かつて海上交通の要衝として栄えた香川県多度津町。
往時の面影が色濃く残る町並みには多くの魅力があるものの残念ながらその存在はあまり知られていない。その現状をなんとかしようと立ち上がったのが「多度津町まねきねこ課」。役場内の組織ではなく多度津町にたどり着いてもらうための官民一体のPR部隊である。
多度津町には、歴史ある古い町並み、高台から見下ろす瀬戸内の風景、個性あふれる島々など、数多くの魅力がある。しかし大きな問題が一つある。それは「知名度・認知度が低い」こと。「近隣の丸亀市や琴平町に比べると知られていないのは事実。でも、行政の限られた人間だけで、この町の魅力を伝えるのは限界があります。ならば、多度津町を愛している町の人たちの力を借りよう!というのが『多度津町まねきねこ課(以下:まねきねこ課)』の始まりでした」とほほ笑むのは、多度津町役場 政策観光課係長であり、まねきねこ課の事務局を担う柏木章敬(かしわぎあきひろ)さん。行政主導ではない新しい組織をつくろうという町からの提案に、町づくりをしている団体の代表や地元の商店主、自営業者など総勢60人が賛同した。
まねきねこ課は、さまざまな方向からPRするため、フリーペーパーやPR動画の制作、イベントの開催など、7つのプロジェクトを手掛ける。月に一度は全体会議を行い、各プロジェクトの状況を確認する。職業も年齢層も性別も異なるが、そこは町に愛着がある者同士、和気あいあいとしつつも、真剣な意見が飛び交う。代表である鈴木尉継(やすつぐ)さんは「メンバー内に上下関係があると本当にいいものはできないし、積極的に参加しないですよね。その点、この活動は全員が対等なので、仕事終わりにも関わらずみんなが駆けつける。まるでサークル活動のようです」と話す。


まねきねこ課発のイベントとして、昨年2月に初めて香川県立桃陵(とうりょう)公園で行われたのが「たどつ桜(さくら)んたんページェント」。ランタンの花を咲かせることで桜の名所・桃陵公園に冬の時期にも来ていただき、マルシェで地域のお店を知ってもらおうという催しだ。集客には不安があったというが、終わってみると町外からも多くの来場者があり、SNSにも数多くの写真がアップされた。思いもよらなかったほどの反響に一番驚いたのは、ほかならぬメンバーたちだったという。
このイベントは、初回から女性メンバーが中心となって企画したもの。新しい多度津町の冬の風物詩にしようと、開催が決まった第2回では、ポスターなどの制作時から女性の意見を全面的に取り入れた。「“カワイイ”や“映える”が分からない男性陣は口を出さず、とにかく指示に従っただけでした(笑)」と柏木さん。このやり方が功を奏し、チラシ2,000部を配布した岡山駅でのプロモーションでは、感性に訴えかけるデザインに多くの方が足を止めた。



イベント当日は、桃陵公園をピンクや白のランタン1,700個で装飾。ランタンが公園内を満開の桜のように彩った。また、メインイベントとしてスカイランタンが夜空に放たれると、会場を埋めた人たちから、大きな歓声が上がった。
その光景を見ながら「どんなに魅力があっても、伝えなければ気付いてもらえない。プロモーションを続けることで徐々に広がっていけばいいと思いますし、手応えも少しずつ感じています」と鈴木さん。町を訪れた人が、その良さを実感して、別の人を連れてくる。その繰り返しで、いつかこの町の魅力が大勢の方に浸透するように。まねきねこ課のメンバーは今日もまた、人を招き入れるための方法をみんなで楽しみながら考え続ける。

住所 |
香川県仲多度郡多度津町栄町1丁目1-91
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メール | tadotsu.manekineko@gmail.com |
URL | http://tadoritsuku-tadotsu.jp |