「大塚国際美術館」に展示されている古代から現代の西洋美術の名作は、陶板(板状の陶器)に焼き付けて原寸で再現した陶板名画。レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、ムンクの『叫び』、ミレーの『落ち穂拾い』など、知名度の高い作品も多く、名画全集のなかに迷い込んだような気分に浸れる。学芸部の山側千紘(やまがわちひろ)さんは、「陶板名画だからこそ生まれた3つのメリットが、多くの来館者を惹き付けています」と話す。その1つが、退色劣化を免れられない原画に対して、陶板名画は2,000年以上もそのままの姿で残せること。
陶板名画は展示環境に制約がない。照明で明るく照らしたり、日射にさらされたりしても傷むことがないのだ。そのメリットを最大限に活かしているのが、印象派の巨匠・モネの『大睡蓮(だいすいれん)』だ。これは屋外にある円形の壁面にパノラマのように展示されている。原画はフランスのオランジュリー美術館の室内に飾られているが、生前のモネは『この作品は自然光のもとで見てほしい』と願っていた。「日差しがあたると、描かれた池の水面がきらめくようにも見えます。これこそがモネが理想とした世界なのだと確信しました」と山側さん。例年、夏には作品を取り囲む池に本物の睡蓮が咲き誇り、アートの花と本物の花の競演を堪能できる。