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ひとことジャーナル

夏に感じる「冷え」と「むくみ」
知っておきたい原因と対策

職場の冷房が強すぎる。家庭ではエアコンの温度設定で夫と衝突。夕方には足がむくんで靴が入らない…。

そんなふうに、冬よりも夏に、「冷え」や「むくみ」がひどいと訴える女性は少なくありません。今回は、そんな「冷え」や「むくみ」についてお話しします。

「冷え」のツラさは千差万別心身的ストレスも一因
測ることができない「冷え」の症状

「冷え」は血圧のように数値で表せるものではありません。強い「冷え」を訴える方も、体温を測ると正常の範囲内であることがほとんどです。つまり西洋医学において、「冷え」は病態ではなく、自覚症状の個人差と捉えられています。

近年の酷暑により、命に関わる「熱中症」が怖いので、医師の立場からも「エアコンを使ってくださいね」と促します。それでも、エアコンなしで「暑くない」とおっしゃる高齢者の方もいます。

エアコンの効いた職場で暑いと訴える男性と、カーディガンを羽織っても震える女性。真冬でも半袖でへっちゃらな海外からの旅行者。日常によくある光景ですが、暑さ寒さの感じ方は人それぞれ。性別、年齢、人種、生活環境や精神状態によって違いが現れるのです。

寒がる女性・暑がる男性

では、男性より女性の方が、「冷え」を感じやすいのはなぜでしょう。

私たちは体温を自分でつくりだします。多くは、筋肉が動くことで熱を生みます。筋肉自体が少ないと当然、熱を生む力や体温を維持する力も弱くなるため、筋肉の量が男性に比べて少ない女性の方が「冷え」を強く感じるのです。

つまり、「冷え」を感じやすい人は、運動量を増やしたり、鍛えて筋肉量を増やすと、体内の熱を保持しやすくなります。また、「冷え」を感じる部分がどこなのかが分かれば、ある程度対処ができます。ほとんどの方が、肩、腰、指先、膝から下を訴えますが、靴下やストール、上着、手袋、カイロでカバーすることが可能です。

そして、夏の「冷え」がつらいと感じるのは、それらの装備を身に着けるのが季節柄難しい、人目が気になるという心理状態も一因。みんな暑がっているのに、自分だけ寒いと言い出せない、冷風が当たることを訴えにくいなど、エアコンの温度を調整しにくい職場環境であることや、周囲の人間関係の悩みなどが微妙に絡んでいたりするのです。

このほか、更年期にさしかかると、下半身が寒いのに、上半身はのぼせる、ということもあります。エアコンの効いた部屋でレッグウォーマーを着けて周囲の目が気になるなら、自分の状態を簡単に説明しておくといいでしょう。心理的ストレスが外れるだけで、「冷え」の症状が随分ラクになる人もいます。

防寒対策をする女性
巡りをスムーズにして「むくみ」にくいカラダづくりを
水分補給と代謝の高バランスがカギ

次に「むくみ」です。私たちの体には、血液やリンパ液などが流れていて、全身を巡っています。本来、下半身に下りたものは心臓のある上半身に戻っていくのですが、長時間座りっぱなし、立ちっぱなしだと、足の筋肉を充分に動かしていないため、上に戻す力が弱まります。重力によって下半身に溜まりやすくなり、その結果、足がむくむのです。 

お酒を飲み過ぎた翌日にまぶたや指が腫れたり、手の関節が動きにくいと感じたりしたことはありませんか? これは適正量を超えた水分の摂取により、代謝が悪くなって全体的にむくんでいることが原因。そして、体に溜め込んだ水分ごと体温を保たなくてはいけないので、同時に「冷え」も感じやすくなります。

水分代謝にも個人差があります。たくさん飲んでもすぐにトイレに行き排出する方はいいのですが、少量でも体がため込んでしまう方は、自律神経が乱れる、耳鳴りがする、めまいがする、頭痛がするなどのトラブルが出ることも。 

余分な水分や老廃物を排出する尿は腎臓が血液を漉(こ)してつくります。血液をうまく巡らせることができないと尿もうまくつくれず、その結果「冷え」や「むくみ」、不定愁訴※(ふていしゅうそ)につながっていくこともあるのです。
※体調が悪いという自覚症状はあるが、医療機関を受診しても原因となる病気が見つからない状態のこと。

お酒の誘惑に打ち勝つ女性
「冷え」「むくみ」を漢方で対処する方法

漢方の考え方では、体を温める陽性の食品、冷やす陰性の食品、どちらでもないもの、に区別されます。「冷え」解消のために、ホットコーヒーを飲んでいる方もいますが、実はコーヒーは陰性。結果的に体を冷やしてしまいます。習慣的に摂取する飲み物や食べ物を気にするのも対策の一つ。ちなみに紅茶は陽性です。

また、体を温めたり、水はけを良くして「むくみ」を取るのに働く漢方薬もあります。処方は、体温が維持できないのか、体内に水分が溜まっているのかによって変わりますので、病院で相談してみてもいいでしょう。漢方薬を使って「むくみ」が取れたら、「冷え」も消えたという方もいます。

急な症状悪化は要注意問題に向き合う姿勢を

「冷え」や「むくみ」は体質とくくられるものですから、本人の感じ方次第ということになります。

慢性的に悩んでいる方よりも、心配なのは急に冷えるようになった、急にひどくむくむようになった方です。これは内科の受診が必要です。心臓や甲状腺の病気の可能性があるため、早めの受診をおすすめします。

また、「冷え」や「むくみ」に生理不順が伴う場合は婦人科に。ホルモンバランスの観点から、「冷え」「むくみ」より、生理不順に気を向けてもらいたいです。

心臓、甲状腺の問題がなければ、寿命を縮めるようなことはないと思っていただいてよいでしょう。気持ちよく長生きすることを目標に、夏の「冷え」「むくみ」を通して、自分の心身と向き合うきっかけにしてもらえたらと思います。

西口 園惠 医療法人社団 愛和会 あさひクリニック 産婦人科医師

平成11年香川医科大学医学部卒業。
卒業後、岡山大学産婦人科教室、香川県立中央病院で研修を受け、香川県立中央病院女性外来を担当。現在は、あさひクリニックの産婦人科で、医師として母親として、しっかりとしたカウンセリングをし、患者さまに合った治療を考えながら診察を行っています。