逆転の発想で目指す
「日本一、ドローンが飛ぶ町」
町の総面積の約9割を森林が占める、徳島県那賀町。この町に3年ほど前、「ドローン推進室」という小型無人航空機「ドローン」を活用するための部署が誕生した。全国に先駆けた那賀町の取り組みを紹介する。
今後、さまざまな産業での利用が期待されているドローン。もしかして過疎化が進む那賀町の活性化につながるのでは?と感じたのが、平成27年に「那賀町地域おこし協力隊」としてUターンしてきたばかりの喜多幸治さんだった。当時、喜多さんが協力隊として任命されたのは、四季美谷(しきびだに)温泉の活性化。「にもかかわらず『これからの時代はドローンだ!』と、しつこく言い続けるんですよ(笑)」とドローン推進室の三好俊明課長は笑う。こうして喜多さんの熱意に押されるようにして開かれたのが、ドローン研究のスペシャリストである徳島大学三輪昌史(みわまさふみ)准教授を招いての「ドローン講演会&実機デモ」だった。
講演会で知ったのは、ドローンが航空法で制限され、人口密集地では自由に飛ばせないという状況。だが、逆に人口密度が低い那賀町であれば自由に飛ばせるのではないかという発想へとつながった。さらに、年々増えているドローン愛好家のために、豊かな自然を舞台にした空撮ポイントを提供することで、交流人口を増やすこともできる。そこから「日本一ドローンの飛ぶ町」を目指す計画がスタートした。平成27年10月には徳島県から「ドローン特区」として認定され、那賀町は、ドローン活用の実証実験の場として、簡単な手続きでドローンを飛ばせるようになった。これを受け、翌年4月には地方自治体として初めて「ドローン推進室」が町役場内に誕生した。
これまでに多くの企業と協力し実証実験を行ってきた那賀町。高所でのロープ張りや苗木の育成状況の確認といった危険を伴う作業の省力化や鳥獣被害対策のための猟犬の位置情報取得など、自動航行ドローンを使った実験数は40にも上る。平成29年度からは、林業の担い手を育てる徳島県立那賀高等学校森林クリエイト科の授業でも、ドローンの基礎講習や操作講習を行うようになった。ドローン推進室の田和隼人さんは「学校の授業でドローンを扱うのは全国でも珍しい。林業を省力化できる技術として身に付けることで、林業に従事する生徒が増えれば」と話す。
また、ドローンを自由に飛ばしたいというユーザーに向け、豊かな自然を楽しめる飛行スポット25カ所を記載した「ドローンマップ」を制作。ドローンマップを携えて出展した「国際ドローン展」では、飛行スポットの多さと景色の美しさに注目が集まった。木々の間をぬってタイムトライアルを行えるドローンレース会場をつくる計画も進んでいる。「ドローンの活用のためにも操縦技術を磨く場は必要。今後も、安全にドローンを飛ばすことができる那賀町をPRしていきたい」と三好課長は言う。
地域おこし協力隊としての任期を終えた喜多さんは、昨年4月「一般社団法人 地域おこしドローン社」を設立。那賀町ドローン推進室と協力して、ドローンマップの刷新やドローン講習、空撮ポイントへのガイドなど、交流人口の増加を目標に活動を続けている。ドローン推進計画はまだまだ始まったばかり。ドローンが飛び交う町を目指して大きな空へと挑んでいく那賀町の人々。その姿はまるで、小さくても高く自由に飛ぶドローンのようだ。
住所 |
徳島県那賀郡那賀町和食郷字南川104番地1
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電話番号 | 0884-62-1184 |
メール | drone@nakadrone.com |
URL | http://nakadrone.com |
住所 |
徳島県那賀郡那賀町水崎字兎ノ藪19番地
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電話番号 | 080-4039-0147 |
メール | uno1cerveza@gmail.com |
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