豊田さんは、香川県まんのう町で約50万平方メートル(甲子園球場の約13倍)の森林(人工林)を管理する。約50年間、人工林を保全するため生育の妨げになる木を間引く「間伐」と、節ができないための「枝打ち」を行い、質の高いヒノキを育ててきた。
豊田さんの人工林は樹木の間から光が入り、大木の足元で育つ低木も緑色に輝く。現場にあった切り株を見つめながら、菅さんはほほ笑む。「製材すると、美しい肌目が出るんです。熊野や吉野といった有名なヒノキの産地にも引けを取らないほど美しい森です」と菅さん。この場所に一般の方を招き入れ、香川県産ヒノキのことを知ってもらうイベントを開きたい。そんな思いから伐採ツアーを企画した。
ツアー当日は、豊田さんがこれから伐採するヒノキや林業などについて説明をした後、枝打ちなどの作業を体験。その後、伐採の様子を参加者全員で見守る。
高さ20メートル以上に育ったヒノキが倒れる瞬間、地面が揺れる衝撃と風圧を感じる。「毎回、伐採ツアーの現場は、拍手と歓声に包まれます。目の前で伐採された木を使えば、家への愛着も、より一層深まるでしょう」と菅さん。
活動を始めてから17年間で、60本余りのヒノキが大黒柱になった。直径30センチのヒノキからは大黒柱を含めて4、5本の柱ができる。最近の住宅では柱を隠す構法が増えているが、菅さんはヒノキの美しさや伐採ツアーの記憶にいつでも触れることができるようにと、大黒柱を含む何本かの柱を、あえて見えるように設計するという。
「間伐」や「枝打ち」を終えた人工林は、光が差し込み周囲の空気が変わる