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電気とエネルギーのプロムナード
発電機の主要部「回転子」の吊り込み作業。約510トンもの重量がある
発電機の主要部「回転子」の吊り込み作業。約510トンもの重量がある
分解後の地下1階フロア。2号機の分解部品を所定の場所に配置し、点検や手入れを実施する
回転子は、外側の固定子とのわずか2cmの隙間に沿わせるように吊り込んでいく。作業員、作業責任者、クレーンオペレーターが息を合わせ慎重に作業は進められる
オーバーホールに携わった西森(左)さんと東さん。こうした作業を経験することで、着実に技術や知識が向上していく

 高知県いの町にある本川発電所は、昭和57年(1982)に運転を始めた、四国で最も大きい水力発電所です。

 「揚水発電所」と呼ばれるタイプで、発電所の上部と下部に設けた2つの池の間で、水を流したりくみ上げたりできる、少し変わった特徴を持っています。

 今回は、本川発電所の役割と、その機能を維持し、末永く活用していくために行ったオーバーホールの様子をご紹介します。

四国の電気を調整する大きな蓄電池!

 電気は、需要(使われる量)と供給(つくる量)を常に一致させておくことが必要です。需給のバランスを調整するため、本川発電所では、需要が少ないとき、余った電気を使って上池に水を汲み上げ、蓄えます。一方、需要が多いときには560mの落差を利用してその水を流し、電気を作ります(下図参照)。このように、本川発電所はまるで大きな蓄電池のような役割を果たしているのです。

 現在、太陽光発電の急速な普及拡大に伴い、特に昼間の需給バランスを保つことが難しくなっています。そのため、水を汲み上げる揚水運転を主に天気の良い日の昼間に行っています。

 例えば、昨年の5月5日(こどもの日)には、快晴のため太陽光の発電量が増え、一時的に、供給が需要を大きく上回る状態になりました。そこで、電気を使って揚水運転を行うことで、需給のバランスを保ちました。また、汲み上げた水は夜間などに流して発電し、エネルギーを無駄なく最大限活用しました。

11年ぶりのオーバーホールを経て戦列復帰!

 本川発電所では、1号機・2号機を合わせて最大61万5千kWの電気をつくることができます。このうち2号機(30万kW)は、昨年10月からのオーバーホールを終え、3月中旬、第一線に復帰しました。2号機では11年ぶりの実施でした。

 オーバーホールには「①分解・修理」「②組み立て」「③品質確認から完成」までと、大きく3つの工程があります。最初は約2カ月かけ、一つひとつのパーツに対し丁寧に分解・修理を実施。組み立て作業では「直径約6mもある主要機器(回転子)を精確に据え付ける必要があり、慎重にかつ安全に調整を繰り返しました。1/100mm単位の精密さを求められるため大変緊張しました」と先輩社員の西森さん。最後の運転試験を終え、「関係者全員が固唾を飲んで見守る中、各機器に異常がないことを確認し、ほっとしました」と若手の東さんは語ってくれました。

 発電所の建設から約40年。作業員の若返りが進む中、作業環境の変化や工程の複雑化など、配慮すべき事項は以前と比べて格段に増えました。しかし、発電所に脈々と受け継がれる技術力や、作業に携わる仲間たちとの連帯感などで、それらの困難を克服しています。

 本川発電所では日々の点検や巡視などを通じて、先輩から後輩へと、培ってきた技術や知識のバトンをしっかりとつないでいきます。

 これまでも、これからも、四国の皆さまに安定した電気をお届けするために。

今回のオーバーホールで苦楽を共にした仲間たち。日立三菱水力、四電エンジニアリング、地元協力会社の皆さんと当社社員