破片が見つかっている。日本では室町時代以降、上流階級の間で地中海産の古こり渡珊瑚が普及。1812年(文化9)には、高知県室戸岬で初めて国産の珊瑚が採取された。「漁師の釣り針に珊瑚がかかり、領主に献上されたとの記録が残っています」と近藤さん。しかし当時、江戸幕府は浪費やぜいたくを禁じる倹約令を出しており、土佐藩はこれに抵触することを懸念したのか、珊瑚の水揚げを禁じていた。 明治時代になり、珊瑚漁は解禁されて、高知県内では一気に盛んになる。主な漁場は室戸岬や土佐清水市、宿毛市沖。特に評判を呼んだのは、透明感と深みのある赤色で、宝石珊瑚の最高峰ともいわれる血赤珊瑚。国内の海域でしか採取されず、高知県は最も水揚げ量が多い。珊瑚の一大産地である高知県には、おのずと加工職人も集まり、競い合うことで技術が向上していった。宝石珊瑚は、太陽光が届かない水深80〜1200mの深海に生息しており、骨軸の直径は1年間に約0・3㎜しか成長しないという研究データがある。極めてゆっくりとしたスピードで成長することからも、珊瑚の貴重さが分かる。「だからこそ少しも無駄にすることはできません」と話すのは、職人歴開催される珊瑚原木の入札で仕入れた、色も形状もさまざまな原木から型取りをし、カットして彫り込むことで製品を仕上げていく。珊瑚には斑ふ(珊瑚の骨)と呼ばれる白い斑点や色ムラ、白濁、深海から引き上げた際の亀裂などがある。「これらが表に出てこないように加工することが何よりも重要」と堀内さん。手先の感覚で、頭の中のイメージを形にしていくという一連の作業は、全工程で高い加工技術が求められる。堀内さんの工房には、たくさんの原木が保管されている。「どう加工するかを決め切れず、何十年と寝かせているものもあります」0911・12_父親が営んでいた工房を弟さんや妹さんと引き継いだ堀内さん。研磨、彫刻などの工程を分業でこなしている10121140年の堀内強志さん。高知県で

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