伊方発電所における通報連絡事象の概要(平成15年8月分)
1.伊方3号機 炉内出力分布測定における制限値超過について
8月6日18時25分、通常運転中の伊方3号機において、定期的に実施している炉内出力分布測定を実施したところ、燃料1体の最上部で出力評価値(測定された中性子の数から一定の計算諸元を用いて出力を評価)が制限値を約1%超えていることが確認された。このため、伊方発電所原子炉施設保安規定に基づき、原子炉出力を2%降下した。
これは、運転中の炉心最上部周辺には炉心から放出された中性子が炉心の周りにある水により反射されて集まり、その中性子群が影響したものと考えられる。このような炉心最上部周辺に中性子が集まる傾向は一般的に燃焼が進むにつれて顕著に見られ、燃料の健全性に問題はない。
また、炉心上部の出力評価の方法について再検討し、定期検査直後の諸元に基づき評価していたこれまでの方法から、ウラン燃料の燃焼の進み具合に応じた諸元に置き換えて、出力降下前の出力評価値について再評価を行った結果、制限値を下回っていたことが確認された。
その後、炉内出力分布測定を再度実施し、ウラン燃料の燃焼の進み具合に応じた諸元に基づき評価を行い、制限値を下回っていたことを確認し、8月8日1時5分、原子炉出力を復帰させた。
なお、今後の炉心上部の出力評価にあたっては、ウラン燃料の燃焼の進み具合に応じた諸元に基づき評価することとする。
[炉内出力分布測定] |
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炉内のウラン燃料の燃焼(核分裂)状況を詳細に把握するために実施しているもので、毎月1回、可動型の検出器を炉心内(50箇所)に挿入し、炉心内の中性子の数を測定することにより、燃料の出力分布を評価している。 |

2.伊方3号機 新燃料開梱作業中における作業員の負傷について
8月11日9時30分頃、通常運転中の伊方3号機において、燃料取扱建屋内で8月7日に搬入した新燃料輸送容器を開梱し、新燃料貯蔵庫に移送する作業をしていたところ、作業員1名が輸送容器の一部で右手人差し指の指先を挟み負傷したため、当該作業員を病院に搬送した。
医師の診察の結果、右示指指尖部損傷(3週間の通院・加療、休業見込みなし)と診断された。

3.伊方3号機 タービン動主給水ポンプ油清浄器ガス抽出機の不具合について
8月15日8時41分、通常運転中の伊方3号機において、二次系のタービン動主給水ポンプ油清浄器ガス抽出機の異常を示す信号が発信し、当該ガス抽出機が自動停止した。
点検の結果、当該ガス抽出機の電動機のベアリングが損傷していたため、ベアリングを取り替え、復旧した。
なお、当該ガス抽出機の停止によるタービン動主給水ポンプへの影響はなかった。
[タービン動主給水ポンプ油清浄器ガス抽出機] |
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ガス抽出機は、タービン動主給水ポンプの潤滑油を浄化している油清浄器の中に溜まるガス等の不純物を除去するための装置。
タービン動主給水ポンプは蒸気発生器へ水を供給するポンプ。 |

4.伊方3号機 主変圧器保護リレー装置の不具合について
8月20日10時02分、通常運転中の伊方3号機において、主変圧器保護リレー装置の異常を示す信号が発信した。
点検の結果、主変圧器保護リレー装置に異常はなく、主変圧器保護リレー装置を自動診断する装置内の回路の接続部で一時的な不良が発生し、当該診断装置が正常に動作しなかったものと考えられた。このため、当該診断装置の清掃を行い、再度、当該診断装置の動作確認を行い問題ないことを確認した。
なお、主変圧器は多重に保護されているため、本事象によるプラントの運転に影響はなかった。
[主変圧器保護リレー装置] |
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主変圧器保護リレー装置は、主変圧器内部の故障(短絡や地絡)が発生した場合に、それを検知し、主変圧器を停止させる装置。 |

