唐揚げや照り焼き、焼き鳥など、食卓で馴染みのある鶏肉料理。おいしいだけではなく、たんぱく質や必須アミノ酸、コラーゲンなどの栄養素が豊富な上、比較的手ごろな価格であることも人気の理由となっている。一般に馴染みがあるのはアメリカ式のブロイラー(50日前後の飼育で出荷できる肉用若鶏の総称)だが、近年は「地鶏」にも注目が集まっている。「地鶏」とは、古くから日本で飼われている「在来種」を両親もしくは片親に持ち、飼育期間75日以上、生後28日以降は1㎡あたり10羽以下で平飼いされた鶏のこと。品種や飼い方に規定が設けられた特別な鶏だ。そのためブロイラーに比べると価格は高いが、品質や味わいの良さなどから、「ちょっとしたご馳走」としてもてはやされている。
もともと徳島県は、古くから食鶏飼育が行われており、明治時代にはすでに関西方面への食鶏供給地となっていた。昭和40年代には、ブロイラーが導入され、これが中山間地域を中心に広がっていった。「ところが昭和40年代後半に、外国産の鶏肉が大量に輸入されるようになり、熾烈な価格競争を強いられる状況となりました」と説明するのは、徳島県畜産振興課の武内徹郎(てつろう)さん。当時、徳島県内の養鶏農家は約800戸あったが、いずれも兼業の小規模農家で、生産者の高齢化も課題となっていた。
こうした状況を打開するために、昭和50年頃より、畜産研究課が主導して、「徳島県ならではの付加価値の高い地鶏を生み出そう」という動きが始まった。収益性の高い地鶏を育てて、大規模化が困難な農家でも経営が成り立つようにと考えたのだ。