1.事象発生の状況 |
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伊方発電所1号機(定格電気出力566MW)は定格熱出力一定運転中のところ、5月19日10時00分、伊方南幹線1,2号線の遮断器が開放して送電が停止し、1号機の電気出力が約30MWまで自動的に低下した。
このため、現場を調査したところ伊方南幹線1,2号線後備リレーが乙母線電圧低により動作していることが確認された。
その後、乙母線電圧低下原因を調査した結果、屋内開閉所内で工事中のガス絶縁開閉装置(以下「GIS」という。)の試験操作で発信された誤信号により伊方南幹線1,2号線後備リレーが動作したことが判明し、21時30分、伊方南幹線1号線の遮断器を投入し、送電を再開した。
なお、本事象による周辺環境への放射能の影響はなかった。 |
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2.現地調査結果 |
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現地調査結果より、今回の事象が発生した経緯は次のとおり。
現在実施中の2号機第17回定期検査(平成16年4月〜7月)および1号機第22回定期検査(平成16年9月〜平成17年1月予定)で、屋内開閉設備のGISへの取替を計画しており、このGIS設置工事において、GIS本体組立後の試験(主回路抵抗測定)のため主変圧器2号用甲、乙母線断路器を投入操作した際、ケーブル接続工事後の結線切り離し(他の設備への影響を無くする対策;以下「隔離」という。)がされていなかったことより、断路器の動作に連動する補助リレーが動作した。
その結果、乙母線PD(計器用変圧器)2次回路が接地中の甲母線PD2次回路と接続状態となり、乙母線PD2次側の電圧が低下した。
このため、乙母線PD2次回路で検出している乙母線の電圧低条件により、送電線後備リレーが動作し、伊方南幹線1,2号線ガス遮断器を開放した。 |
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3.要因調査 |
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本事象は、GIS本体組立後の試験の実施に際して、隔離が講じられていなかったことに起因したものであるため、GIS設置工事における関係者の対応状況について、要因調査を実施した。 |
その結果、本事象の原因は、 |
(1) |
試験要領書の作成・審査にあたって、その方法・手順および留意事項(チェックポイント)を定めたものがなかったことから、標準的な試験要領書で計画されたこと |
(2) |
この標準的な試験要領書が作業管理責任者および各作業責任者間のコミュニケーション不足により、試験条件に合わせた必要な隔離条件を追記する等の見直しが行われなかったこと |
から、本来必要であった隔離が行われず試験を実施した結果、操作した断路器に連動した補助リレーが動作し、甲・乙母線のPD2次回路が接続される回路が形成され、乙母線のPD2次回路の電圧が低下し、送電線後備リレーの動作により遮断器が開放され、送電停止に至ったものと推定される。 |
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4.対 策 |
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(1)当該工事に関する対策 |
a. |
GIS試験要領書については、試験条件に合わせた隔離の必要性について明確に記載するよう改訂した。 |
b. |
作業関係者合同のミーティングを開催し、そこで調整した内容がチェックシート等を用いて確実に情報連携されるよう体制を構築した。 |
c. |
ヒューマンファクター教訓シートを作成し、発電所および関係会社所員全員に周知徹底した。 |
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(2)要領書作成・審査等における抜本対策 |
a. |
「作業要領書作成手引き」の制定
ヒューマンエラー防止対策を含め、工事ごとに作業要領書作成時に反映すべき事項をまとめた「作業要領書作成手引き」を新たに制定し、作業要領書の作成および審査において、必要な記載事項が明記されていることを確認する。 |
b. |
「ヒューマンファクター検討会議」の設置
作業要領書が適切に作成されていることを確認し、ヒューマンエラーに関連する対応策を検討する「ヒューマンファクター検討会議」(委員長;発電所長)を新たに設置する。 |
c. |
情報連携の促進
多数の作業班が編成される工事については、作業関係者合同のミーティングを開催し、その調整内容がチェックシート等を用いて確実に情報連携されるようにする。 |
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また、関係会社の作業責任者クラスに対する発電所設備や系統に関する教育等の充実強化を図るとともに、ヒューマンファクター担当者を選任し、社外専門家の指導を得ながら、ヒューマンエラーや安全確保対策等に関する事例研究や教育等の継続的な活動を展開し、ヒューマンエラー撲滅に向けての意識の高揚と資質の向上を図る。 |