1.事象の概要 |
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伊方発電所2号機第17回定期検査において、余熱除去系統の配管取替工事で、再使用する余熱除去系第二入口弁(2−8701B)の出入口接続配管の健全性を確認するため、液体浸透探傷検査(以下、「PT」という。)を実施したところ、5月20日9時30分頃、1箇所で有意な指示を確認した。
なお、本事象による環境への放射能の影響はなかった。 |
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2.調査結果 |
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(1)外観およびPT結果 |
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配管外表面には、内部流体の析出物やテープ等の付着物は認められなかった。 |
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PTを実施した結果、巾約30o、長さ約50oの範囲に、最大長さ約6oの線状指示と多数の点状の指示(最大で直径約1.5o)が認められた。また、指示が認められた範囲は、ほぼ長方形であり、テープが貼り付けられていたような形状であった。 |
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(2)破面等調査 |
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配管内面からのPTの結果、有意な指示は認められなかった。 |
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ひび部の破面観察の結果、破面は外表面側ほど濃い褐色であり、外表面で発生し進展したものと推定された。 |
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断面ミクロ観察および破面観察の結果、ひびの深さは最大のもので配管外表面から2.7oのところまで進展していたが、計算上必要厚さの4.26oは満足しており、強度上問題となるものではなかった。
また、ひびの形態は粒内割れであり、枝分かれした微小な分岐が多く認められ、塩化物応力腐食割れの特徴を示していた。 |
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ひび部の破面分析の結果、ひびの起点部、中央部、先端部に塩素が認められた。 |
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(3)運転状況の調査 |
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余熱除去系統は、原子炉起動・停止操作時および原子炉停止中に常温(約30℃)〜約180℃の範囲で使用することから、塩化ビニールテープから塩素イオンが熱分解・残留する可能性のある100℃〜250℃の領域に該当する。 |
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(4)保修状況の調査 |
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今回ひびが発見された箇所は、平成13年の第15回定期検査での付着物調査においてテープ(テープ跡)は発見されていないが、以下の理由から、建設中にテープが配管識別用として貼り付けられ、その後、平成8年の第11回定期検査時の供用期間中検査(以下、「ISI」という。)に伴うPT作業の際、テープを完全に除去したものと考えられる。 |
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当該部近傍の溶接線は、ISIとして計画的にPTを実施しているが、その際 にはPTを行う溶接線の前後約3pについて、前処理作業として表面磨きを行うとともに、前後約20p程度の範囲については入念な付着物等の除去及び洗浄液による洗浄を行っており、テープが洗浄範囲内にあれば、間違いなく除去される。 |
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当該部はISI対象の溶接線から約8pと近接しており、PT作業の洗浄範囲に含まれている。 |
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当該溶接線は、平成8年の第11回定検時にISIとしてPT作業を実施している。 |
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3.推定原因 |
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本事象は、 |
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ひびには、塩化物応力腐食割れの特徴である枝分かれした粒内割れが認められ、破面には塩素の付着が認められたこと |
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PT指示範囲は、長方形でテープが貼り付けられていたような形状であり、建設中に配管識別用として塩化ビニールテープを貼り付けられたと考えられること |
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当該配管には原子炉起動・停止操作時に高温水が流れること |
から建設中に配管識別用として貼り付けられた塩化ビニールテープが、その後の原子炉起動・停止に伴う高温水の通水により熱分解し、塩化物応力腐食割れが発生したものと推定される。
なお、第15回定期検査(平成13年)から、1号機充てん配管の漏えい事象を受けて付着物調査を行ってきたが、それ以前の第11回定期検査(平成8年)のISIでのPT作業の際に、テープが完全に除去されてしまったため、付着物調査時には、当該部でその痕跡を発見できなかったものと推定される。 |
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4.類似事象の調査 |
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ISI作業のように付着物を完全に除去する可能性のある作業としては、配管取替工事がある。
その他の作業において付着物を発見しテープを取り外したとしても、ISI作業のように付着物を完全に除去することはないので、これまで実施してきた付着物調査で発見可能である。 |
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5.伊方2号機で実施する対策 |
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(1)ひび割れの認められた当該部位については配管を取替える。 |
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(2)今回定検での点検 |
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塩化ビニールテープによる塩化物応力腐食割れの可能性があり、かつ、テープ類を完全に除去したままで健全性を確認していない可能性がある箇所全数について、配管の調査・点検を行い健全性を確認する。
[点検範囲の考え方] |
a.塩化ビニールテープによる塩化物応力腐食割れの可能性がある系統 |
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・100〜250℃で加熱されるライン |
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・250℃以上で短時間(累計300時間以内)加熱されるライン |
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・高温配管に接続され、高温流体が流入する可能性があるライン |
b.テープ類を完全に除去したままで健全性を確認していない可能性がある箇所 |
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1号機充てん配管の漏えい事象を受けてテープ類を確実に除去し、PTを実施することを徹底した平成13年より前の定期検査(初回〜第14回定検)でISIを行っている箇所及び配管取替を行っている箇所 |
c.調査・点検箇所の範囲 |
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安全側に余裕を見て、溶接線前後それぞれ約50cmの範囲について、テープ跡等の付着物の有無を点検するともに配管外表面全面のPTを実施する。
また、配管取替範囲のうち既設配管との取り合い部については、ISIと同様の作業を行うことから点検対象とする。 |
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(3)今後計画的に行う点検 |
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塩化物応力腐食割れの可能性はないが漏えいが発生すると原子炉の運転に支障を及ぼす系統及び放射能を含む系統については、現在計画的に点検中のものと併せ、次々回定検までに、(2)項と同様の点検又は配管の取替を実施する。 |
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