全国各地で問題となっている鳥獣被害。愛媛県北宇和郡松野町では、果樹への被害が大きく、常に問題となっていた。
同町の場合、害獣の約9割がニホンジカ(以下:シカ)。駆除したシカを松野町ならではの魅力に変えようと奮闘している人たちがいる。
みんなでタッグを組んで
松野ならではの「ジビエ」を

鳥獣被害が年々深刻化していた松野町。松野猟友会が駆除に尽力していたものの、捕獲しても自家消費や埋設処理しか方法がなかったため、有効活用を模索していた。平成26年、それを解決するために設立されたのが食肉加工を中心に商品化を手掛ける「NPO法人 森の息吹(以下:森の息吹)」だ。
施設長となった森下孔明(こうめい)さんは「料理のプロに選んでもらえる食材に」と決意したという。その理由を「人間が住みやすい環境を維持するために野生動物の命をいただいている。おいしく食べることが、自分たちにできる最大限の敬意だと思うんです」と話す。森下さんは県外の食肉処理施設を訪ね、品質の高い食肉を提供するために適した解体方法を学び、「森の息吹」独自の精肉処理技術をゼロから構築した。運ばれてきたシカは素早く下処理した後、解体し、肉質を細かくチェック。骨抜きはもちろん、部位ごとに切り分け、主に冷蔵のまま出荷する。品質が高いため、廃棄部分が通常流通しているジビエ肉よりもかなり少なく、また、処理に手間をかけているので取り扱いがしやすいと、東京や大阪の料理店から高い評価を獲得。今では「まつのジビエ」というブランド名も浸透してきた。
「もっとジビエを身近なものに感じてもらいたい」と、ソーセージや燻製肉などにも加工。道の駅やインターネットなどで一般のお客さまに向けても販売している。最初は3種だった加工品も、この5年間で7種類となった。猟友会のメンバー山石和博さんは「道の駅などで買ってくれている人を見かけることもある。自分たちが捕ったものがおいしいと言われるのは励みになりますよ」と相好を崩す。





「森の息吹」誕生と前後して松野町に移住した「バーベキュー侍」こと沖野克成さん(大洲市出身)は、同年からバーベキュー体験事業を展開。森下さんと協力して、松野町に足を運んでもらうきっかけとして、「森の息吹」のジビエを使ったバーベキューを提案している。
今年5月、新緑のまぶしい滑床(なめとこ)渓谷のキャンプ場で行われたバーベキューでは、“鹿肉のアヒージョ”、“鹿肉フランクのモッツァレラチーズがけ”など、手の込んだメニューが次々と作られた。砥部町から家族で参加した田中葵さんは「柔らかくてジューシー。いろんな料理が楽しめるのにもびっくりしました」と話す。「猟友会の方が適切に処理し、『森の息吹』で衛生的に加工された『まつのジビエ』は松野町ならではの食材。地元の食材を取り入れたバーベキューだからこそ魅力があるんです」と沖野さん。ここで味わったジビエがきっかけでリピーターになった人も多いという。
また、「森の息吹」では愛媛県内の革職人とのコラボで、鹿革を使ったバッグや財布などの製作もスタートさせた。自然に恵まれた環境で育まれた松野町のシカは、革素材としての品質も高いという。現在、提供していない部位をペットフードに加工して販売する計画も進行中だ。「松野の山で育ったシカを使った加工品が、松野町を象徴するブランドとなって、いずれこの町のためになれば」と話す森下さん。
今後も地域の課題を逆手にとり、みんなで力を合わせて町の魅力を増やしていく。



住所 |
愛媛県北宇和郡松野町富岡719番地 |
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電話番号 | 0895-42-1756 |
メール | morinoibuki@mb.pikara.ne.jp |
URL | https://morinoibuki.net |
電話 | 090-6286-9689 |
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メール | ginsanta1031@yahoo.co.jp |
URL | https://bbqsamurai.com |