「おもちゃ王国プロジェクト」は、教員養成系大学である鳴門教育大学と、
岡山県の遊園地「おもちゃ王国」の産学共同プロジェクト。
おもちゃを使って子どもたちの学びに直結する「遊び」を提案する、
学生が中心となって実践的に取り組む活動だ。
ブロック玩具を使った実践的活動で目指す
遊びと創造のプロ集団

学童期の大切な「学び」は
「遊び」の中にある
鳴門教育大学で「おもちゃ王国プロジェクト(以下:プロジェクト)」が開始されたのは2008年度(平成20)。「遊びと創造」をテーマにした研究を行っている同大学の阪根(さかね)健二教授(現在は特命教授)に、おもちゃ開発企業「株式会社ヴィットハート」と同社のグループ企業である「おもちゃ王国」が共同研究を申し込んだことから始まった。
活動の中心は、毎週火曜日の定例会。ブロックを使って遊ぶことが自然と学びにつながる方法を、学生たちが中心となって研究・発案する。その後、具体的な遊び方やテーマを設定し、「おもちゃ王国」や大学祭のブロック教室で実際に子どもたちの反応を確認していく。
2013年度(平成25)からは香川県東かがわ市内の学校で行われる課外授業「土曜日授業」の中で、ブロックを使った授業を実施するようになった。
2018年度(平成30)には、台湾で生まれたボールを転がすレール型のブロック「ボールトラック」を基に、ブロックの種類や数、組み方などを工夫した「レールブロック」を開発・発売。遊び方が分かる冊子も制作した。
初年度は阪根研究室の院生2人だけの活動だったが、実習に参加した先輩から後輩へと「遊び」の有効性が伝わるにつれて参加人数は増加。現在、代表を務める4年生の森瑛裕(もりあきひろ)さんは「参加する前はブロック遊びを授業に用いるなんて本当?と訝(いぶか)っていたんです。でも、遊びが学びになることで『勉強って楽しい』と気付く子どもたちが増える。こういう授業があれば学校嫌いの子をつくらずに済むんじゃないかと思うようになりました」と微笑(ほほえ)んだ。



楽しい!が学びの動機に
遊びの効果を実践的に研究
13年目を迎えた今年は約35人の学生がプロジェクトに参加。現在は入学直後から参加を希望する学生も多い。例年であれば、先に「土曜日授業」を行い、その後「おもちゃ王国」での実習を行うが、今年は新型コロナウイルスの影響を受け、前期の活動が中止に。活動内容を模索しつつ9月から活動を再開した学生たちは、ドイツ製のブロック玩具「ポリエム」が洗浄できる点に着目。コロナ時代の遊び道具として、このブロックを用いた子ども向けの遊び方を考えた。
11月8日に行われた「おもちゃ王国」での実習では「ポリエムで童話をつくろう」と題したイベントを開催。物語の中に出て来た動物を実際に形にするという創造性に満ちた遊びに、集まった子どもたちは夢中になった。また、11月から2回にわたって東かがわ市立白鳥(しろとり)小中学校で行われた「土曜日授業」では、小学1年生から3年生までそれぞれの学年に合わせたブロックを使って授業。決まったテーマに沿って、自由にブロックで造形する内容に「低学年の生徒がここまで授業に集中できるのは稀(まれ)なこと」と見守っていた先生方は話す。緊張しながらも教壇に立ち授業を行った学生たちは「授業を進めるうちにどんどん子どもたちが積極的になるのを実感した」と笑顔を見せた。
教育者を目指す学生たちによって受け継がれてきた「学ぶことは楽しい」の精神を子どもたちに伝えるプロジェクト。学生にとって、幼児期から学童期に必要な教材の開発・商品化を目指し、民間企業や実際の教育現場と関わることは有意義な経験となる。変化の激しいこれからの時代にとって、楽しみながら柔軟な発想で生きていく土台となる「遊び力」は必要。学生たちは、その「遊び力」を身に付けた子どもたちを育てるべく、教育現場へと羽ばたいていく。






※撮影のためマスクを外していることがあります
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