第14番札所 常楽寺で目にするのは「流水岩の庭園」。「庭園」と言っても、人によって整備されたものではない。雨や風で削られ、荒々しい岩肌がむき出しになった地面をこう呼んでいるのだ。
常楽寺は文政元年(1818)、灌漑(かんがい)用のため池を造成するために、低地から階段を約50段上がった現在地へと移された。その際、山を切り崩し、お堂は岩盤の奥に建立された。境内の地面には岩肌がそのまま残り、雨や風によって侵食され、このような姿になったのだ。ゴツゴツとした地面は非常に歩きにくく、特に雨に濡れたときにはツルツルと滑ってしまうことも。だが、その造形が自然の営みによるものだと思えば、大地のエネルギーが足元から伝わってくるかのようでもある。しかも僅かずつではあるが、侵食は現在も続いており、まさに生きている庭園。そのそばで、愛らしい猫たちが日向ぼっこをしている姿も、のどかで心が和む。