新型コロナウイルスの影響で各地の高校生も、例年とは違う状況の中で
学校生活を送っている。高知県の山間部に位置する高知県立嶺北高等学校の
生徒たちにとっても、いつもとは違う年となった。少人数ながらも協力し合い、
経験のない状況下でもできる活動を模索する高校生たちの姿を追った。
地域を元気にする
高校生たちの奮闘
商品開発やカフェ運営
方針は「生徒主体の体験型」
四国中央部の吉野川源流域に位置し、四国の水瓶(みずがめ)「早明浦(さめうら)ダム」を抱く嶺北地域。高知県立嶺北高等学校(以下:嶺北高校)は、周囲を山々に囲まれたこの地域唯一の高校だ。少子化により一時的に生徒数が減少したものの、少人数だからこそかなう一人ひとりの個性を重んじた教育、生徒主体の積極的な活動などの特色が注目され、地域外からの進学も少しずつ増加。現在、全校で84人の生徒が学んでいる。
2年生から希望や進路に合わせてコースを選択する嶺北高校。コースの一つである農業コースでは、地元企業と連携して地域の特産品を使った商品開発を行う。また、開発した商品を使った料理を提供するイベントや地元農家の方の手伝いも積極的に行ってきた。
だが今年は新型コロナウイルスの影響を受け、「年度当初は思うように活動ができなかった」と農業コース担当の萩原陽子(はぎわらようこ)先生は言う。文化祭「嶺高祭」などさまざまな行事が中止や縮小となり、楽しみにしていた行事が減っていく中、少しでも地域を元気にできればと農家支援や地域での販売などから活動を再開していった。
すると地域の方々から「毎年やっているカフェは開かないの?」と聞かれるように。「カフェ」とは、活動の一つとして毎年、地域の店舗をお借りして行っている「ほっこりカフェ」のこと。人が大勢集まるイベントになるため今年の開催を迷っていたが、地域の温かい声援を受けたことで、みんなで検討して夏休みに2日間開催することを決定。感染対策に万全を期すため、アルコール消毒の徹底やテーブル配置の見直しなど、先生と相談しながら準備を進めていった。


慣れない状況に苦戦しつつ
“ほっこり”した時間を提供
イベント当日、慣れない感染対策を行いつつ、調理や接客などを先生のサポートを受けながら、生徒中心に行った。メニューは、これまでに開発したものに加え、現在開発を行っている「パプリカの肉みそ」などを提供。
また「トマトのわらび餅」「かぼちゃのジェラート」など、デザートメニューにも農業コースで手がけている野菜を盛り込んだ。
両日とも昼過ぎにはメニューのほとんどが完売する盛況ぶり。「気を抜く暇がない(笑)」と慌ただしく走り回りながらも生徒たちの表情はイキイキと明るい。「トマトのわらび餅」を注文した女性は「トマトを和菓子に入れる発想はなかった」と高校生ならではのひらめきに感嘆しつつ、味わっていた。


主体性を大切にする嶺北高校は、このような実践的な課外活動も長年、生徒主体で行ってきた。特に農業コースは社会に出てから体験するような活動ができる授業も多い。「授業でプレゼンやカフェ運営もやるの? とほかの高校の友だちにびっくりされます」とは今回、店長を務める農業コースの間城(ましろ)さん。「農業コースで活動をしたことが、将来何がやりたいのか考えるきっかけになった」と澤田さんと石川さんも言う。
大盛況のうちに2日間の日程を終えた生徒たちは、晴れ晴れとした笑顔で「こういったときでも活動できるのは、地域の人たちのおかげ」と顔を見合わせる。「人数が少ないからできることも、たくさんあるんです」と萩原先生。距離が近いからこそ、時には意見がぶつかることもあったというが「例年と違う状況の中で何ができるのか手探りで考えた、この経験がいつか役立ってくれたら」と話す。それぞれの道に進んで振り返ったときに、きっと高校時代の特別な時間を思い返すはずだ。




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