高知県室戸市に昨年春オープンした「むろと廃校水族館」。
廃校となって久しい小学校の教室に水槽を設置し、地元の定置網にかかった魚やウミガメなどを飼育している。
「室戸にあるもの」を展示した施設はあっという間に県内外で話題に。
オープン1年あまりで、来場者20万人を突破した話題の水族館の魅力を探る。
主役は“廃校”と“地元の魚”
室戸の資源を活用した水族館
ウミガメ好きが集まり、
廃校を新しいカタチへ
「むろと廃校水族館(以下:廃校水族館)」は、小学校の校舎やプールをそのまま残し、地元でとれる魚やウミガメを飼育・展示している、とてもユニークな水族館。館内にはいくつもの水槽があり、理科室には人体模型とともに魚などの標本が展示され、手洗い場には、実際に生きものに触れられる「タッチコーナー」を設けている。
運営管理を行うのは「NPO法人日本ウミガメ協議会(以下:ウミガメ協議会)」。研究員の若月元樹(わかつきもとき)さんが館長を務め、他に職員と研修生合わせて7人のスタッフが常駐する。ウミガメ協議会は全国各地でウミガメの生体調査と研究を行っている団体で、室戸市には、平成15年から拠点を置いている。
若月さんは、室戸にはウミガメ以外にも、他ではあまり見ないような魚が生息していることに驚いたという。そこで、変わった種類が網にかかったと聞くたびに、標本にして保管するなどしていた。ところが、年を追うごとに保管スペースに困るように。時を同じくして、廃校になった小学校建物の有効活用を模索していた市から、アイデア募集があり、研究兼展示施設として、水族館をつくろうと提案。当初、「こんなに遠くまで人が来るのだろうか」と心配する声もあったというが「地元では当たり前のものが、他県の人たちから見れば珍しいこともある」という若月さんたちの言葉に納得した地元の方々が協力。“開校”が決定した。
地元の方々の協力と
工夫が支える室戸の魅力
水族館の周辺には3つの漁港があるが、漁師さんも珍しい魚がかかったら、水族館に連絡をくれるのだという。取材当日も、漁師さんから水族館のスタッフに「定置網にアオウミガメが入っていた」という連絡が入った。すぐに車で10分ほどの漁港に向かい、その場でウミガメの状態や大きさ、重さなどを測定する。この日はウミガメ以外に、室戸では珍しいテングハギがプールへと運び込まれていた。エサとなる小魚も漁師さんからの提供。「これを展示してくれ」と持ってくる漁師さんもいるそうで、取材時には、通常見ることのないアオリイカの卵を展示中。漁師さんたちの協力で、日々展示する生きものが変わっていくのも、面白さの一つ。何度も訪れたくなる一つの要因となっている。
来場者数は、若月さんたちの予想をはるかに上回り、年間4万人という当初の目標は、3カ月ほどで達成された。今年のゴールデンウイークには2万8,000人もの人が県内外から訪れたという。高知市在住の澤本和枝さんは、リピーターの娘さんに連れられて初めて来館。「ニュースで見て一度は行ってみたいと思っていた」と目を輝かせる。
若月館長は、廃校水族館に多くの人たちが訪れる理由を「水槽も手づくり。跳び箱や机などもできるだけ再利用する。解説板も黒板などを使った手書き。ここにあるものを使い、僕ら自身が楽しみながら工夫をしているのを、面白く感じるんじゃないかな」と話す。「どの魚にもそれぞれその魚らしさがあることに気付いてほしい」という思いから、目指しているのは自由に魚を見て触って、楽しんでもらえる場所。今後もウミガメや室戸に生息する海の生きものを研究しつつ、「室戸にはこんなものがある!」という魅力を発信し続けていく。
お問い合わせ
住所 |
高知県室戸市室戸岬町533-2 |
---|---|
電話番号 | 0887-22-0815 |
メール | murosui@umigame.org |
URL | https://twitter.com/murosui_kochi |
定休日 | 年中無休 |
営業時間 | 4月~9月 9:30〜18:00 10月~3月 9:00〜17:00 |
入館料 | 高校生以上600円/小・中学生300円/小学生未満は無料/室戸市民割引あり |