1.発生の状況 |
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伊方発電所第1号機は、第21回定期検査を実施中であり、平成14年5月25日に中部電力(株)浜岡2号機で発生したトラブルの対応として、小口径配管の点検を実施していたところ、安全注入系統テストラインの小口径配管4箇所でテープとみられる付着物を発見した。
このため、当該箇所の液体浸透探傷検査(以下、「PT」という)を実施したところ、18時20分頃に2箇所、その後、21時40分頃に1箇所(合計3箇所)に点状の有意な指示を確認した。
なお、本事象による環境への放射能の影響はなかった。 |
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2.調査結果 |
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(1)研削手入れ及びPT |
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有意な指示が確認された3箇所について、配管厚さを測定しながら研削手入れを行い、PTを実施した結果、3箇所とも線状の指示が確認された。このため、当該箇所を切断して詳細調査を実施することとした。 |
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(2)有意な指示が残った3箇所のひびの詳細調査及び付着物調査 |
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表面ミクロ観察を実施した結果、いずれの部位も塩化物応力腐食割れの特徴である枝分かれした粒内割れが認められた。 |
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配管内面からのPTの結果、いずれも有意な指示は認められなかった。 |
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深さが最大であった箇所の破面分析の結果、ひびの先端部に塩素が認められた。 |
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付着物の成分分析の結果、炭素と塩素が主成分であったことから、塩化ビニールテープが熱分解したものと推定された。なお、塩化ビニールテープは、伊方1号機の建設時に識別用として配管外表面に貼り付けていた。 |
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配管表面について、付着塩分量を測定した結果、付着物除去後の配管表面は101mg/m2、近傍配管表面は2mg/m2程度であった。 |
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(3)安全注入系統テストラインの調査 |
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当該箇所以外の安全注入系統テストラインを調査した結果、77箇所に付着物が認められ、PTを実施したところ6箇所に有意な指示が確認された。当該部について、配管厚さを測定しながら研削手入れを行い、PTを実施したところ、全ての箇所の指示は消滅した。 |
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(4)運転・保守状況の調査 |
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安全注入系統テストラインは、通常運転中、毎月実施する高圧注入ポンプ定期運転時に燃料取替用水タンク水が短時間通水される以外は、滞留状態となっており、燃料取替用水タンク水の温度(約30℃)あるいは格納容器内の雰囲気温度(約30℃〜40℃)に近い温度であることから、平成12年10月に発生した「1号機充てん配管耐圧検査中の漏えい」事象を反映して実施した点検の対象とはなっていなかった。
今回の事象を踏まえて、過去の履歴を改めて確認したところ、建設時の温態機能試験時の安全注入系統逆止弁漏えい試験において、当該配管に高温水が流れたことが判明した。 |
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3.塩化物応力腐食割れに関する調査 |
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(1)塩化ビニールテープによる応力腐食割れの発生条件 |
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1号機充てん配管耐圧検査中の漏えい事象における塩化ビニールテープによる塩化物応力腐食割れの発生条件は以下のとおりであった。 |
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塩化ビニールテープが120℃以上で加熱され、熱分解により塩化水素が発生する。 |
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その後、中性塩化物環境下で50〜100℃の温度に保持され、割れが発生、進展する。 |
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(2)今回の事象に関する評価 |
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a.塩化ビニールテープの熱分解 |
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付着物の外観、成分分析および配管表面の付着塩分量測定結果から、塩化ビニールテープは熱分解しており、これは過去の履歴等の調査結果から、建設中の機能試験時に逆止弁の漏えいに伴う高温水が流れたことによるものと推定される。 |
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b.割れの発生と進展 |
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1号機充てん配管耐圧検査中の漏えい事象においては、保温材で配管が覆われていたことから、塩化物イオンは保温材に含まれるナトリウムイオンやカルシウムイオン等と共存し、中和されて中性塩化物環境下、50〜100℃の温度に保持されたことにより、塩化物応力腐食割れが発生した。
一方、本事象では、安全注入系統テストライン配管は保温材で覆われておらず中和されないことから、酸性塩化物環境下に近い状態にあったと考えられる。一般にステンレス鋼は酸性塩化物環境下では室温でも応力腐食割れを起こし得ることが示されており、当該箇所はその後の運転中において、酸性塩化物環境下に近い状態で約30〜40℃の温度で長期間経過したことにより、塩化物応力腐食割れが発生し、進展したものと推定される。 |
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4.推定原因 |
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本事象は、配管表面に貼り付けた塩化ビニールテープが高温水により熱分解し、塩化物応力腐食割れが発生したと推定される。 |
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5.対 策 |
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(1) |
当該3箇所については、配管を取替えた。なお、研削手入れ後に指示が消滅した6箇所については、十分な厚さを有していることから継続使用する。 |
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(2) |
今回の事象は、通常運転中は低温であるものの、過去の試験等において一時的に高温となった配管で発生したものであるが、運転履歴調査では十分な温度履歴の確認ができない。このため、高温配管に接続され、高温流体が流入する可能性のある範囲について点検を実施した結果、当該テストライン以外には異常は認められなかった。 |
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(3) |
高温流体が流入する可能性がなく、100℃以下の配管については、塩化ビニールテープによる塩化物応力腐食割れの可能性はないが、漏えいが発生すると原子炉の運転に支障を及ぼす系統および放射能を含む系統でこれまで未点検の全ての範囲について、念のため今後2定検で計画的に点検または取替えを実施する。 |
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(4) |
伊方2、3号機については、「建設時の温態機能試験時の安全注入系統逆止弁漏えい試験において1号機のような高温流体の流入実績がないこと」等から、直ちに問題となることはないが、1号機と同じ範囲について今後3定検で計画的な点検または取替えを実施する。 |
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