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ジャンピングふるさと
ガソリンカーの実寸で製作した木枠の前で、前列左から村山さん、高松市塩江美術館 学芸員の小田有紗さん
後列左端から柴田先生と香川大学・香川高専の学生らプロジェクトのメンバー

ガソリンカーは続くよ、
どこまでも

ガソリンカー復元実行委員会

香川県高松市の南部に位置する塩江町には、昭和4年から16年まで、
観光客や住民の移動手段として活躍した鉄道があった。
ガソリンを燃料にしていたことから「ガソリンカー」と呼ばれて親しまれていた。
この鉄道の記憶を残したいという地域の人たちの思いを受け、
平成30年度にスタートしたのが「ガソリンカー復元プロジェクト」。
丸2年を終え、これまでの道のりをたどった。

地域の人たちの思いを受けて
始動したプロジェクト

「このままではガソリンカーの記憶が途絶えてしまう」。観光客でにぎわった昭和初期の塩江町を知る人が少なくなってきた現在では、当時、町内を鉄道が走っていたことも忘れられようとしていた。ガソリンカーの記憶を次の世代に伝えてほしいという地域の人たちの思いを受け止めたのが、平成29年8月に「地域おこし協力隊」として着任した村山淳(じゅん)さん。「地元の学生と組めば何か新しいことができるかも」と香川高等専門学校(以下:香川高専)に相談したところ協力を得ることができた。

こうしてスタートした「ガソリンカー復元プロジェクト」。1年目の平成30年度は、鉄道やエンジンに興味を持つ香川高専の学生有志5人が集まり、ガソリンカーの軌跡をたどった「遺構(いこう)めぐりマップ」と「ガソリンカーの模型」を製作することに。マップは地域の人たちが当時撮った写真や新聞の切り抜きなどを参考にして完成させた。一方、模型づくりは設計図の発見に時間がかかった。東京都にある国立公文書館にガソリンカーの関連資料が残っていたものの、その中に設計図は含まれていなかった。埼玉県の鉄道博物館に移されたと聞き、問い合わせたが複数の設計図はあるもののどれかは不明だという。そこで、2年生(現・4年生)の前田和樹さんが直接確認に赴き、ついに「ガソリンカーの設計図」を探し当てた。それをもとに、香川大学創造工学部の柴田悠基先生に3Dモデル製作の協力を依頼。香川高専と香川大学がタッグを組んで「1/20サイズの模型」を完成させた。

「色塗りワークショップ」や「ミニガソリンカーの乗車体験」など、誰でも楽しめる内容を盛り込んだ企画展。子ども連れや鉄道ファンなど多くの人が足を運んだ
企画展では、町内の中学生が塩江町の風景を描いた「ちぎり絵」の作品を展示した

ときを超えて再び
ガソリンカーが人をつなぐ

2年目となった令和元年度には、香川大学創造工学部の学生たちの協力も得て、調査によって得たガソリンカーの資料、車両のスケール感が伝わる原寸大のアート作品などを展示する企画展を高松市塩江美術館で開催した。幻の鉄道資料が見られるとあって多くの鉄道ファンが全国から訪れた。地域の人たちが保存していたガソリンカーの写真や資料も展示。「かつて愛されていたガソリンカーをこうしてまた見てもらえるのがうれしい」と地域の人たちも顔をほころばせた。

現在は、当時の塩江町をモチーフにした「1/80サイズのジオラマ」を製作中。塩江町の風景とその中を走るガソリンカーを再現するという。ジオラマの製作に関しては未経験者ばかりだが、まずは自分たちで「ジオラマのベース」を製作。今後は、鉄道模型に詳しいアドバイザーの川波伊知郎さんの協力も得ながら、「ジオラマづくりのワークショップ」を開催するなど、多くの人を巻き込んでつくりあげていきたいという。さらに、ガソリンカーをもっと幅広い層の人に知ってもらうため、現存するトンネル内部を使った「プロジェクションマッピング」などのイベントも計画中だ。

「地域の人たちに愛されたガソリンカーの存在をたくさんの人に知ってもらうことで、華やかだったかつての塩江町の面影を、次の世代にも感じてもらえれば」と村山さん。「復活プロジェクト」によってつながり、集まった人たちの心の中で、ガソリンカーはこれからも走り続けていく。

ジオラマを前にどう作業を進めるかを議論する、左から川波さん、村山さんと香川高専の学生たち。右端が前田さん
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お問い合わせ

ガソリンカー復元実行委員会
メール jun.tachikawa@heliolea.com
URL https://knitgasolinecar.wixsite.com/knitgasolinecar

https://www.facebook.com/shionoe.info/