どこかモダンな雰囲気の「藍木スピーカー」。徳島市で長年建具製造を行ってきたヨシモクで作られています。徳島県は家具や仏壇、建具などの製造で発展してきた国内有数の木工製品の産地。幼い頃から音響機器に親しんでいた代表の吉崎準二さんは、地元の伝統工芸を取り入れた本格的な卓上スピーカーを手がけています。社員の声をきっかけに、素材には県産ヒノキや藍染めを取り入れました。軽いヒノキ材は低音で振動してしまうためスピーカーに使うことは稀ですが、意外にも小さな箱型との相性が良く、「想像以上の音が鳴った」と吉崎さん。フレームには建具に欠かせない組子細工(※)の技術を応用し、精密機器をぴったりと収めています。継ぎ目が分からないほど精巧な仕上がりで、ヒノキならではの柔らかさが手に心地よく馴染みます。
前面に張られた木綿布は、県内の藍染め作家・原田史郎さんによる手染めのもの。貴重な型紙コレクションから厳選した柄は現代にも通じるデザインで、職人が手作業で一枚ずつ張り込んでいます。深い藍色が際立つ無地と、木目・ボーダー・水玉といった個性豊かな全四種が卓上を彩ります。
吉崎さん曰く、自然素材独自の風合いや温かな響きも、音を楽しむための大切な要素。徳島ならではの手仕事が詰まったスピーカーで、音のある空間を手軽に楽しんでほしい、と笑顔を見せます。
※釘を使わず、木片で幾何学模様を組み上げる伝統的な木工技法