ご祝儀袋や贈答品の包みに使用される水引。愛媛県四国中央市は、全国でも有数の産地です。伝統工芸「伊予水引」は江戸時代の元結（もとゆい）※1に始まり、紙漉き（かみす）※2と共に発展。紙に関する業種が集積していることを活かし、伝統技術の継承の傍ら機械化や新商品の開発もいち早く行われてきました。「新しいアイデアを相談しやすい環境なのでしょうね」と語るのは、伊予水引金封協同組合の一員である伝統工芸士・今村八千代さんです。

昨年、組合の有志と松山市出身のアーティスト・月岡彩さんによるブランド「ＭＩＭＵＳ（ミムス）」が誕生。伝統的な水引細工を現代風にアレンジし、生活に取り入れやすいアイテムへと昇華させました。代表作「白無垢」シリーズは結納飾りを白一色で仕上げたもの。一糸乱れぬ結び目や見えないように繋ぎ合わされた継ぎ目など、技が際立つ繊細な仕上がりです。

高齢化の進む組合にとって「ＭＩＭＵＳ」の取り組みは大きな刺激となりました。美術学生や販売店との交流が生まれたり、地元の子どもたちが魅力を内外へ発信したりと広がりも見え始めています。今村さんは「伊予水引を次世代に引き継ぐために、受け皿を作っておくことが私たちの使命です」と意気込みます。

※1.日本髪を結うための紙製の紐　※2.伝統的な和紙の製法