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ジャンピングふるさと 上勝阿波晩茶 上勝阿波晩茶
内藤さん(左)の畑や農道に点在する茶の木の剪定や茶葉の収穫も手伝うという百野さん。「百野が手伝ってくれて助かる」と内藤さんは目を細める。家族の中で受け継がれてきた「上勝阿波晩茶」を受け継げるのは、家族のような関係性があってこそ

ここにしかない
お茶づくりをこれからも

徳島県東部に位置し、標高1,000m級の山々に囲まれた上勝町。
人口は約1,500人と少ないが、料理を引き立てる”つまもの“の
生産販売を行う「株式会社いろどり」やごみをゼロにする取り組み
この町で日常的に飲まれてきた「上勝阿波晩茶※」の
製法を受け継ぐ「Kamikatsu-TeaMate」を訪ねた。

※晩茶…緑茶などに用いる新芽ではなく、盛夏まで生長させた茶葉を使う

かみかつティーメイトKamikatsu-TeaMate
世界的にも珍しい乳酸菌発酵のお茶

阿波晩茶は、独特の香りと酸味を持つ乳酸菌発酵のお茶で、徳島県の山深い地域の一部で古くから飲まれている。成熟した茶葉を茹(ゆ)でた後で発酵させる「後発酵茶」は、世界的にも珍しい製法。今年3月には、上勝町・美波町・那賀町にそれぞれ伝わる阿波晩茶の独特の製造技術が国の重要無形民俗文化財に指定された。阿波晩茶のうち、上勝町でつくられたものを「上勝阿波晩茶」と呼ぶ。平安時代末期に妙薬の製法として中国から伝わり、400年以上前から日常的に飲まれるようになったといわれている。自家用として親から子へと受け継がれてきたため、茶葉を茹でる時間や発酵を促す乳酸菌の種類、発酵期間などはそれぞれ違う。そのため、出来上がったお茶の風味もその家によって全く異なるという。

現在、「上勝阿波晩茶」の生産農家は80戸ほど。70代以上の生産者が多く、作業が堪(こた)えるという生産者も増えてきた。この伝統的なお茶を受け継いでいきたいと町内の農家が生産したお茶を取りまとめて県内外で販売しているのが「Kamikatsu-TeaMate(以下:TeaMate)」の百野大地(ひゃくのだいち)さんだ。

2011年(平成23)、上勝町で“つまもの”の生産と販売を行う「株式会社いろどり」のインターンシップに参加した百野さん。作業後に出されたお茶の酸っぱさに驚いたのが、「上勝阿波晩茶」との出会いだった。「大阪に戻ってから、豊かな自然に囲まれた上勝での生活をよく思い出すように。同時に高齢化で担い手不足、後継者不足という状況を知ったことで、5年後、10年後はどうなるんだろう、と常に気になっていた」と言う百野さんは、2013年(平成25)に上勝町地域おこし協力隊として移住。2年半、「上勝阿波晩茶」のPRに取り組んだ後「継承するためには、生産者のサポートが大切」と実感し、2016年(平成28)に自らも生産農家として独立するとともに「TeaMate」を立ち上げた。

移住の先輩でもある百野さんの母、恭子さん(右)と「TeaMate」スタッフの山口智美さん
移住の先輩でもある百野さんの母、恭子さん(右)と「TeaMate」スタッフの山口智美さん
お茶の仕込み時期は毎年7月から8月にかけて。摘みとった茶葉を大釜で茹でた後、桶に2週間以上漬けて発酵させる
お茶の仕込み時期は毎年7月から8月にかけて。摘みとった茶葉を大釜で茹でた後、桶に2週間以上漬けて発酵させる

飲んだことのない人へ
魅力を正しく伝える

飲んだことのない人へ魅力を正しく伝える

「TeaMate」で取り扱うのは、11名の生産者による「上勝阿波晩茶」。百野さんが「上勝のお父さん」と慕う生産者のひとり内藤満雄(みつお)さんは、毎年、200ℓの桶(おけ)2つ分の「上勝阿波晩茶」を仕込む。その製法は「子どものころから手伝っていたから自然と覚えた」と笑う。「暑い時期の作業が年々体に堪えるようになった」と話を聞いた百野さんは、内藤さんのお茶づくりを毎年手伝いながら、茶葉の茹で加減から撹拌(かくはん)の仕方、天日干しのタイミングなどを学んだ。

生産農家としてお茶づくりを担いながら、県内外のイベントで各生産者のお茶を飲み比べてもらうなど、発酵茶の特徴や阿波晩茶の魅力を伝え続けてきた「TeaMate」。コロナ禍により、昨年以降イベント販売は中止し、現在はオンラインショップでの販売が中心となっているが、電話でお客さまの好みを聞いておすすめの茶葉を選んだり、オンライン交流会やSNSでお茶の説明をしたりと、対面販売の時と変わらず丁寧に伝える。「発酵食品が注目されていることもあり、『上勝阿波晩茶』を初めて飲むという方も多い。一度飲んで苦手だと思ってほしくないからこそ、生産者によって味が違うこと、慣れないと飲みにくいことなども正直に伝えている」と言う。

最近では百野さんと同様に「上勝阿波晩茶」を伝承するための団体や活動も増えてきた。「飲み手が増えることで、生産してきた方が唯一無二のお茶に誇りを持つことができ、担い手が増えるならうれしい。『上勝阿波晩茶』がそれぞれの家のやり方で長く伝わってきたように、それぞれのやり方で広めていけばいいと思うんです」と百野さん。長く大切に受け継がれてきた山奥の発酵茶は、大切にしたいと思う人たちの手でこれからも守られ続ける。

モンベルクラブ・フレンドフェア
アウトドア用品の人気ブランド「モンベル」が主宰するイベント「モンベルクラブ・フレンドフェア」に出展
TeaMate
「不要な草やごみを取り除きながら茶葉を選別していくのは根気がいるので大変」という生産者の声に応えて、「TeaMate」では無選別で引き取る。生産者の違う茶葉を混ぜることはせず、スタッフは丁寧に選別し、生産者の名前の入ったパッケージで包装する
松本聡子さん
「上勝阿波晩茶」の知名度向上を目指して設立された「一般社団法人上勝阿波晩茶協会」も上勝阿波晩茶を支える団体のひとつ。事務局を担う地域おこし協力隊の松本聡子さんは、茶摘み体験や桶オーナー制度などを企画し、上勝阿波晩茶のファンづくりに力を入れている

お問い合わせ

Kamikatsu-TeaMate
住所 徳島県勝浦郡上勝町大字正木字平間155-1
電話番号 080-5710-3785
営業時間 9:00~18:00
定休日 土曜・日曜・祝日
URL https://www.kamikatsu-teamate.com

※撮影のためマスクを外している場合があります