メニュー

ジャンピングふるさと どい書店 どい書店
コミュニティ拠点であり、時にはイベント会場にもなる「どい書店」は2020年(令和2)11月から喫茶店としても運営を開始。提供する料理やスイーツを担当しているのは、同年春に埼玉県から移住した「みーこ」さん(右)

若者たちが集う
新しい「田舎」づくり

どい書店 -do it shoten-

愛媛県内子町の山間部に位置する人口約2,000人の小田地区。
急激な少子高齢化が進んでいた同地区に、2019年(平成31)春、
ひとりの学生が古民家をシェアハウスとして借り受け移住した。
その後、同地区の移住者は10人以上増え、地元住民と移住者が
ともに集うコミュニティ拠点となった「どい書店」を訪ねた。

愛媛県内子町の山間部に位置する人口約2,000人の小田地区。急激な少子高齢化が進んでいた同地区に、2019年(平成31)春、ひとりの学生が古民家をシェアハウスとして借り受け移住した。その後、同地区の移住者は10人以上増え、地元住民と移住者がともに集うコミュニティ拠点となった「どい書店」を訪ねた。

「この場所で暮らしたい!」風景と人柄に一目惚れ

2017年(平成29)、東京大学大学院(以下:大学院)で都市計画を学び、まちづくり研究に携わっていた岡山紘明さんは、まちづくりの調査で初めて小田地区を訪れ、里山ののどかな景色と美しい農村の姿に感動したという。ちょうどその頃、アルバイトやインターンを経験し、都会で働くことに違和感を覚えていたという岡山さん。小田地区の”おいちゃんおばちゃん”の温かな人柄、ゆるやかな空気感に惹かれ、2019年3月に再訪した。その時出会ったのが、1925年(大正14)に村長宅として建てられ、10年ほど前までは「土居書店」として本を扱っていた古民家だった。「どうして小田地区だったのか、とよく聞かれるんですが、明確な理由はないんです。見た瞬間、ここだ!と(笑)」。まるで恋に落ちるようにして、小田地区に魅了された岡山さんは、それまで学んできた都市計画やまちづくりの知見を活かして、町に小田地区の活性化を提案。大家さん夫妻やご近所さんの「東大の院まで行っとるのに、こんな山の中におってええの?」という心配をよそに、同年4月には小田地区の地域おこし協力隊となった。

「大学院生が、古民家に住みながらまちおこしをしようとしている」という噂を聞きつけ集まってきたのが、小田地区で生まれ育ったフォトグラファー水本誠時さんと、その友人である松山市出身の映像作家Ko-kiさん。同い年だったこともあり、3人はすぐに意気投合。豊かな自然の中で温かいコミュニティを望む同世代が増えていることをそれぞれが実感していたこともあって、ここでできること、やりたいことを全部やろうと「do it(挑戦)shoten(以下:どい書店)」と名づけた拠点での活動がスタートした。

「どい書店」前で岡山さんと談笑する水本さん(左)とKo-kiさん(右)。「岡山くんと活動する中で、小田地区に誇りを持てるようになった」と言う
大家さんご夫妻と岡山さんは、大家と店子という枠を超え、まるで家族のような付き合い。地域の先輩としてさまざまなアドバイスをもらえるという
地域のおばちゃんから教わったレシピで手づくりするシフォンケーキ、大洲市にある焙煎所のコーヒー、内子町産の紅茶なども提供。この日も地元のおいちゃんが岡山さんに相談に訪れていた
喫茶店では、小田地区の棚田で手間暇をかけて作られた、甘くてモチモチとしたお米を使ったおにぎりを提供。収穫や手入れなどの手伝いのほか、田植えイベントなども行い、お米づくりをサポートする

若者たちを魅了するほっこり「田舎」暮らし

小田中央商店街の真ん中に位置する「どい書店」は、貸本屋も始めたことで、次第に地域の人たちがふらっと訪れては話をするコミュニティスペースとなっていった。そのうち、口コミやSNSを通じて「どい書店」を知ったという若者が訪ねてくるようになった。また、田植えや稲刈り、郷土料理作りなどの農村体験や地域の人たちと一緒にワインを楽しむ会などの交流イベントをきっかけに小田地区に移住したいという若者が増えた。

価値観が多様な時代になり、都会的な生活が合わないと感じた若者たちが地方に興味をもったことに加えて、新型コロナウイルスの影響でリモートワークがしやすくなったことも後押しとなった。シンガーソングライターやセラピスト、プログラマーなど、さまざまな職業の若者が小田地区に移住し、今では10人以上が暮らしている。20代から30代という移住者たちの誰もが口にするのが「岡山くんたちが発信している情報に惹かれて訪れたら、自分も小田地区を好きになってしまった」という言葉だ。「僕らの世代は、実家や祖父母の家がベッドタウンの戸建や便利なマンションという人も多い。都会しか知らない人間にとって、里山や農村での暮らしは、都会にはない魅力に満ちている。それが理由かもしれない」と岡山さんは言う。

「どい書店」のコンセプトは「おばあちゃんちよりもおばあちゃんち」。ここに来れば昔ながらの暮らしと人の優しさがある、そんな地域になればという思いが込められている。集まってきた若者それぞれが地域の中で役割を見つけながら自分のペースで生き、地域の人たちが見守り、協力する。それが小田地区の現在の姿だ。「どい書店」に集う人たちは、そのつながり一つひとつを大切にしつつ、10年先の小田地区を見つめて、次のまちづくりに取り組んでいく。

昨年からは築80年の歴史ある県の登録有形文化財「旧二宮邸」を活用し、一棟貸しの古民家の宿として運営
「どい書店」の数軒隣にある古民家は女性限定のシェアハウスとして活用
商店街にある元銀行の支店だった建物を借り受け、シェアオフィス&コワーキングスペースに
時には子どもたちが集まる場所にも
ワインを楽しむイベントの様子
荒れた田畑の活用を楽しみながらできたらという思いから「畑活(ハタカツ)」も

お問い合わせ

どい書店 -do it shoten-
住所 愛媛県喜多郡内子町小田118
電話番号 080-9879-3088
営業時間 木・金曜日:12:00〜15:00、土・日曜日:11:30〜16:00
定休日 月・火・水曜日
URL https://doitshoten.com
オンラインストア https://doitshoten.thebase.in
撮影のためにマスクを外している場合があります