5.伊方発電所 モニタリングポスト用埋設ケーブルの損傷について
8月21日13時17分、伊方1・2号機および3号機の中央制御室にある野外モニタ盤等に、電源異常を示す信号が発信し、野外モニタ盤等のNo.4モニタリングポストの指示値が表示不能となった。
調査の結果、No.4モニタリングポスト本体に異常はなく、当該モニタリングポストの現地での指示値も正常であった。このため、当該モニタリングポストから中央制御室等に信号を送る回路を調査した結果、発電所構内で行われていた掘削工事において、信号を送る回路のケーブルを切断および電源ケーブルを損傷させていたことが判明した。
その後、信号ケーブルおよび電源ケーブルの応急復旧作業を行い、中央制御室等で正常な指示が表示されることを確認した。
なお、中央制御室等の指示値が表示不能の間は、当該モニタリングポスト内に指示値を確認するカメラを設置し、中央制御室で連続的に監視を行った。
今後、応急復旧したケーブルの本復旧作業を行う予定である。
[モニタリングポスト] |
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伊方発電所敷地内に4箇所設置しており、設置場所周辺の大気中の放射線量を測定している。また、これとは別に伊方発電所敷地外において、設置場所周辺の大気中の放射線量や、ほこり・ちりなどに含まれている放射能量を測定するモニタリングステーションを1箇所設置している。 |

6.伊方2号機 補助蒸気配管からの漏えいについて
8月22日14時10分頃、通常運転中の伊方2号機において、補助蒸気を供給するための配管より漏えいがあることを運転員が確認した。このため、当該配管を隔離し、点検を実施した。
その結果、当該配管の曲管部近傍からの漏えいと判明したため、漏えい箇所の配管を取り替え、漏えいがないことを確認した。
なお、当該配管の隔離による発電設備への影響はなかった。
[補助蒸気] |
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補助蒸気とは、純水装置、空調設備など付帯設備で使用する蒸気。 |

伊方発電所における通報連絡事象の報告書概要(平成15年7月分他)
1.伊方1号機 定期検査における一次冷却水の系統内漏出について
○事 象
7月3日12時50分頃、第21回定期検査中の伊方1号機において、一次冷却系統漏えい検査を行っていたところ、加圧器逃がしタンクへ一次冷却材の僅かな流入が認められた。
○原 因
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調査点検の結果、 |
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温度上昇の状況から、加圧器安全弁Bもしくは加圧器安全弁を取り付けるための配管に設置しているドレン弁からの漏えいと考えられること |
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加圧器安全弁Bを分解点検した結果、健全であったこと |
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ドレン弁を分解点検した結果、弁体・弁座シートに軽微な肌荒れがあったこと |
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から、原因は、当該ドレン弁の閉止操作時の締め付け力が不十分であったため、漏えい検査に伴う昇温昇圧の際にシート部に微小な隙間が生じ、加圧器逃がしタンクへの一次冷却材の流入に至ったものと推定される。
このため、加圧器安全弁Bおよびドレン弁の点検手入れを行い、再度行った一次冷却系統漏えい検査において、異常のないことを確認した。なお、ドレン弁の閉止操作にあたっては、専用の工具を用いて行った。 |
○対 策
・ |
今回と同形式の弁の閉止操作に当たっては、専用の工具を用いて実施する旨、チェックシートに反映した。 |
・ |
一次系手動弁の操作方法について、締め付け不足に起因する漏えいを防止する観点から、特に、高温高圧系統に使用している弁について専用工具を使用して行うよう、関係者に再周知・教育を行った。 |
2.伊方1号機 一次冷却材ポンプ封水注入ライン流量計計器元弁からの漏えいについて
○事 象
7月9日18時30分頃、第21回定期検査中の伊方1号機において、機器等の点検を終了し、一次冷却系統の高温・高圧停止状態でのパトロールを行っていた保修員が、一次冷却材ポンプ封水注入系統の流量計計器元弁から、3分間に一滴程度の僅かな漏えいがあることを発見した。このため、一次冷却系統の圧力、温度を低下させて、当該弁の弁内部品の取替および手入れを行った。
○原 因
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当該弁の分解点検の結果、 |
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弁を構成する部品に欠損・割れ等の異常は認められなかった |
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過去の点検記録からも弁蓋の締め付け管理等、組立作業に問題なかった |
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ことから、弁の開閉操作等に伴い弁内部の金属ダイヤフラムの締め付け状態が変化したため、部分的に締め付け圧力が低下し、漏えいしたものと推定される。 |
○対 策
これまでと同様に、定検時の巡視点検や漏えい検査の都度、当該弁を含む同型弁に漏えいがないことを確認し、通常運転時の弁の健全性を確保していくこととする。

