明石海峡大橋が開通し、人々が四国への誘客拡大に期待を寄せた1998年(平成10)、「ひろめ市場」は10月に開設された。発案者は、帯屋町2丁目商店街振興組合の当時の理事長。「景気悪化に伴って商店街の客足が減ってきており、何とか改善しようと考えたのが、食のテーマパーク(集合屋台村)構想だったのです」と説明するのは、「ひろめ市場」を運営する有限会社ひろめカンパニーの代表取締役を務める西岡剛(つよし)さん。
「ひろめ市場」が開設される前、約1,200坪の敷地は、ホテル建設などの計画が頓挫し、150台収容の有料駐車場として活用されていた。300年以上の歴史を持つ「土佐の日曜市」が開かれる追手筋や高知城はすぐそばにあり、官公庁も徒歩圏内と立地は申し分ない。そこで理事長らは試行的に、よさこい祭りの開催期間中に駐車場を休業してフードフェスを開催。手応えを得たことから、「ひろめ市場」の開設計画を具体的に進め始めた。
建物は3階建てで、飲食店テナントが入るのは1階のみ。2、3階は有料駐車場とすることが決まった。
並行して入居者を募集したところ、飲食店、物販店からの想定を上回る応募があった。その中から、提供する献立や商品に高知らしさのある店舗が選ばれた。
広さだけでいえば、店舗はその倍の数でも入居できる。だが、休憩や食事をするスペースを十分に用意するために店舗数を抑えたのだ。「結果的にはこの英断が、ひろめ市場を成功に導いたといえます」と西岡さん。見知らぬ同士が8人掛けの大テーブルで相席となり、会話を交わしながら高知の食を楽しむという斬新な場は、好奇心旺盛な地元民を惹き付け、初日から大盛況となった。