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四国の海や川の魅力を体感!話題の水族館を訪ねて 四国の海や川の魅力を体感!話題の水族館を訪ねて

上/四国水族館(写真提供:四国水族館) 下/高知県立足摺海洋館 SATOUMI(写真提供:SATOUMI)

色鮮やかな熱帯魚
高知県立足摺海洋館 SATOUMI(写真提供:SATOUMI)
夕日をバックにジャンプする海豚
四国水族館(写真提供:四国水族館)

日本は人口あたりの水族館の数が世界一といわれており、現在、「水族館」と呼ばれる施設は全国に約150もある。

そんな中、2020年6月に四国最大規模の施設として誕生したのが香川県宇多津町の「四国水族館」だ。「四国水景」をテーマにした展示により、四国の自然を体感できる施設となっている。

また同年7月にグランドオープンした「高知県立足摺海洋館SATOUMI(さとうみ)」は、足摺岬周辺の生態系を再現し、プロジェクションマッピングを取り入れた展示も話題だ。この2つの水族館を訪ねて、展示のコンセプトや工夫を探り、両施設の魅力を紹介する。

[四国水族館]四国に元気を呼び込む新しいランドマーク
大きな水槽(綿津見の景)を楽しむ人々
四国南岸を流れる黒潮の海を再現した「綿津見の景」。水槽は、幅11m、高さ5.5mもあり、スマやアジの仲間などが泳いでいる
右上/シュモクザメをモチーフにしたマスコットキャラクター「しゅこくん」
「四国水景」をテーマに歴史や文化を含めて再現

「四国水族館」は、全国の水族館で唯一、都市名や愛称ではなく「四国」という広域な地名を冠している。多くの水族館は、自治体主導や大企業単体で設立しているのに対して、この施設は複数の地元企業などが共同で設立に奔走した。「発端は地元の人たちの地域活性化への思い。それを受け止めて、瀬戸大橋が架かる四国の玄関口にランドマークとなるような水族館をつくろうというプロジェクトが始まったのです」と松沢慶将(よしまさ)館長。

プロジェクトが本格的にスタートしたのは2015年(平成27)。そこから資金調達と並行して、専門家たちが運営コンセプトを練った。やがて導き出されたのは、「四国水景」という展示テーマ。太平洋や瀬戸内海、美しい河川、湖沼など、四国には多様な水の景色がある。そこに棲息する生き物だけではなく、植物や鉱物、そこに息づく歴史や生活文化を含めて再現して紹介するという案だ。また、神秘的な美しさ、躍動する水の生き物たちが生み出す感動に加えて、その恩恵を受ける人間の営みにもスポットを当てるため、四国各地の「水景」の視察や情報収集も行った。

もう一つ、この水族館では大切にしたい思いがあった。それは四国にある既存の水族館と共存・共栄しようという強い意思だ。松沢館長は国際ウミガメ学会の会長も務めたウミガメ研究の第一人者。その知見を生かした「ウミガメが泳ぐ大水槽をつくってはどうか」という意見が専門家から出たが、「四国内にはウミガメを紹介した素晴らしい施設が既にある」とそれを押しとどめたのは松沢館長自身。ウミガメを見るなら、そこに足を運んでもらえるように四国水族館が情報発信をすれば良いと考えたのだ。その思いを具現化するべく、2019年(平成31)3月には四国内の6つの水族館が議論するシンポジウムを開催。互いの連携強化を確認した。

2020年6月1日、コロナ禍により当初の予定より2カ月余り遅れたが、四国水族館はグランドオープンにこぎつけた。

笑顔の松沢館長
「四国水族館への訪問が、四国内の他の水族館や実際の海や川へと足を伸ばすきっかけになれば」と話す松沢館長
圧巻の巨大展示や伝統漁法を再現した水槽

宇多津臨海公園の一角に完成した四国水族館は2階建て。「太平洋」「瀬戸内海」「淡水」など6つの展示ゾーンがあり、69基の水槽で約400種1万4,000点を展示している。その一つである太平洋ゾーンの「綿津見(わたつみ)の景」は、水量650㎥の四国最大の水槽。四国南部を流れる世界最大規模の海流・黒潮で暮らす大小さまざまな回遊魚のダイナミックな遊泳シーンを見ることができる。

