ライト&ライフ5・6月号
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ね ん ど う   5自然体に生きられる場所を探して愛媛県へ修行を通して学ぶ日本人の精神性神伝武術 自じ然道んけんそうあん 自然豊かなアメリカ・ペンシルバニア州で育ったベンジャミン・グロスさんが、幼少期から興味を持ったのは日本の武道。空手や居合、柔術拳法などに夢中になり、2009年(平成21)には武道修行のために日本へ。「根源的な武道である古武術を学びたい」と古武術道場・竹内流備中伝京都道場に入門した。古武術とは剣術や柔術、居合術など日本古来の武技の総称。真摯に鍛錬に取り組んだグロスさんは、道場の師範代になるまで内弟子として修行を重ねた。また、修行中、師匠の親戚の昌美さんと出会い、お互いの考え方に共感。交流が始まった。 修行を突き詰めていくうち、何よりも大切なのは『自然体であること』という考え方に至ったグロスさん。昌美さんも「豊かな自然のなかで、四季に寄り添って暮らしたい」と考えており、結婚を機に二人は移住を計画。2016年(平成28)11月、移住先探しの手始めに、昌美さんの出身地である愛媛県西予市へ出向く。すると最初に見せてもらった家が気に入り、すぐに契約。敷地内には2棟の家があったため、1棟を住まいに、もう1棟を自分たちでリフォームし「おめぐり庵」という民宿をオープンした。古武術や自給自足に興味を持つ人から、ファミリーまで、故郷に帰ってきたかのような温かさで迎え入れている。古武術だけではなく修験道などさまざまな修行を行ったグロスさん派・。手た移氣住けのの之う目内ち的流の愛あ一たつ宕ごだは大いみ、明ょ自う神じ身ん直じのき傳流でん武術の修行場として自然道を創設すること。「自然道とは、再生や循環を適える生き方の探究。武術だけではなく食や農業、森づくりなど、人間としての営みに必要な事象が含まれます。これにより生きる力や体の使い方を身に付けることができるんです」とグロスさん。 昨年春、山裾に自然道の修行道場「神し験草庵」が完成した。職人の指導のもと、グロス夫妻や仲間たちの手で建てられた道場は、萱葺き屋根を載せた円錐形が特徴的。建物に使われているヒノキや竹、萱は近隣の山から切り出したもので、材料集めに4年、施工に2年を費やした。道場の周囲には田畑や山林が広がり、調理のための「山のキッチ10121110_「どう生きていくかを考えたとき、愛媛のこの場所が私たちを導いてくれました」と話すグロスさん。昌美さんも含めて、周囲の人たちは親しみを込めて「ベン」と呼んでいる11_自宅とおめぐり庵は道の駅「どんぶり館」に近い便利な場所にある。それでいて、のどかな風情を満喫できる12_山奥にある一軒家を紹介するテレビ番組でも取り上げられた「神験草庵」。周囲の田畑では米や野菜などを栽培グロスさんは、土台となる竹内流と司■(しせん)流の流祖と同じく、断食しながらの修行に臨んだ。「手氣之内流は心身を鍛え、精神的成長を促す修行法。その根幹には『陰陽』の哲学があり、体の動きが自然の法則と調和することを目指しています」と話す。伝授する技法は、剣術、棒術(5種類)、鎖鎌術など多岐にわたっている。それぞれが体と心を磨くための術であり、グロスさんは「武の技を通して己と対峙し、陰陽を体現する道」と考えている。たけのうち手氣之内流とは

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