平成16年12月1日
四国電力株式会社


伊方発電所1号機 原子炉容器入口管台内表面の微小な傷の原因と対策について


 第22回定期検査中の伊方発電所1号機(加圧水型、定格電気出力56万6千キロワット)において、原子炉容器入口管台溶接部のレーザピーニング工事の施工前検査を実施したところ、11月14日、入口管台Bと1次冷却材入口配管との溶接部付近の内表面に微小な傷(最大約5o)が2箇所で確認されました。なお、運転中には、1次冷却材の漏洩の兆候は認められておりません。
 本事象による環境への放射能の影響はありません。
 当該箇所の超音波探傷検査を行った結果、検出できないほど傷が浅く(検出限界約3o)、管台内表面から僅かずつ研削しながら調査を進めていたところ、内表面から約3oの深さまで研削した時点でそれ以上傷が及んでいないことが確認されました。
 この結果、傷は、管台母材(炭素鋼)の腐食を防止するためのステンレス内張り(厚さ約5o)内に留まり、管台母材部まで達しておらず、管台の健全性には全く問題のないことが確認されました。

(平成16年11月22日までに発表済み)

 その後、詳細調査を行い、傷の形状調査と要因分析を行った結果、
  傷は工場製作時の局部的な補修溶接跡と推定される箇所に有り、補修溶接に使用されている600系合金は、1次冷却材に接している場合は条件によっては、応力腐食割れが発生する可能性があること
  これまでの国内外の事例から、補修溶接方法によっては、600系合金溶接部で応力腐食割れが発生するために十分な引張残留応力が発生し得ることが確認されたこと
から、本件事象は、工場製作時に600系合金で局部的な補修溶接を行ったことに伴い、当該箇所に高い引張残留応力が発生し、更に運転開始後に1次冷却材に接したことと相まって、応力腐食割れによるき裂が発生し、進展したものと推定されます。

 今後、当該箇所について、耐食性に優れた690系合金を用いて補修溶接を行ったうえで、引張残留応力低減のため当該部位にレーザピーニングを行います。
 また、伊方2、3号機については、これまでの供用期間中検査において問題は認められておらず、また、今回の傷の状況からみても、傷はステンレス内張り内に留まっており、構造強度上の問題はありません。
 なお、伊方発電所では、600系合金が1次冷却材に接する箇所について、国の指示に基づき超音波探傷検査及び外観点検を計画的に実施しており、この検査によって健全性を確認しております。




添付資料 「伊方発電所1号機 原子炉容器入口管台内表面の微小な傷について」の概要
報告書 「伊方発電所1号機 原子炉容器入口管台内表面の微小な傷について」
 
以 上

添付資料

「伊方発電所1号機 原子炉容器入口管台内表面の微小な傷について」の概要


T 事象発生の概要
 
 伊方発電所1号機(定格電気出力566MW)は、第22回定期検査において、原子炉容器入口管台の溶接部のレーザピーニング工事のための施工前検査として浸透探傷検査を実施したところ、平成16年11月14日14時30分、入口管台Bと1次冷却材入口配管との溶接部付近の内表面に微小な傷を確認した。
 微小な傷は、原子炉容器側から見て管台上部を0度として、約103度の位置に約5oの線状の指示(傷A)が、約105度の位置に最大長さ約4oの放射線状の指示(傷B)が、それぞれ認められた。
(添付資料−1)
U 調査結果
 
 外観点検、金属組織観察、超音波探傷検査及び研削調査等により傷の状況を確認するとともに、製造履歴、点検履歴及び運転履歴の記録調査を行った。
 
  (1)  外観点検
 目視点検を行った結果、当該部の外表面に漏えいは認められなかった。
 また、内表面の点検を行った結果、傷Aは、管台内部のステンレス内張りと管台・配管の溶接部との境界部にある約8o×約7oの補修溶接跡とみられる楕円状の部分に、傷Bは管台のステンレス内張り部の同じく補修溶接跡とみられる約7o×約6oの楕円状の部分にあることが確認された。
(添付資料−2)
     
  (2)  金属組織観察
 傷A・Bとも溶接金属の結晶境界に沿った割れが認められ、補修溶接跡とみられる楕円状の部分に留まっていた。
(添付資料−2)
     
