徳島県那賀町は、森林率95%の山あいの町。
古くから林業で栄えてきたこの地域では、
今も森林の約80%を杉の人工林が占めている。
町の名産「木頭杉(きとうすぎ)」は、
硬度と弾性に優れた性質を持ち、高い品質にも定評がある。
その「木頭杉」を使った魅力ある製品を手がけるアウトドアブランドが
「WoodBoard KUKU(ウットボード クク)」。
サーフボードなどアウトドアグッズを手がけるプロジェクトを取材した。
地域の林業と環境を守るために
山と川、海の魅力を届ける
山を手入れすることが
川や海の環境保全につながる
長年、サーファー兼サーフボード製作者として活躍していた高森康博(やすひろ)さんは、海の環境保全活動の経験から、山の木々を間伐し手入れが行き届くことで、山の機能が維持され、川や海の環境を保つことにもつながると実感していた。
「自分が生まれ育った四国の木を使ってサーフボードをつくることで山と川、海のつながりを伝えられたら」と考えた高森さん。「木頭杉」をはじめ地域の森林資源に詳しい那賀町の企業「株式会社那賀ウッド(以下:那賀ウッド)」の庄野洋平さんに相談した。庄野さん自身も徳島の川や海に囲まれて育ち、地域の自然を守りたいとの思いがあり、高森さんと意気投合した。
そして、サーフボードづくりには木材の品質を見抜く目と優れた加工技術が必要と、町内で長く木製家具などを手がける「泉林産」の泉登(のぼる)さんにも声をかけた。
こうして2016年(平成28)、サーフボード製作の経験・知識を持つ高森さんと商品を企画する「那賀ウッド」、製材・加工を担う「泉林産」の三者で「WoodBoard KUKU(以下:KUKU)」プロジェクトがスタートした。
メンバーの誰もがやったことのない木製のサーフボードづくりだったが「話を聞いてすぐに、木はもともと水に浮かぶ特性を持っているし、適した加工をすればつくれると思いました」と泉さん。その言葉にも後押しされ、「やってみよう」と協働でプロジェクトを始動させることに。「せっかくなら今までにないものを」と第一作として大型の2人乗りサップボードをつくることになった。
木を使うことで始まる
持続可能な地域づくり
「木頭杉」といっても生えている場所の気温や日当たりなどによって、密度や重さがそれぞれ違う。そのため、木材に精通した泉さんを交え製品ごとに適した木材を選ぶところから製作は始まる。サップボードなどの場合は、浮力を増す穴あけ加工や安定感を出す継ぎ加工などを泉さんが施し、高森さんが水に浮かべたときの乗り心地や水面と接する部分の仕上げ、と分業でつくりあげていく。
また、木材の色味や木目に合わせて形を変えるため、同じ製品であっても一点ずつ個性を持たせるのも「KUKU」の特徴。長く木製品を手がけてきた泉さんは、「全く同じにつくるのではなく、それぞれ違っていい」というオーダーに最初は驚いたそう。統括マネージャーとして企画や販売を担当する庄野さんは、「天然の木材だから色や形がそれぞれ違うということをしっかり伝えることで、そこに魅力を感じてくれるお客さまが増えてきた」と言う。一方で、『売れるものをつくる』ことにも力を入れる。「思いを持ってものづくりをしていると、採算や買う側の視点を度外視して熱中してしまうことが多々あります。でも、どんなにいいものでも買っていただかなければ継続できません」と庄野さん。「地域資源があるから仕方なく使うのではなく、価値あるものとして誇りを持つと、地域への愛着も生まれる。持続可能な地域づくりを目指し、『カッコいい』『欲しい』と思っていただけるようなものづくりや魅力の発信をしていきたい」と話す。
「KUKU」の商品が浸透することによって、自然と木の温もりや魅力に気付き、そこから環境へと意識を向ける人が増えてくれたら…。「KUKU」のメンバーは、そう願いながら、今日も一点ずつ、一つしかない商品を丁寧に仕上げ、お客さまに届けている。
お問い合わせ
住所 |
徳島県那賀郡那賀町吉野字弥八かへ1番 |
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電話番号 | 0884-62-1163 |
営業時間 | 平日 10:00〜17:00 |
メール | kuku@nakawood.co.jp |
URL | http://wood-board-kuku.nakawood.co.jp/ |