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ジャンピングふるさと 「SOIL TABLE」のコンフィチュール(各1,296円) 「SOIL TABLE」のコンフィチュール(各1,296円)
鱧は、もともと天ぷらや湯引きをはじめ、煮ても焼いてもおいしいといわれる淡白な白身魚。骨切りしたものと違って刺身でも味わえる「技あり鱧」を使うことで、料理の幅が広がる。骨がないことで子どもたちや骨切りの食感が苦手な人にも食べてもらいやすくなるという

違いを引き出すのは、秘伝の技
「技あり鱧(はも)」を地域ブランドに!

えひめ技あり鱧プロジェクト

「四国の西の玄関口」と呼ばれる八幡浜市は、
トロール船による漁を中心とした漁業の町。
八幡浜漁港における鱧の年間水揚げ量は約204トン※と、
国内でも有数の年間水揚げ量を誇っている。
この地で2020年(令和2)にスタートしたのが、
鱧の身から骨を削ぎ取る技法を用いた
「えひめ技あり鱧プロジェクト」。
コロナ禍で誕生した、地域ブランド「技あり鱧」を
確立するためのプロジェクトを取材した。
※2019年水産庁産地水産物流通調査

「骨切り」という常識を新たな技で覆す

国内有数の鱧の産地であり、昔から年間を通じて鱧の水揚げ量が多い八幡浜市。だが、そのほとんどが京阪神に出荷されており、地元でも鱧が豊富に獲れることは知られておらず、県内消費や認知度アップは長年の課題だった。

新型コロナウイルス感染拡大により、各地で飲食店の休業が余儀なくされた2020年(令和2)春。八幡浜市においても影響は大きく、飲食店の多くが苦境に立たされる事態に、愛媛県料飲業生活衛生同業組合八幡浜支部(以下:八幡浜料飲組合)部長の伊藤篤司さんはなんとか打破する方法はないかと模索していた。そんな時に耳にしたのが、鱧の骨を取り除く技法を持つ料理人の存在。鱧は長くて硬い小骨がたくさんあるため、一般的には細かく骨を断ち切る「骨切り」という調理方法によって提供される。調理の手間がかかることもあり、地元ではあまり大きな消費につながらなかった。「和食の世界では骨切りが当たり前。骨を取り除くなんて方法は考えもしなかった」と話す伊藤さんは、その技法を持ち、松山市で「出汁茶漬け 網元茶屋」を経営する料理人・塩沢研さんを訪ねることにした。

塩沢さんが30年以上前に修行先で学んだという「骨とり」の技法は、鱧の骨格に沿って包丁を入れ、小骨を削ぎ取るというもの。「骨とり」をした鱧料理を実際に味わった伊藤さんは、これまで食べたことのない食感に驚いた。さらに、骨が太く「骨切り」に向いていないため、これまで安価で取り引きされてきた大きな鱧が活かせる点にも着目。「骨をとることで大きな鱧を使えれば、地元の飲食店はもちろん、水産業者や漁師も喜ぶ。この技法を教えてほしい」と伊藤さんから頼まれた塩沢さんは「この技が地域の活性化につながるのはうれしい」と快諾。こうして同年10月、八幡浜商工会議所、八幡浜料飲組合、愛媛新聞社南予支社などが集まり、「えひめ技あり鱧プロジェクト(以下:鱧プロジェクト)」が始動した。

身から骨を削ぎ取る新技法で調理した「技あり鱧」は従来の骨切り鱧ではできなかった刺身が提供できる
「鱧プロジェクト」実行委員長の伊藤さん(右)と、八幡浜漁業協同組合加工部次長の清原さん(左)。伊藤さんは八幡浜センチュリーホテルイトーの代表でもある