また、水と人々の営みを学べるのは、淡水ゾーンの「石倉(いしくら)の景」。四国の河川の伝統漁法である石倉漁の様子を再現している。石倉漁は、川底に小石を積み、そこに隠れようとする習性を持つニホンウナギや川エビを網で囲むというもの。水槽内につくった2基のミニ石倉の隙間に潜む様子を観察できる。

四国水族館入口付近外観
コロナ禍の影響を受けながらも、開館から115日で来館者30万人を突破。想定より四国外からの来館者の占める割合が多かった
(写真提供:四国水族館)
カラフルなサンゴたち
太平洋ゾーンの「海中のお花畑の景」は、カラフルなサンゴたちが群生する様子を紹介している
消波ブロックとコブダイ
瀬戸内海ゾーンの「瀬戸内のヌシの景」では、消波ブロックの間を泳ぐコブダイが観察できる
淡水ゾーンと魚
淡水ゾーンの「石倉の景」。石倉によりニホンウナギや川エビを捕らえる伝統漁法について学ぶことができる
下から見上げるアカシュモクザメ
アカシュモクザメの遊泳を下から見上げることができる「神無月の景」
四国水族館を入り口に四国全体の誘客アップを

「時間帯や季節によって変化する水景を体感して欲しい」という松沢館長らの意図を最もくみ取れるのは、2階にある「海豚(いるか)プール」の「夕暮れの景」。プールの背景には穏やかな瀬戸内海と多島美が広がっており、夕日が沈む時間帯には、オレンジ色に染まる海景色を背景にイルカたちが泳ぎ、ジャンプする姿が感動的だ。

「四国水族館を通して、四国という土地の豊かさ、楽しさを知ってほしい」と話す松沢館長。そこで四国水族館では、四国内外の店舗や観光施設とタイアップした「おトクdeシコク」と銘打った独自のキャンペーンも仕掛けている。ステッカーが貼られた協力店で四国水族館の入館済みチケットを提示すれば、割引などのサービスが受けられるというものだ。これにより四国周遊に弾みがつくことを意図している。さらには四国内の水族館を巡るツアーなどの準備を進めている。展示された風景を探して四国を旅したり、四国内の他の水族館に足を運んだりしてもらうことで、四国全体に元気を呼び込みたいという願いは、今、確かに実を結ぼうとしている。

お問い合わせ

四国水族館
住所 香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁4
電話番号 0877-49-4590
開館時間 9:00〜18:00(時期により変動あり) ※最終入館は閉館の30分前まで
休館日 無休(冬季メンテナンス休館あり)
入館料 高校生・16歳以上2,400円 小・中学生1,300円 幼児(3歳以上)600円、3歳未満無料
駐車場 あり(有料)
[高知県立足摺海洋館 SATOUMI]リピート訪問したくなる足摺エリアの核
竜串湾の生き物を物語性を持って展示

「高知県立足摺海洋館SATOUMI(以下:SATOUMI)」の前身の「高知県立足摺海洋館」は、1975年(昭和50)に四国最南端の水族館として開館し、45年間で約300万人の来館者を迎え入れた。だが、施設の老朽化などを理由に、2014年(平成26)から新水族館の建設計画がスタートする。

検討会議を重ねた結果、新しい施設は、来館者が実際の海を訪ねたように、目の前の竜串湾とつながったような水槽造形を採用し、アート作品のように楽しめる仕掛けを取り入れることなどが計画に盛り込まれた。

2020年2月、旧足摺海洋館は惜しまれつつ閉館し、7月に「SATOUMI」がオープンした。新施設には竜串湾の生き物を中心に約350種1万5,000点が、山から川、海へとつながる物語性を持って展示されている。展示する生き物の調達には、飼育員自らが収集に当たったほか、地元の漁師も協力してくれた。また、地域の人たちもイベントの手伝いなどを率先して申し出てくれており、地域全体でこの施設を盛り立てている。

