「瀬戸内しまなみ海道(以下:しまなみ海道)」は、アメリカCable News Network(CNN)のトラベル情報サイトで「世界7大サイクリングロード」に選定され、フランスのミシュランガイド誌では1つ星が与えられるなど、自転車旅が楽しめる場所として世界的に知られている。
架橋から6年経った2005年(平成17)、旧今治市と島しょ部が合併し今治市が誕生した。その頃からスタートしたのが、自転車で渡れる「しまなみ海道」を活用して島を活性化しようというまちづくり事業。人口減少が進む島での暮らしを持続するため、交流人口を増やす事業に、地域コーディネーターとして地域住民とともに取り組んだのが現在の「NPO法人シクロツーリズムしまなみ」代表の山本優子さんだ。サイクリストにモニターとして自転車で島を巡ってもらったところ、思いもよらない反応があったという。「モニターさんたちは主要道から外れて、脇道に入っていくんです(笑)。後で聞くと、のどかな集落や暮らしの息遣いを感じる農道をゆっくり走ることや、途中で出会った地元の人との会話が楽しかったと。私たちが当たり前に感じている日常こそが地域資源なんだ、と気付いたんです」と山本さんは話す。
その後、しまなみ海道10周年の2009年(平成21)にシクロツーリズムしまなみを発足。日本にはまだ自転車旅という概念が浸透していなかったが、地域住民とともに地道な活動を続けてきた。その一つが、市街地や島のあちらこちらにある、民家や会社の軒先に設けられた「サイクルオアシス」という自転車休憩所だ。