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ジャンピングふるさと 愛媛県鬼北町 さとびと

愛媛県南予地方の鬼北町では、全国1,700ほどの市区町村で唯一「鬼」の付く町名を活かした地域おこしを行っている。

ネガティブな印象を持たれがちな「鬼」のイメージを逆手に取り、「鬼」をキーワードに、さまざまな取り組みを行う同町を訪ねた。

愛着ある町名を活かした「鬼の町づくり」

鬼北町では、平成25年に町が主体となって「鬼プロジェクトチーム」を発足し、「鬼の町づくり」をスタートさせた。平成27年には、フィギュア制作で知られる企業に協力を仰ぎ、道の駅「広見森の三角ぼうし」にモニュメント「鬼王丸(おにおうまる)」を設置。翌年には2体目となる鬼王丸の母「柚鬼媛(ゆきひめ)」のモニュメントを道の駅「日吉夢産地(ひよしゆめさんち)」に設置した。そのリアルで躍動感のあるデザインは、メディアやクチコミなどで注目され、知名度が上がると同時に全国から観光客を呼び寄せるようになった。現在、そのチームを引き継いで企画運営を行っているのが、鬼北町役場 企画振興課の稲屋(いなや)浩明さんと谷岡一仁さんだ。

迫力のある鬼王丸が登場した当時は、実はここまで話題になるとは思っていなかったという二人。しかし、牙をむき、来場者をにらみつける姿が思いのほか好評。続く柚鬼媛はご覧のとおり、艶っぽく美しい姿で来場者を魅了し、老若男女問わない人気者となった。今では柚鬼媛のコスプレで訪れるファンの方もいるほどだという。設置されている道の駅「日吉夢産地」の林栄徳(ひでのり)支配人は「神戸や大阪からこのフィギュアを目的に鬼北へ来られたという方も増えた。まさに福の“鬼”ですよ(笑)」と話す。

道の駅「広見森の三角ぼうし」に立つ、迫力満点の「鬼王丸」。全長は約5mにもなる
道の駅「広見森の三角ぼうし」に立つ、迫力満点の「鬼王丸」。全長は約5mにもなる
「鬼の町づくり」の企画運営を行っている鬼北町役場 企画振興課の稲屋さん(右)と谷岡さん
「鬼の町づくり」の企画運営を行っている鬼北町役場 企画振興課の稲屋さん(右)と谷岡さん

“鬼”嫁たちが集まる愛あふれるコンテスト

現在、鬼北町の目玉イベントとなっているのが、平成27年度に始まった「愛ある鬼嫁コンテスト」。一見怖そうに見えても、夫のためを思い、あえて厳しい態度で接する愛情深い鬼嫁を全国から募り、鬼北町が「鬼嫁」に認定しようというイベントだ。「ゲームなどで鬼が活躍することもあり、若い層にとって鬼はカッコいい、強い、というイメージなんです。今と昔では鬼のイメージも理想の夫婦像も変わってきたからこそ注目されたのかもしれません」と稲屋さん。今では町外からも参加者、観客が集うイベントとなった。

第1回は5組、第2回は6組の参加者だったが、今年2月に行われた第3回は30組も参加。それまでの「鬼嫁部門」に加えて「鬼嫁の夫部門」や「鬼嫁の子ども部門」を増やしたことで、子どもから大人まで参加できるイベントになったという。審査は、声の大きさを数値化した上に、コメントの内容などをお笑い芸人を含めた審査員が評価している。鬼嫁部門のグランプリは、結婚式で夫に感じた「新郎が新婦より泣くなー! 私が泣けんやろー!」という心の声を観客席の夫に向かって絶叫した松澤美治佳(みちか)さん(松山市在住)。会場は温かい笑い声に包まれた。一方、第3回から設けられた鬼嫁の夫部門のグランプリは、18年間子どもたちの弁当を作り続けた古川真道さん(松前(まさき)町在住)の「いつも弁当を作らせていただき、ありがとう」。会場中の女性の支持を得た。

鬼嫁部門のグランプリに輝いた松澤さん。第4回鬼嫁コンテストは12月23日に開催予定
鬼嫁部門のグランプリに輝いた松澤さん。第4回鬼嫁コンテストは12月23日に開催予定
各部門のグランプリには賞金が贈られるとあって、より気合いの入った大声となった
各部門のグランプリには賞金が贈られるとあって、より気合いの入った大声となった

地域で新たな企画が生まれるのを期待

「鬼」をキーワードにした取り組みはこれだけではない。鬼に関連した造形物を募集する「鬼の造形大賞」には、毎年、全国各地からクオリティーの高い造形物が集まり、迫力のある受賞作品が町内に飾られる。さらに「鬼のお太鼓コンテスト」や「鬼のモニュメント写生コンテスト」も。また、松山市や東京都で行われる物産展で鬼王丸による観光PRも行っている。

「鬼」というキーワードで次々と新たな取り組みを行う理由を聞いてみると「まだまだ鬼北町には可能性があることを町民に気付いてもらうためです」と稲屋さん。「企業や町民も『鬼』を使ったいろいろな取り組みを展開してもらえたらうれしい」と期待する。その思いが通じ、「鬼の灯り」と書くことから「食用鬼灯(ほおずき)」の開発に取り組む団体が最近になって発足したそうだ。新たな盛り上がりを感じつつ、町を過疎化から救うため鬼王丸とともに二人は走り続ける。

優しい表情の「柚鬼媛」(道の駅「日吉夢産地」)。胸に抱いているのは赤ん坊のころの「鬼王丸」
優しい表情の「柚鬼媛」(道の駅「日吉夢産地」)。胸に抱いているのは赤ん坊のころの「鬼王丸」
全国から鬼をモチーフにしたさまざまな造形が集まる「鬼の造形大賞」。平成29年度は、52体の応募があった
全国から鬼をモチーフにしたさまざまな造形が集まる「鬼の造形大賞」。平成29年度は、52体の応募があった
この日のために鬼のコスプレをしてきたという夫婦は、「次回のコンテストにもぜひ参加したい」とにこやかな笑顔
この日のために鬼のコスプレをしてきたという夫婦は、「次回のコンテストにもぜひ参加したい」とにこやかな笑顔

お問い合わせ

鬼北町役場 企画振興課
住所
愛媛県北宇和郡鬼北町大字近永800番地1
電話番号 0895-45-1111
URL https://www.town.kihoku.ehime.jp/soshiki/kikaku/
備考

●第4回「愛ある鬼嫁コンテスト」

 開催日時:平成30年12月23日 13:00〜16:00

 開催場所:道の駅「日吉夢産地」

●第4回「鬼の造形大賞」

 展示期間:平成31年1〜5月頃を予定

 展示場所:鬼北町歴史民俗資料館1階