ライト&ライフ10・11月号
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生みの苦労を乗り越えて得たのは確かな手応えとさでん交通の「ステンレスタンブラー」または阿佐海岸鉄道の「DMVカレー」を各10名さまにプレゼント!た。この区間を結ぶ路線を整備することは、沿線の自治体の悲願となったのです」と話す。その手段として15年ほど前から目を付けたのが、デュアル・モード・ビークル(以下:DMV)。鉄道とバスの2つの機能を持つ乗り物だ。 開発・導入にはいくつものハードルがあった。まずは鉄路と道路、その両方を走れる車両の開発。マイクロバスをベースにした車両は乗降口が進行方向に対して左側にしかなく、高さも列車に比べると低い。そのため、既存のホームでは安全に乗降ができない。また海部駅、甲浦駅ともに高架駅であるため、どうやって道路と接続するかも問ンをジ設(置バ。ス海か部ら駅列、車宍しへしい喰くの駅変、更甲地浦点駅)題となった。「設備投資に潤沢な資金があるわけではありません。いかにしてコストを抑えるかに頭を悩ませました」と大谷さん。道路と鉄路の接続について目を付けたのは、海部駅の1つ手前、JR四国の阿波海南駅である。地上駅であるこの駅を買い取り、モードインターチェのホームには空きスペースに専用ホームを設置した。 こうしたインフラ面だけではなく、既存のバス路線との共存も課題に。料金設定やバス停の位置などの検討が重ねられた。関係者の努力で数々の課題をクリアし、2021年(令和3)12月25日、ついに待望のDMVが運行を開始。初年度の乗客数は約4万人、運賃収入は対前年比232%、グッズ販売や有料視察受け入れなどの営業外収益は同1045%と驚異的な伸びとなった。 「今は手応えと課題、その両方を実感しています」と大谷さん。DMVを目当てにした観光客は目に見えて増えており、アンケート調査では利用者の95%が観光客であることが分かった。それに伴い、地域経済効果も派生している。一方で1台の座席数は18席(+立席3)と少ない。そのため観光シーズンには臨時便を出すなどの対応を行っている。他の鉄道会社と違って、運転士  6は鉄道車両とバスの両方の免許が必要だ。「それに伴って、人材の確保・育成には、いっそう力を入れているところです」と大谷さん。さらに安全運行のためのシステムは、常にアップデートを行っている。 列車とバスの二刀流であるDMVには、もう一つ大きな役割がある。それは、大規模災害が発生した際の移動手段としての機能である。地域の交通網が途絶した場合、DMVの機能を活用し、残った線路と道路をつなぐことで交通網を維持。被災地への支援を行うことが期待されている。 視察は年間20自治体ほど受け入れている。「実際に、導入を検討している地域もあるようです。先進地域として、国内や海外にノウハウを提供し、DMVの輪を広げたい」と大谷さんは話す。 地域密着型の鉄道会社は、大きな夢に向けて走り続けている。252620212423_バスから列車へモードチェンジする のは2カ所。運転士がしっかりと目  視確認を行っている24_バスモード時は鉄輪を内部に格納25_海岸線を走るバスモード。爽快なド  ライブ気分を味わえる26_車両を模したペーパークラフト。モー  ドチェンジもできる2320_駅にはシェアサイクルが完備されてお  り、周辺観光の足として役立っている21_「赤字からの脱皮を目指す」というシャレ  で誕生した宍■駅の駅長は伊勢エビ22_鉄道路線にはトンネルが19カ所あるが、  うち1つは山がない不思議なトンネル222024.10-11■阿佐海岸鉄道株式会社 徳島県海部郡海陽町宍■浦字正梶22-1 0884-76-3701 https://asatetu.com/

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