香川県丸亀市に住む尾崎美恵(おざきみえ)さんはフランスでの語学研修後に讃岐うどんがパリで人気を集めていることを知り、平成20年「NPO 四国夢中人」を設立。欧州と四国をつなぎ、四国の魅力をPRしてきた。現在は、瀬戸内海に浮かぶ塩飽諸島の魅力を広める尾崎さん。その奮闘する姿を紹介する。
誰もが夢中になる塩飽諸島(しわくしょとう)の魅力を広めたい

設立以来、フランス最大の日本紹介イベントへの四国ブースの出展や、欧州のブロガーを四国に招いての遍路旅や俳句・俳人ゆかりの地を巡るツアーなどを開催してきた「NPO 四国夢中人(以下:夢中人)」。「地域のためになる企画を思いつくたび、とにかく走り出していました」と笑う尾崎さんだが、夢中人を設立するまでは専業主婦兼お母さん。行政や企業との接点は全くなく、イベントを行う資金もない状態だったという。「協力を仰ぐため、企業のトップや行政の責任者に半ば強引に会って企画の提案を繰り返しました」と話す尾崎さんの純粋さと熱意に心を動かされた人も多い。
欧州へ向けて四国の魅力をPRするなかで気付いたのが、瀬戸内海の島々の魅力だった。なかでも尾崎さんにとって身近な島である塩飽諸島の魅力を欧州に伝えたいと、平成28年にはフランス大使館や丸亀市などの協力のもと「塩飽諸島プロモーション事業」を開始。プロモーション映像の撮影で塩飽諸島へと足しげく通ううちに、島々の人たちと少しずつ親交を深めるようになった。
幻の唐辛子と呼ばれる「香川本鷹」の生産地・手島(てしま)は、島民約20人の小さな島だ。「夏休みなどに子どもや親戚が帰ってくるのを出迎えようと道沿いにたくさんのひまわりを植えているんです。その姿に感動した」と尾崎さんは当時を振り返る。
同時期、夢中人の活動を知り、どうしても会ってみたいと尾崎さんの元を訪ねたのが、当時京都大学在学中で大学内のサークル「農業交流ネットワーク」のメンバーであった尾崎純(おざきじゅん)さんたちだ。初めて会ったというのに、尾崎さんは塩飽諸島を熱心に案内してくれたそう。一緒に何かプロジェクトができればと意気投合し、平成29年3月から「塩飽諸島 手島の活性化プロジェクト」をスタートすることに。
学生とともに何度も島を訪れ、島の人たちの協力のもと幻の唐辛子・香川本鷹の苗植えや手入れができていなかった竹林の伐採、春の島遍路シーズンに向けての遍路道の清掃など、島の人たちとの交流を続けてきた。「これをきっかけに、手島に足を運んでくれる人が少しでも増えればうれしい」と手島自治会長の藤原当正(ふじわらまさただ)さんはいう。



2年目となる今年は「花と昆虫の楽園キャンペーン」を開始。数年かけて手島を花でいっぱいにしようというプロジェクトで、尾崎さんは昨年から準備のために学生や島の人たちと月に1度のペースで打ち合わせを重ねてきた。4月29日に行われたイベントには、花の苗を提供した「香川県立香川丸亀養護学校(以下:丸亀養護学校)」の生徒や香川県、協賛企業関係者など約90人が参加。約2,000ポットのキンセンカやラベンダー、シバザクラの花の苗を、手島港から手島自然教育センターに向かう道沿いに植え付けた。「自分の育てた植物を贈ることで島の人に喜んでもらえればと生徒たちが自ら参加を決めたんです」と丸亀養護学校の綾広記(あやひろき)先生はいう。さまざまな立場の人たちが美しい手島を守るために汗を流す様子は、まるで大きな家族のようだ。
「活動を通じて人の輪が広がっていく。地域に魅力を感じた人たちに持続してもらえる活動になれば」と尾崎さんは母の顔で話す。パワフルに走り続ける姿は、まさに「肝っ玉母さん」。「尾崎さんには参ったよ」と笑いながら手を貸す人たちを巻き込んで、人と人をつなぐ架け橋になっていく。





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