コロナ収束後に向けて新たな技を身に付ける

設立以来、「鱧プロジェクト」で定期的に行っているのは、塩沢さんを講師として、愛媛県内の料理人を対象に技法を教える技術講習会。県内の料理人に限定した理由は、新型コロナウイルス収束後には、県外の観光客に「技あり鱧」を味わうために足を運んでもらいたいとの思いから。骨の構造を覚えるところからスタートし、実際に捌いてみる。講習会から2週間後に技能認定試験を実施し、基準をクリアした人に認定証を授与。その料理人が所属する料理店を鱧プロジェクト認定店として認定する。試験は、20分以内に全ての骨をとることができれば合格というものだが「長く鱧を取り扱ってきた料理人でもすぐにできるものじゃない。講習会が終わってからずいぶん練習しました」と、第一回の認定試験で合格した「すし光」の二代目、尾崎大介さんは言う。

昨年10月には、八幡浜漁業協同組合が「技あり鱧しゃぶしゃぶセット」を開発。生のまま特殊な冷凍機で急速冷凍した「技あり鱧」は、解凍後も新鮮そのもの。八幡浜漁業協同組合加工部次長の清原健さんは「半生のしゃぶしゃぶは骨切りした鱧では味わえない。これからも八幡浜のさまざまな食材と組み合わせた楽しみ方を提案していきたい」と言う。

「高知県のカツオや香川県のうどんのように、ゆくゆくは愛媛ブランドとして浸透してほしい」と話す伊藤さん。鱧の産地でコロナに負けないための取り組みとして始まった「鱧プロジェクト」。コロナ収束後には、ここにしかない味をぜひ食べにきてほしいと願い、料理人たちは新たな技を学び、腕を奮い続ける。

コロナ禍で出荷先が減少した漁師の苦悩を聞き、何かできないかと考えていたという塩沢さん。自分の持つ技が多くの事業者の役に立つのであればと「技あり鱧」の先駆者として講習会を行っている
八幡浜市内で愛され続けている創業48年の老舗寿司店の職人として長年調理をしてきた尾崎さん。「コロナ禍で時間ができたと考え、新しい技術を身に付けて次につなげたいと思い講習会に参加した」と話す
「技あり鱧」を先付けから刺身、天ぷらとさまざまな料理で楽しめる「すし光」の鱧コース(1人前4,400円(2名〜事前予約要)・季節によって内容は異なる)
八幡浜市内で愛され続けている創業48年の老舗寿司店の職人として長年調理をしてきた尾崎さん。「コロナ禍で時間ができたと考え、新しい技術を身に付けて次につなげたいと思い講習会に参加した」と話す
「技あり鱧」を先付けから刺身、天ぷらとさまざまな料理で楽しめる「すし光」の鱧コース(1人前4,400円(2名〜事前予約要)・季節によって内容は異なる)
(左)郵便局カタログで発売された「しゃぶしゃぶセット」は、すぐに完売。長く漁協で加工を担ってきた清原さんもその人気ぶりに驚いたそうだが、「ぷりぷりの食感をぜひ味わってほしい」と話す。現在は休止中だが、今年の郵便局お歳暮カタログで販売予定
(右)八幡浜センチュリーホテルイトーで開発された「技あり鱧」の鱧一夜干し。骨がないため鱧本来のフワッとした柔らかさが引き立つ
えひめ技あり鱧プロジェクト
URL https://ehimewazahamo.jp
https://www.facebook.com/ehimewazahamo/

お問い合わせ

愛媛県料飲業生活衛生同業組合八幡浜支部(八幡浜センチュリーホテルイトー)
住所 愛媛県八幡浜市天神通1-1460-7
電話番号 0894-22-2200
すし光
住所 愛媛県八幡浜市仲之町395-6
電話番号 0894-22-1130
八幡浜漁業協同組合
住所 愛媛県八幡浜市大黒町五丁目1522-18
電話番号 0894-22-2811
八幡浜商工会議所
住所 愛媛県八幡浜市北浜一丁目3-25
電話番号 0894-22-3411

撮影のためマスクを外している場合があります