コロナ禍により注目され始めたワーケーションだが、徳島県では2012年(平成24)には既にその取り組みが始まっていた。「きっかけとなったのは、2011年(平成23)の地上デジタル放送への移行です」と話すのは、徳島県政策創造部地方創生局とくしまぐらし応援課の藤川忠大(ただひろ)さん。それまで、県民はNHK2波に加え、地元の民間放送局1波と、近畿地区の放送局の番組を視聴していたが、地上デジタル放送移行後は県外の放送局の番組を視聴することが困難となってしまう。そこで移行前の10年間で取り組んだのが、「全県CATV(ケーブルテレビ)網構想」。大容量通信が可能なインターネット接続サービスの整備やインターネットによる電話(IP電話)の拡充などにより県民が情報を得やすい環境を整えたのだ。
昨年3月の調査で、CATVの世帯普及率は全国平均52.3%であったが、徳島県は90.5%(9年連続全国1位)という高い数字を示すまでになった。徳島県ではこうした情報インフラの活用方法として、サテライトオフィスの誘致やコワーキングスペースの設置を積極的に行い始めた。特に祖谷を中心とする、にし阿波地域、神山町、美波町の3地域は、サテライトオフィスの集積地として、全国でも注目を集めるエリアとなっている。
今年3月、企業・団体のサテライトオフィスは77社にまで増え、150人以上の地元雇用を創出。地方創生の全国モデルとなった。「交流人口や移住者の増加、空き家の活用で、地域に元気を呼び込むことができました」と藤川さん。こうした取り組みをさらに進化させ、「アワーケーション」のPRがスタートした。