笑顔の新野館長
「継続的にイベントを行いリピーターを増やしたい」と話す新野館長
(写真提供:SATOUMI)
工夫を凝らした展示で自然との一体感を満喫

最初の展示は「足摺の原生林」。巨木に囲まれた1・2階吹き抜けの空間には森から渓流、里山、河口までの景色が連続して展開し、淡水魚のアカメやカエル、カワウソなどの生き物が観察できる。1階では、プロジェクションマッピングにより、朝日が昇り、雨が降り、夕日が沈むまでの様子が光や音で再現されている。「来館者は、あたかも森に迷い込み、その時間経過を体感しているかのようなひとときを過ごすことができるんです」と話すのは、新野大(にいのだい)館長。

また、ウミガメの水槽は全面がガラス張りになっており、水槽の向こうには実際の海景色が広がっており、自然と展示の一体感を満喫することができる。

多彩な展示の中で、ひときわ目をひくのは、2階までの吹き抜け構造になった「竜串湾大水槽」だ。水量440㎥を誇っており、シコロサンゴやテーブルサンゴの群落の合間をカラフルな熱帯魚が泳ぐ様子が圧巻。1階では飼育員が魚たちに餌を与えるアトラクションも行われている。この巨大水槽の2階部分では魚たちの様子を上から見下ろすことができる。

館内には水中写真家としても活躍する新野館長が撮影した写真を解説付で展示したコーナーもあり、こちらも好評だ。

「足摺の原生林」コーナーの様子
「足摺の原生林」コーナー。プロジェクションマッピングによるアートな展示も見どころ。巨木の中に潜んでいるヤモリなどの小動物や、木々の間に隠れている野鳥の模型などを探すのも楽しい
天井までが水槽の外洋コーナー
天井も水槽になった外洋コーナー。清水サバ(ゴマサバ)やアジ類などの回遊魚をさまざまな角度から観察できる
足摺海洋館外観
奇岩で知られる竜串エリア全てが大きな自然のミュージアムであることをコンセプトに展示。近くには「足摺海底館」や「海のギャラリー」、キャンプ場などの施設もある
ウミガメが泳ぐ様子
アカウミガメやアオウミガメなどが優雅に泳ぐ様子は迫力満点。水槽の向こうには竜串湾が広がる
(写真提供:SATOUMI)
竜串湾大水槽の様子
1階から見た「竜串湾大水槽」。ここでは、美しい熱帯魚と釣人に人気の温帯魚が同居する珍しい展示が見られる
(写真提供:SATOUMI)
飲食店やアクティビティと連携してエリアの魅力創造を

開館から1カ月が経過した8月、SATOUMIの来館者は5万人を突破した。「コロナ禍の状況にありながらも、多くの人が生き物に触れて癒されたいと考えたのでしょう」と新野館長は顔をほころばせる。

だが、国内にはたくさんの水族館があり、「この地ならでは」の楽しみ方を提案することは大きな課題。そのためSATOUMIでは、地域との連携に積極的に取り組んでいる。カラフルな熱帯魚やサンゴ礁が見られるグラスボートやシュノーケリング、スキューバダイビングなどのアクティビティへの橋渡しや、清水サバ(ゴマサバ)など展示されている魚種が食べられる飲食店とのコラボがその好例だ。館内には、魚とともに料理写真を展示した地元の「食」を伝えるコーナーを用意した。また、企画展と合わせて館内にキャンプ体験コーナーを設置し、隣接する竜串ビジターセンターやキャンプ場と共同で体験型プログラムを実施した。今後も「リピート訪問したくなるエリア」の核として、歩んでいく考えだ。

竜串湾大水槽の様子、魚が大量に泳いでいる
2階から見た「竜串湾大水槽」。奇岩に囲まれたタッチングプールも整備されている

お問い合わせ

高知県立足摺海洋館SATOUMI
住所 高知県土佐清水市三崎今芝4032
電話番号 0880-85-0635
開館時間 9:00〜17:00
休館日 無休
入館料 大人1,200円 小・中・高校生600円 未就学児無料
駐車場 あり(無料)