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プロムナードタイトルロゴ 国内シェアわずか1%!?国産ライチの栽培に挑戦!〜四国総合研究所〜

四国総合研究所は、1987年(昭和62)、四国電力の技術研究所を母体として設立され、
以降、幅広い分野の研究に取り組んできました。
農業もその一つ。研究テーマの1つである「農業電化」によって、地域活性化を後押ししています。
昨年度は、独自の農業高度化技術を活用して国産ライチの栽培に成功。
これまで培ってきた技術やノウハウを活用した、新たな取り組みに迫ります。

独自の農業支援技術を活用し、国産ライチ栽培を!

四国総合研究所では、これまでの技術やノウハウを活かし、四国の農業のさらなる活性化につなげようと、2011年(平成23)、日本での栽培が難しいとされている「希少熱帯果樹」に関する研究を開始しました。

研究対象は、ドラゴンフルーツ、スターフルーツ、パパイヤなどの中から、果実の希少性や外見、品質を考えライチを選定。ライチは、中国南部からタイ北部の亜熱帯地域を原産とする常緑高木で、中国、台湾、タイなどの東南アジアを中心に栽培されています。日本でみかける果実は、ほとんどがこれらの地域から冷凍で輸入されたもので、「中華料理のデザートで見かける茶色の果実がライチ」と思っている日本人も少なくありません。ところが、実際の果実は鮮やかな紅色で、真夏の照り付ける日差しを受けてその美しさはいっそう際立ちます。日本では、温暖な宮崎、鹿児島、沖縄など限られた地域でのみ少量生産されており、国内に流通する国産ライチのシェアはわずか1%。四国総合研究所は、その希少性に特に着目しました。

当初、ライチ栽培を先行して行っていた各地が地域の特産にしようと、研究成果が門外不出であったことから、栽培に関する知見や情報は、まったくありませんでした。そのため、香川大学農学部で熱帯果樹を専門とする片岡郁雄教授(現:副学長)にも研究に加わっていただき、2015年(平成27)から共同研究がスタートしました。

各地から入手した12品種250本のライチの苗木から、ハウス栽培に適した品種を選定し、育成試験を開始。育成には、香川大学との共同研究で開発した、肥料管理や水やりの自動化システムを組み込んだ「ポット式の養液栽培方式」を採用しました。また、四国総合研究所を代表するテクノロジーである、植物の抵抗力を高める「みどりきくぞう」や、環境モニタリングシステム「ハッピィ・マインダー」も取り入れ、環境制御の適正化や高品質化、減農薬を図っています。「苗木は入手困難で、沖縄県の熱帯果樹園からの入手にも苦労しました。熱帯果樹に適した栽培施設を考案し、ライチの生育状態を観察しながら、環境条件設定を行うなど、今も試行錯誤しながら適正化を図っています」と、ライチ栽培を担当する四国総合研究所電子アグリバイオグループ長の工藤りかさん(農学博士)は話します。

「みどりきくぞう」
「みどりきくぞう」。
緑色の光を照射して植物の持つ抵抗力を高め、病害虫を予防する
「ハッピィ・マインダー」
「ハッピィ・マインダー」。
栽培管理に必要なハウス内の環境が一目で分かる
「ポット式の養液栽培方式」
「ポット式の養液栽培方式」。
一定濃度の肥料成分を含む養液を定期的にチューブから自動で潅水する
培ってきたものが〝実〟のりその先へ

熱帯果樹は生理生態が不明なうえ、成木となり実がなるまでの生育期間が長く、長期間の研究が必要。その間、想定外の生理反応の要因解析や、「みどりきくぞう」の導入前には、病虫害の発生への対応に追われることもあったといいます。こうした苦労の中、生育調査データや環境モニタリングデータ、日々の観察から知見を蓄積し、長期間研究を積み重ねることで、2019年(令和元)10月、ようやく約70本のライチの苗木が果実生産可能な成木に生長。植栽から5年目を迎えた昨年7月には、初めて国産ライチ果実を実らせることに成功しました。四国総合研究所で栽培しているライチは、糖度18度前後で、高いものだと糖度20度の甘みを持ち、大きい果実だとゴルフボールほどの大きさで、40g以上のものもあります。「これまで野菜や花の研究は多く取り組んできましたが、熱帯果樹のライチについての研究は初めての試みで、課題も多く不安も多かった。紆余曲折の研究の結果、初めて果実がたくさん実ったことで一先ず安堵しました」と工藤さんは笑顔を浮かべます。

そして今年度は、国産ライチ果実の安定生産につながる要因の解明を進めています。一般的に果樹には、豊作の表年と不作の裏年を繰り返す「隔年結果」という現象があります。昨年は1年目の果実生産であったことから、2年目の今年、ライチにおいてもこの現象は現れました。これをどのように解決して安定生産につなげるかが今後の研究課題です。

果樹の栽培試験
「果樹の栽培試験では、比較のために数年間の反復試験データが必要。継続的に調査を行い、課題を一つ一つ解決することで、高品質ライチの安定生産につなげ、農業の活性化に貢献していきたい」と話す工藤さん
四国総合研究所で栽培するライチ
四国総合研究所で栽培するライチは、鮮やかな紅色で、果肉がぷるんとした口当たりでみずみずしく、香り・甘味・酸味のバランスもよい

今年は、カフェ等の協力を得てライチを使ったデザートやドリンクを期間限定で提供し、市場評価も行いました。今後は、蓄積したノウハウに基づく栽培システム設計や技術指導、成木販売など「国産ライチ栽培コンサル」の可能性も検討する予定。地元農業のさらなる振興を目指し、四国総合研究所の研究開発はこれからも続きます。

「ライチジンジャー」
徳島市の「カフェ ノビアノビオ」で提供された四国総合研究所で栽培したライチを使用したメニュー「ライチジンジャー」

お問い合わせ

株式会社 四国総合研究所 電子アグリ技術部
電話番号 087-844-9229
URL http://www.ssken.co.jp