香川県善通寺市を中心に活動している「即興演劇シーソーズ」。
四国学院大学演劇コースの仙石桂子(せんごくけいこ)准教授が、授業以外で学生とともに学びを深めようと平成25年に立ち上げた劇団だ。
出演者同士の掛け合いで次々とストーリーが描かれる即興性と創造性に、地元を中心に徐々にファンが増えている。
アドリブ演技だからおもしろい!
即興演劇のワクワク感で魅了する。

古くから欧米を中心に創作や表現の一つとして演劇に取り入れられてきた、俗に「インプロ」と呼ばれる即興演劇(Improvisation=インプロヴィゼーション)。日本には、1990年代に入ってきたといわれている。即興というだけあって台本はなく、演者同士は直前に簡単な場面や人物設定を共有するだけで各自が演じる。
現在、「即興演劇シーソーズ」のメンバーは、四国学院大学の学生を中心に、卒業生や地元の商店主など総勢18人。平成29年度からは、月1回、「インプロツアー」として善通寺市内のカフェやお寺など、さまざまな場所で公演してきた。
今年の4月から始まった「インプロツアー2019」では、もっと多くの人にインプロを知ってもらいたいと2回に1回は善通寺市から飛び出し、県内各地で公演を行う。
5月26日に、まんのう町で行われた公演には、たくさんのファンが駆けつけた。劇の一つひとつは、5分から10分程度。その一つが、事前に観客に書いてもらったメモを折りたたんで床にばらまいておき、芝居の途中で足元のメモを拾い、セリフとして読み上げる劇。芝居の内容とはかけ離れているメモでも、瞬時に意味が通じるように言葉を補い、セリフとして成立させる。この日、友達を励ますシーンでメモに書かれていたのは「こんにちは!!」。シリアスな場面だけにドッと笑う観客。が、その空気に飲まれず「…ってあいさつしたら元気になる、ってお父さんが言ってた」とストーリーをつなげると会場から拍手が起こった。「即興で演じると素の自分が出てしまうんです。自分の生活や経験でしか演じられないので、周りの演者に助けてもらうこともしばしばです」と同大学演劇コース3年の大平峻世(しゅんせい)さん。何が起こるか分からないからこそ、互いの信頼が欠かせない。





インプロには、「インプロゲーム」と呼ばれる練習法が100種類以上ある。複数人で一文節ずつ言葉を連想してつなげ、物語をつくっていくゲームや、ホイッスルの音とともに役柄を入れ替えるものなど、その内容はさまざま。いずれも「即興」に必要な感覚を鍛え、演技力を磨くものばかりだ。
週1回の稽古では、いくつかのインプロゲームを行ったのち、公演を想定して芝居をする。稽古であっても、基本的には一度劇がスタートしたら最後まで演じ切るのがルール。たとえ支離滅裂になったとしても途中では止めない。そして、終わったあとに、あのときは別の役の方がもっと良かった、もっとこうしようと、互いに意見を交わすことで、それぞれが自分の芝居を振り返り、それが大切な「学び」になるという。
「インプロでは、どんな役であっても瞬時にその場で求められている役を演じることが必要」と仙石准教授。「例えば共演者が王子を演じた。ここで、自分は姫役で出た方がいいのか、敵役で出るべきなのか。それを瞬時に判断して演じないと劇にならないんです」。とはいえ即興のため、想定外のことが起こることや失敗することも。「インプロをやるようになって失敗が怖くなくなりました」と話すのは同大学演劇コース3年の川畑(かわばた)菜美さん。「うまくいかなくても笑い飛ばせるようになるんです。人として強くなれるような気がしますね」と仙石准教授は笑う。
仲間はもちろん観に来てくれた人たちとも一緒になって、ストーリーをつくり上げる即興演劇。「何が起こるか分からない」と舞台に魅了されたメンバーそれぞれが楽しみながら演じることで、これからもその魅力を伝え続けていく。





住所 |
香川県善通寺市文京町3-2-1 |
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メール | seeeeesaws@gmail.com |
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