高知県の中西部にある人口約13,000人の佐川(さかわ)町は森林率7割以上という山間の町。
平成28年、身近にある木々を用いたものづくりをサポートする「さかわ発明ラボ」が誕生した。
世界を変えるような発明も、素朴な疑問やアイデアから始まる。
そのためには柔軟な発想が大切で、その自発的な“ひらめき”こそが、未来の発明につながる。
自分で考えたものを形にする楽しさを、まずは感じてもらうための取り組みを取材した。
その“ひらめき”を未来につなげよう!
ラボで育む発明の“種”

ものづくりを自由に
楽しむ「場」として
平成26年、佐川町が策定した今後10年間の総合計画の中で、森に囲まれた町の財産である木材を地域で活用するための「場」をつくることが決まった。
これまでは建築資材にしか使われていなかった町内の木々を新たなものづくりの材料として使うにはどうすればいいか。頭に浮かんだ”ひらめき“を形にしていくのに必要なのは、新しいものづくりができる「場」。地域の中で加工や販売を進め、活用していくことが、地域の山を守ることにつながる。
そこで、地域の資源を生かしたものづくりのための「場」として、平成28年に「さかわ発明ラボ(以下:発明ラボ)」は誕生した。
「発明ラボ」の活動方針は「佐川町民に主体的にものづくりをしてもらい、町民の生活をおもしろく、豊かなものにするため、多様なアプローチを仕掛けていく」こと。そのサポートをするのは、7人の「発明ラボ」専属スタッフだ。「ゼロからものをつくるためのサポートというのは、事前に準備した作品の作り方を教えるのとは違いました。こうすればいい、というパターンがあるわけではないので、ずっと手探り状態でした」と話すのは、事業立ち上げ時に「地域おこし協力隊」として着任した鶴見悠子さん。他の地域では行っていない取り組みのため、最初は試行錯誤が続いた。

好奇心とひらめき力で
未来の”さかわ“づくり
活動の柱は3つ。1つ目はDIY活動。毎週金・土曜日には、レーザーカッターやUVプリンタ、デジタルミシンなどの工作機器を誰でも自由に使えるように「発明ラボ」を終日開放している。佐川町の住民であれば、正規料金の半額で使えるほか、機材講習費なども無料。初心者でも取り組みやすく、その後もサポートしてくれる。最新の機器が気軽に使えることで、ものづくりに目覚めた人も多いという。
2つ目はコンシェルジュ活動。「発明ラボ」のスタッフが町内外の企業・団体からの企画やデザインに関する相談に乗り、一緒に新しいものづくりをする活動だ。
「こんなものをつくりたい」というアイデアを形にしていくことで新製品を開発。製作した看板、コースターなどの作品は、各企業に納品した。また、町内イベントでは木材を使った空間をつくり、イベントを演出している。
3つ目は放課後発明クラブ活動(以下:発明クラブ)。町内の小・中学生を対象にしたものづくり教室で、開設当初は毎回、決まった作品をつくっていたが、自主性を育めるようにと、昨年からは何をつくるかを決めるところから子どもたちと一緒に取り組むようにした。作品を完成させることよりも、やってみることを重視し、その過程や方法を自分たちで自由に考えることを大切にしている。







「自発的に生み出す楽しさが、子どもたちに伝わればいいなと思うんです。だからこそ子どもたちと対等な立場でものづくりに関わりたい」とスタッフの亀井亜里紗さんは話す。「自分の頭の中にあるものをどうやって形にしようか考えるのがすごく楽しい」と目を輝かせるのは立ち上げ時から「発明クラブ」に参加している現在中学2年生の飯嶋真洋(まひろ)くん。「発明クラブ」に参加したことをきっかけに、工作機器を使って鹿を模したロボットを製作。独自の感性が光るロボットは、昨年10月に行われた全国ロボットコンテスト「VIVITA ROBOCON 2019」でベストテクノロジー賞を受賞した。
「発明ラボ」は、子どもたちはもちろんスタッフも、誰もが好奇心を抱いて”ひらめき“を形にするための「場」。これからも、ワクワクする活動が続いていく。


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高知県高岡郡佐川町甲1581 |
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