欄間や障子といった建具に施される組子細工は、採光や通風を兼ねた装飾として日本建築に欠かせない伝統的な技術です。組子細工は建具職人が行うことが多く、組子と建具はいわば車の両輪のように発展してきました。しかし、ライフスタイルや建築様式の変化に伴い組子の需要は大きく減少。そんな中、高知県の建具店3代目の岩本大輔さんは麻の葉模様のカードケース「Asanoha」など新たなアイテムを通して、建具店が持つ優れた組子細工の技を発信しています。
7年間の修行後に帰郷し家業を継いだ岩本さんは、もともとITや宇宙開発など先進技術に興味があったことから、組子細工にも新しい素材や機械を積極的に採用。核となる技法や意匠を受け継ぎつつも、「まだ誰もやっていないことに挑戦したい」と2016年(平成28)に株式会社土佐組子を設立し、技術革新の進んだ現代だからこそできる新しい組子に挑戦しています。
技巧的で繊細な従来の表現に留まらず「消費者の温度感を捉えた、時代に沿ったものづくりが大切」と語る岩本さん。自らアートワークを制作して「土佐組子」の認知度を高める傍ら、手に取りやすい商品をラインアップし、若手の育成や技術継承にもつなげたいと考えています。