3.伊方3号機 取水ピット水位計の不具合について
○事 象
7月10日20時20分頃、通常運転中の伊方3号機において、取水ピット水位計の異常を示す信号が発信した。
点検の結果、2系統ある取水ピット水位計のうち、片方の水位計の検出器(下流側)が動作不良であった。このため、当該水位計検出器を製造メーカにて修理した後、復旧した。
なお、残る1系統の水位計により除塵装置の洗浄運転を自動で行うことができるため、除塵装置の運転に影響はなかった。
○原 因
調査の結果、当該水位計検出器内の制御カードが故障したため、当該水位計検出器による水位の検出ができなかったものと推定される。
○対 策
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当該水位計検出器の制御カードを取り替え、取水ピットの水位および水位差が正常に監視できることを確認した。
なお、取水ピット水位計は、 |
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これまで長期にわたって本体取替を行っていないこと |
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現在の型式の水位計が製造中止となっていること |
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から3号機第7回定期検査において全て取り替えを実施することとする。 |

4.伊方発電所 硫酸第一鉄含有洗浄水の海域への流出について
○事 象
9月3日11時05分頃、伊方1・2号機取水ピット外側の岩場において、茶褐色の水が溜まっているのを当社社員が発見した。
調査の結果、1・2号機の硫酸第一鉄注入装置の点検に使用した機材の洗浄作業で、硫酸第一鉄を含んだ洗浄水を一般排水溝に排出したため、海に流出したことが判明した。
なお、付近の海水中の鉄濃度を測定した結果、異常はなく、環境への影響はなかった。
○原 因
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調査の結果、 |
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・ |
硫酸第一鉄注入装置点検における硫酸第一鉄の取り扱いを記述した要領書を作成していなかったため、洗浄水等の処理方法が明確になっていなかった |
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作業管理責任者は、薬品や油脂等を一般排水溝に直接排水してはいけないことは知っていたため、洗浄水を「側溝」に排水して良いか化学管理の担当者に確認した。その際のコミュニケーション不足から、化学管理の担当者は「側溝」を取水ピットへ排水される屋内の排水溝と思い、排水しても良いと回答した |
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ことから、洗浄水を一般排水溝に排出してしまったものである。 |
○対 策
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(1) |
硫酸第一鉄の取り扱いを記述した要領書を作成した。 |
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(2) |
伊方発電所内作業の安全に関する基本事項を定めている「構内安全統一ルール」に以下の項目を追加記載し、所員および全作業員に対し、入所時教育等で繰り返し周知徹底する。 |
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薬品や油脂等が含まれる排水は、管理して所定の処理を行うこと。少量でも一般排水溝に排水してはならない。 |
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作業内容の打ち合わせの際には、コミュニケーションを十分に図るため、5W1Hを確認し合い、内容が不明確な場合は現場等で確認する。 |
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(3) |
ワンポイントレッスン集に今回の事例を反映し、要領書の読み合わせ時等に教育を行う。 |
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(4) |
更に、今回の事象を踏まえ、発電所全体でヒューマンエラーの発生防止に向けた以下のような取り組みを進めていく。 |
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撲滅キャンペーン等の実施による発電所全従業員の意識高揚 |
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ヒューマンエラー防止に焦点を当てた、教育の追加実施および作業要領書の見直し |
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復唱や声かけを中心とするコミュニケーションの活性化と意思疎通の強化 等 |
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