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ひとことジャーナル
災害時の避難手段に合言葉は「ばすだしで」。安全で快適な車中泊を 災害時の避難手段に合言葉は「ばすだしで」。安全で快適な車中泊を

近年、集団感染のリスクが低い車中泊が、災害時の避難先として注目されています。一方で、過去には、災害関連死が問題視されたことも。安全で快適な車中泊を目指すなら、合言葉の「ばすだしで」を意識して、ふだんから体験しておくことが大切です。


注目の集まる災害時の車中泊 注目の集まる災害時の車中泊

感染リスクを減らせる反面、エコノミークラス症候群※の心配も

2016年(平成28)に発生した熊本地震では、避難所の居心地の悪さや余震の恐怖から車中泊を選ぶ方が多くいました。コロナ禍となり集団感染リスクの低い車中泊は、今まで以上に注目を集めています。しかしながら、熊本地震で災害関連死と認定された方の3割が車中泊をしており、特にエコノミークラス症候群の死亡事故が問題となりました。そのため、コロナ禍以前は「推奨しない」としていた自治体もあリましたが、現在では複数の自治体で車中泊による避難の重要性が見直されています。

※エコノミークラス症候群

深部静脈血栓症と急性肺血栓塞栓症の総称。長時間足を動かさず血液の流れが悪くなることで足の静脈の中にできた血栓(深部静脈血栓症)が、歩行などをきっかけにして、血液の流れに乗り肺まで到達し、肺の血管を塞いで胸の痛みや息切れなどの症状(急性肺血栓塞栓症)が現れること。

車中泊
安全な車中泊の合言葉 安全な車中泊の合言葉

「ばすだしで」に気をつけて

では、安全に車中泊をするためにはどうすればよいのでしょうか? アウトドア好きの人の間では、以前から快適な車中泊スキルがありました。そのスキルを簡潔にまとめた合言葉が「ばすだしで」です。これに沿って車中泊のコツをお伝えします。

まず、「ば」=“場所”です。浸水、高潮、土砂災害の恐れがある場所での車中泊は危険です。災害ごとに安全な場所を検討しましょう。例えば2019年(令和元)の台風で浸水被害のあった長野県では、翌年「ー車で避難・安全確保ー避難場所マップ」を公開して、車で安全を確保できる場所を明示しています。日頃から自分の住む地域やその周辺のハザードマップを自治体ホームページなどで確認しておきましょう。

「ばずだしで」
命に関わる「水平」 命に関わる「水平」

“ファーストクラス”を目指す

「す」=“水平”は命に直結します。食事や水分を十分にとらない状態で、車などの狭い座席に長時間座っているなどして足を動かさないと、血行不良が起こり、いわゆるエコノミークラス症候群の発症リスクが高まります。災害直後、準備もないまま避難し家族全員が車中泊となると、座ったままの姿勢や窮屈な姿勢で寝てしまい、エコノミークラス症候群になりやすくなってしまう危険性も。

そこで大切なのが「エコノミー」ならぬ“ファーストクラス”を目指すこと。ファーストクラスのシートと同じようなフルフラット(水平)が理想です。車種によっては、シートを倒すだけで水平になりますが、そうでない場合、クッションや毛布を段差に詰めたり、エアマットで調整したり、木工工作などで車内ベッドフレームを自作する方もいます。水平にするには周到な事前準備が必要です。まずは、自分の車のシートアレンジを確認しましょう。

ファーストクラスを目指す
快適性を高める工夫 快適性を高める工夫

少しの工夫で我慢しすぎない車中泊を

車には、外気の影響を受けやすい鉄とガラスが多く使われています。そのため「だ」=“断熱”しないと夏は暑く、冬は寒いです。夏はアスファルトの上を避け、木の下など日陰になる場所を選ぶなど、対策が限られますが、冬は断熱材を利用した対策が有効です。空気は非常に優れた断熱材なので、空気を含むエアマットや断熱マット、ダンボール、空気緩衝材などで窓、ドア、床を覆います。

「し」=“収納”は、夜、貴重品やライト等が行方不明にならないよう、事前に収納場所を決めておきます。

「で」=“電気”は、情報収集や連絡に欠かせないスマートフォンの充電に必要です。電気自動車など、車種によっては家電を動かせるものも。また、ポータブル電源を利用すると、調理家電や電気毛布なども使用できます。「ばすだしで」を意識して、まずは無理なく、庭先やオートキャンプ場などで車中泊にチャレンジしてみてください。

少しの工夫で我慢しすぎない車中泊を
あんどう りす

あんどう りす    ―  risu andou   ―

professional
profile

 アウトドア流防災ガイド。子育てバッグを防災バッグとしても使う工夫など阪神淡路大震災の経験をふまえ、アウトドアの知恵を日常生活と防災に取り入れる方法をいち早く紹介。口コミで全国に広がり、講演は年100回以上。内閣官房国土強靭化推進室、弁護士会、医師会、保育士会、防災士会など支援者研修も多数。リスク対策.comにてコラム連載。共同通信社の連載で各地方紙にて「アウトドア防災」を執筆。著作「家族の笑顔を守る暮らしの知恵 りすの四季だより」新建新聞社他

あんどう りす

あんどう りす risu andou

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 アウトドア流防災ガイド。子育てバッグを防災バッグとしても使う工夫など阪神淡路大震災の経験をふまえ、アウトドアの知恵を日常生活と防災に取り入れる方法をいち早く紹介。口コミで全国に広がり、講演は年100回以上。内閣官房国土強靭化推進室、弁護士会、医師会、保育士会、防災士会など支援者研修も多数。リスク対策.comにてコラム連載。共同通信社の連載で各地方紙にて「アウトドア防災」を執筆。著作「家族の笑顔を守る暮らしの知恵 りすの四季だより」新建新聞社他