メニュー

ひとことジャーナル

~自分らしい働き方を考える~
「パートで働きすぎたらソン」って本当?

 パートをしたいけれど、「一定金額以上働いたら、ソンをする」と思っていませんか? パートの年収が一定金額を超えると、本人の税金と社会保険、さらには、パートナーの税金や家族手当に影響するため、複雑です。ただし、「働きすぎたらソン」ということはありません。自分が望む働き方をこの機会に考えてみてください。

税金&社会保険の分岐点
税金&社会保険の分岐点

妻の年収が夫婦の手取り収入に影響を与える分岐点は6つ。妻側では4つ、夫側では2つの年収がポイントとなります。(ここでは夫が会社員、妻がパートとして説明しています。妻が会社員、夫がパートという場合は読み替えてください)。

①100万円は…
 住民税の分岐点

妻の年収が100万円を超えると、妻に住民税がかかり始めます。

②103万円は…
 所得税の分岐点

妻の年収が103万円を超えると、妻に所得税がかかり始めます。

③106万円は…
 大企業のパートで働く人の社会保険の分岐点

妻が、従業員501人以上の会社で、週20時間以上働き、年収が106万円(月額8.8万円)以上になると、妻自身が厚生年金と健康保険に加入し、自分で保険料を納める必要があります。

④130万円は…
 社会保険の分岐点

妻の年収が130万円以上になると、夫の健康保険の扶養に入れないため、妻自身が健康保険料と年金保険料を納める必要があります。その際、勤務先に厚生年金と健康保険がある場合は、給料からこれらが天引きされますが、職場に厚生年金がない場合は、自分で国民年金保険料と健康保険料を納めることになります。

⑤150万円は…
 夫の税金の第1分岐点

妻の年収が150万円以下のときは、夫の税金を計算する際に、配偶者控除等として38万円全額を差し引くことができます。それにより、妻の年収が150万円までなら、夫の税金は増えません。そして、妻の年収が150万円超~201.6万円未満のときは、妻の年収が増えるにつれ、夫の税金を計算する際に差し引く配偶者特別控除の金額が段階的に減っていくため、夫の税負担が増えていきます。(夫の年収が1,120万円を超えると配偶者控除・配偶者特別控除の金額は減額され、1,220万円を超えると控除がなくなります)

⑥201.6万円は…
 夫の税金の第2分岐点

妻の年収が201.6万円以上になると、夫の配偶者特別控除は使えなくなり、妻がいることによる税金の減額はなくなります。

妻の年収による税金&社会保険の分岐点
実際、家計にどれくらい影響するの?

下の表は、夫が年収400万円の場合、妻の年収の変化により、妻がいくらぐらいの税金や社会保険料を納めるのか、また、夫婦の手取り収入を表したものです。

妻の年収と夫婦の手取り収入の例

この表から分かるように、妻が年収130万円を超えて自分で社会保険料を納めるようになると、年収120万円のときに比べて夫婦の手取り収入が少なくなります。これが、いわゆる「働きすぎるとソン」といわれる理由です。でも、1番下の段を見てください。妻が厚生年金保険に加入すると、老後は厚生年金も受け取れるようになります。年収132万円で20年間働くと、1年あたり約14万円の老齢厚生年金保険料を一生受け取ることができるのです。

その他にも、障害者になった場合の障害年金も手厚くなりますし、健康保険からは、産前産後の保障となる出産手当金や、長期間仕事を休むときの傷病手当金の保障も受けられ、長い目で見ればメリットもあるのです。

大事なのは今? 将来?
大事なのは今?将来?

実は今年、配偶者控除&配偶者特別控除に関する改正がありました。昨年までは、103万円が分岐点でしたが、今年からは150万円に拡大されました。ただし、配偶者控除の金額が上がっても、妻自身の社会保険料の130万円(一部では106万円)の分岐点や、夫の会社の家族手当も手取り収入には影響があるため、一部分だけでなく全体を見て考えることが欠かせません。

「今」を基準に収入を考えるのなら、社会保険料がかからない130万円未満で働く方が良いですが、働けなくなったときの保障や老後の年金アップなども踏まえると、社会保険に加入して働くほうがメリットがあります。

税金や社会保険の制度に関する知識は重要ですが、制度は時代によって変化します。制度に振り回されず、「自分の生き方」という面からも、働き方を考えてみてくださいね。

前野 彩

前野 彩

株式会社Cras代表取締役。FPオフィスwill代表。香川県出身、大阪府在住。

CFP®認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士。わかりやすく丁寧な解説が人気で、講演や子供向けマネー教育のほか、メディア出演も多い。近著には「本気で家計を変えたいあなたへ〈第3版〉」(日本経済新聞出版社)など著書多数。