  (3)  超音波探傷検査
 当該部について、内表面及び外表面から傷の状況を確認したが、検出限界(約3o)を超える傷は確認されなかった。
     
  (4)  研 削 調 査
 超音波探傷検査の結果、傷の深さは浅くステンレス内張り内に留まっている可能性が高いことから、当該部を0.5〜1o程度ずつ3回にわたり研削するとともに、都度、金属組織観察及び浸透探傷検査を行い、傷の形状等を調査した。
 この結果、3回目の研削により傷A・Bとも消滅したことから、傷の深さは約3o以下と推定され、ステンレス内張り内に留まっていることが確認された。
(添付資料−3)
     
   また、研削調査で発生した金属粉を用いて組成分析を行った結果、補修溶接跡とみられる楕円状の部分は600系合金であると推定された。
     
  (5)

 製造履歴等調査
 溶接の材料及び施工方法・検査、運転履歴、点検履歴等について過去の記録を調査した結果、問題は認められなかった。
 なお、聞き取り調査の結果、工場製作時に補修溶接を行った可能性があること及び補修溶接については記録を残す運用でなかったことを確認した。

     
V 要因分析
 
 調査結果から、製作時に生じる高温割れ若しくは運転中に発生する1次冷却材環境下における応力腐食割れ(PWSCC)が想定されることから、要因分析を行ったところ、以下の通り、傷の発生要因は、PWSCCによる可能性が高いと判断される。
 
  (1)  高温割れ
 高温割れは早い段階で割れが発生し、製作時の検査で発見される可能性が高く、製造履歴調査で問題が認められないことからその可能性は低い。
     
  (2)  PWSCC
調査結果から当該部は600系合金を用いた補修溶接跡と推定され、条件によっては、PWSCCが発生する可能性がある材料である
当該部は1次冷却材に接しており、600系合金は条件によっては、PWSCCが発生する可能性が否定できない環境下である
これまでの国内外事例から、補修溶接方法によっては、600系合金溶接部でPWSCCが発生する十分な引張残留応力が発生し得ることを確認した
     
  ことから、当該部において局部的な補修溶接を行ったことに伴い、高い引張残留応力が発生し、応力腐食割れの3因子(材料・環境・応力)が重なってPWSCCが発生する可能性がある。
 
W 推定原因
 
 本件事象は、局部的な補修溶接を行った当該部において、上記要因分析のとおり、応力腐食割れの3因子(材料・環境・応力)が重なってPWSCCによるき裂が発生し、進展したものと推定される。
 なお、PWSCCはステンレス内張りへは進展しないことから、傷は補修溶接内に留まり、傷の深さは内表面から約3o以下であったものと考えられる。
 
X 対策と対応
 
  (1)  当該部の対策
 溶接施工性と耐食性に優れた690系合金による補修溶接を行ったうえで、引張残留応力低減のため当該部位にレーザピーニングを行う。
     
  (2)  伊方発電所2、3号機入口管台の対応
 伊方発電所2、3号機については、これまでの供用期間中検査において、問題は認められておらず、また、今回の傷の状況からみても、傷はステンレス内張り内に留まっており、構造強度上の問題はない。
 なお、伊方2号機については、次回の平成17年度第18回定期検査において、伊方1号機と同様に原子炉容器内部構造物の取替工事を予定しており、今回と同様の浸透探傷検査を実施する。また、伊方発電所3号機は、平成15年度の第7回定期検査時に超音波探傷検査で健全性を確認している。
 今後も、伊方1、2、3号機の出入口管台については、(3)の検査を計画的に実施する。
     
  (3)  伊方発電所1、2、3号機600系合金使用箇所の対応
 600系合金を使用し、かつ1次冷却材に接する箇所については、国の指示に基づき、超音波探傷検査及び外観点検による健全性の確認を計画的に実施中である。


添付資料−1 原子炉容器入口管台微少な傷の概要
添付資料−2 金属組織観察結果
添付資料−3 研削調査結果
以 上



添付資料−1
原子炉容器入口管台微少な傷の概要


添付資料−2
金属組織観察結果


添付資料−3
研削調査結果




伊方発電所1号機 原子炉容器入口管台内表面の微小な傷について(報告書)

PDFファイルのダウンロード


 ・ 報告書 本文 [PDF 19KB]
 ・ 上記報告書の添付資料 [PDF 5.1MB]
 ・ (参考資料)用語説明 [PDF 236KB]


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