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ジャンピングふるさと 「一般財団法人さなごうち」のスタッフと移住者の田口さんご家族。 「一般財団法人さなごうち」のスタッフと移住者の田口さんご家族。
左4名/「一般財団法人さなごうち」のスタッフ。右から理事長の上野浩嗣さん、西川高士さん、髙橋仁美さん、岩田愛さん
右5名/移住者の田口太郎さんとご家族。妻の寛子(ひろこ)さんは村の特産品やそれを手がける地元の方々を紹介する「さなのごちそう便り」のライターであり、地域づくりの会社代表としても活躍している 写真提供(風景)/坂口祐

千年前からつづく村を
次の千年につなげるために

一般財団法人さなごうち

徳島市に隣接する佐那河内村(さなごうちそん)は、徳島県唯一の村。
農山村の文化と風景が今も色濃く残っている。
伝承によると平安時代中期(1021〜24年ごろ)にはすでに
「佐那河内」という名で呼ばれていたという。
そんな長い歴史を持つこの村に最近、移住者が増えている。
その立役者となっている「一般財団法人さなごうち」を訪ね、
移住支援について取材した。

地域情報紙「さなのごちそう便り」
地域情報紙
「さなのごちそう便り」

移住する人も地域の人も
誰もが納得する支援を

佐那河内村で本格的に移住支援がスタートしたのは平成26年度。役場内に「佐那河内村 移住交流支援センター(以下:支援センター)」を設け、移住希望者の対応をするように。平成28年には、地域の生活や暮らしを守り、将来の世代につなぐことを目的に「一般財団法人さなごうち(以下:さなごうち)」を設立、移住支援とともに村の広報や資源の活用といった活動を一手に担うようになった。

 その後、地域交流拠点としてつくられた施設「新家(しんや)」に「さなごうち」の拠点を設け、令和2年度からは「さなごうち」が「支援センター」の窓口として移住相談を行っている。「移住には地元の理解が大事。村の人たちも利用しやすい空間にすることで理解を深められれば」と理事長の上野浩嗣(うえのひろつぐ)さん。会議やプレゼン用に貸し出しするほか、展示スペースとして開放したりと、誰もが訪れやすい雰囲気にした。

「支援センター」を訪れる移住希望者の案内から、住まいとなる空き家の所有者や地域の方々との顔合わせ、改修費補助や助成制度の紹介など、さまざまなサポートを行っているのが、移住コーディネーターを務める西川高士(たかし)さんだ。村内には、住民同士が助け合い生活するための「常会(じょうかい)」と呼ばれる自治組織が地域ごとに47ある。「常会は地域の中で生活するためには欠かせないもの。移住を希望しても、地域に溶け込めないと長続きしません。お互いが安心してつながれるようにお手伝いするのが役割です」と西川さん。移住希望者には、まず希望する地域の「常会」を案内し、地域の人たちとの関わり方を伝える。また、移住者を増やすだけでなく、転出を減らすのも西川さんたちの役割。長く村に住む人たちの声に耳を傾け、地域の若者など村内で新たに住居を希望する人に対しての支援も行っている。

産直市&カフェ「佐那の里」
地元の主婦が毎週土日に開く産直市&カフェ「佐那の里」。西川さんは、はじめて佐那河内村を訪れた人を、このカフェへ案内するという。10年前からこの産直市を運営しているという明るいお母さんたちのつくったお弁当を食べ、さまざまな話を聞くことで、地域の人たちの温かさを実感できる
地域交流拠点「新家」
イベントや会議を開けるスペースのほか、ワーキングスペースもある地域交流拠点「新家」
ワークショップなども行う「新家」のイベントスペース
会議やプレゼン用に貸し出しするほか、ワークショップなども行う「新家」のイベントスペース

空き家の斡旋(あっせん)ではなく
地域に入るためのサポート

移住者と地域の人たちが心地よい関係になるために活動する西川さんの良き相談役が、移住者の田口太郎さん。田口さんは地域創生を専門とする徳島大学准教授で、研究者として佐那河内村の移住プランを作成したことをきっかけに約5年前、家族で移住。「この村を知るほどに幼い子どもたちを育てるのにぴったりだと実感したんです。それに、食べ物も住まいも自分でつくる、この地域の人たちのように何でも自分たちでできるカッコいい大人になりたいと思ったのが移住の一番の決め手だった」と田口さん夫婦は言う。地域の一員になるために丁寧に関係をつくっていくことが大切と、村のしきたりを重んじた暮らしを楽しんでいる。

田口さんと同時期に東京から移住した岩佐洋介さんは、都会での会社員生活に違和感を覚え、日本全国を回って移住先を探し、縁あってこの村へ。地元の大工に弟子入りし、約半年かけて築80年ほどの古民家を改修した。取材当日は村で生まれ育った若者たちが「地元を盛り上げる活動をしたい」と岩佐さんに相談中。七輪を使ったダッチオーブンでピザを焼きながら交流を深めていた。「みんなが助け合うのが田舎暮らしの良さ。高度成長期以降なくなっていた近所付き合いが見直されているんでしょうね」と岩佐さん。このように誰かが来ると隣に住むおばあちゃんが顔をのぞかせることも多いそうで、そのやりとりはまるで親子のようだという。

平成26年度から現在までに村内で生活している移住者は27組68人。西川さんたちの移住支援は「空いている家を紹介する」ことだけではなく「人と人のつながりをサポートし、自然と地域の中に溶け込めるようにする」こと。

千年という長い歴史を抱き、脈々と受け継がれてきた村の温かく濃いつながりは、時代ごとに新しさを取り入れながら、次の千年も続いていくはずだ。

田口家の広いリビング。
リノベーションで田の字型の和室をつなげた田口家の広いリビング。
畳下を板張りの床に再利用したことで味のある雰囲気に
ピザを囲んで歓談する西川さんと地域の若者たち
岩佐さん(右端)宅でピザを囲んで歓談する西川さんと地域の若者たち

お問い合わせ

一般財団法人さなごうち
住所 徳島県名東郡佐那河内村上字宮前84番地1
電話番号 088-636-4030
URL https://sanagochi.jp/