高知県中土佐町大野見地区(旧・大野見村)は、標高300mの位置にある
人口約1,000人(2021年現在)の中山間地域。
60年以上前から七面鳥を飼育し、1987年(昭和62)には行政と生産農家が一体となって大野見七面鳥生産組合(以下:組合)を設立した。5年前、その七面鳥のとりこになり移住し、七面鳥という食文化を守り大野見地区の魅力を伝えようと奔走する、元アスリートの取り組みを取材する。
歴史ある七面鳥文化を受け継ぎ
「しまんとターキー」を全国へ
大野見七面鳥生産組合(松下商店)

高知県中土佐町大野見地区(旧・大野見村)は、標高300mの位置にある 人口約1,000人(2021年現在)の中山間地域。
60年以上前から七面鳥を飼育し、1987年(昭和62)には行政と生産農家が一体となって大野見七面鳥生産組合(以下:組合)を設立した。5年前、その七面鳥のとりこになり移住し、七面鳥という食文化を守り大野見地区の魅力を伝えようと奔走する、元アスリートの取り組みを取材する。

60年以上前から農閑期を支えてきた七面鳥
欧米では日常的に食され、世界中で食肉として広く認知されている七面鳥。特にアメリカでは七面鳥の丸焼きは感謝祭には欠かせない料理で、この日だけで全米では約4千万羽が消費されるという。一方、日本で現在飼育されている七面鳥は、主要産地の北海道、石川県、高知県の3カ所合わせて約3千羽。アメリカの飼育数約2億羽と比較すると、日本での飼育数がいかに少ないかが分かる。
実は、日本における七面鳥の歴史は古く、江戸時代初期にオランダから日本に入り、明治時代には洋食文化の一つとしてメニューに取り入れられた。昭和天皇の即位礼で〝七面鳥炙焼〟が提供されたという文献も残る。さらに第二次世界大戦後、アメリカの食文化が広がるとともに七面鳥の飼育が全国に広まっていった。大野見地区で七面鳥が飼育されるようになったのは、1960年(昭和35)頃。最盛期には10軒の農家が飼育していたといい、1987年(昭和62)には、大野見村役場と6軒の生産農家が合同で組合を設立。村役場内に事務局を設置し、農閑期になると組合員や役場の職員が総出で加工して村内で販売していたという。2006年(平成18)の中土佐町との合併後は、地区外からも注文が入るようになり、生産量は年々増えていった。
しかし、高齢化と担い手不足で生産農家は減少する一方。中土佐町では、長い歴史の中で培ってきたノウハウを引き継いで七面鳥の飼育から販売までを担う人材が必要と、2016年(平成28)に地域おこし協力隊を募集した。それに心を動かされたのが、当時大阪の自治体職員としてスポーツ振興に関わっていた松下昇平さんだった。




地域の歴史と特産を受け継ぎ拡大するために
松下さんは、日本体育大学トライアスロン部出身の元アスリート。高校時代には留学先の米国で高タンパク低脂肪の七面鳥をよく食べていたものの、日本では手に入りにくいと思っていた。トライアスロン大会で訪れたこともある中土佐町で七面鳥が生産されていると聞いて、すぐに現地を見学。その食感や旨味に驚いたと同時に「この食文化を維持して、アスリートに栄養食として広めたい!」と強く感じた松下さんは、七面鳥に関われるのであればと2017年(平成29)春、地域おこし協力隊として中土佐町大野見地区に移住した。
七面鳥は生後200日ほどでオス10kg、メス5kgほどに成長。農閑期の11月頃から1月にかけて1年分の食肉に加工する。卵の孵化から、ニラや米などの地域の食材を活用した飼料の配合割合、成長に合わせた飼育方法、加工出荷に至るまで、60年以上の歴史を学ぶ中で、自然豊かな大野見地区にどんどん魅了された松下さん。四万十川源流の美しい空気と水で育まれてきた食文化をもっと広めたいと「しまんとターキー」としてブランド化した。また、オンラインでの販売や七面鳥の味を知ってもらうため各地でのイベント販売などを通じて販路拡大にも尽力。七面鳥を知ってもらおうと県内外を飛び回るうちにいつしか「タンパク質王子」と呼ばれるようになり、地域の人たちにも「七面鳥の松下さん」と知られるようになった。2020年(令和2)に地域おこし協力隊を退任した松下さんは、引き続き七面鳥の飼育や組合の業務を担うため、松下商店を設立。「まずは毎年訪れてくれる人を増やしたい」と七面鳥と大野見地区をPRする。昨年7月には、その取り組みに惹かれた坂本創一さんが地域おこし協力隊として移住し、松下商店をサポートするようになった。松下さんが移住した年に約600羽だった年間飼育数は約800羽まで増加した。七面鳥に惹かれて訪れ、大野見地区に惚れ込んだ移住者たちの、未来を見据えた活発な取り組みが地域を元気にしている。










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