高知県、愛媛県の両県にまたがる四国カルスト高原を有する高知県梼原町。町面積の約9割を森林が占め、そのうちの大半が樹齢45年を超え、伐採に適しているという。林業従事者の高齢化が進む中で森に囲まれた町を未来に受け継ぐためには、森林のことを知る林業技術者の育成が何を置いても必要。そう考えた梼原町は林業技術を時代にあった形で継承しようと「梼原令和の森林づくり協議会ReMORI(りもり)」を創設。林業を次世代へとつなげる取り組みを取材した。
森とともに生きてきた町の
100年後に向けた取り組み
ReMORI(りもり) ー梼原令和の森林づくり協議会ー

100年後も持続する町であるために必要なこと
「梼原町は、昔から森林とともに生きてきた」と話すのは、梼原町森林の文化創造推進課の立道斉(たてみちひとし)さん。かつては、さまざまな資源として活用するために木を植え、森を育て、その木を伐採して活用するなど、多くの人たちが森林の中でともに働くことで暮らしてきた。その中で自然と受け継がれているのが、人も森林の一部だという考え方。町では1990年代から、森林資源の活用や環境保全について取り組みを開始。町産のスギやヒノキを活用して公共施設や住宅を造ることを推奨するなど、人と自然の共生を高める町づくりを進めてきた。今や日本を代表する建築家である隈研吾さんが木造建築を手がけるきっかけとなった町としても知られている。
2000年(平成12)には森林づくりの理念を明らかにした「梼原町森林づくり基本条例」を策定。2009年(平成21)には低炭素型の地域モデルを構築する「環境モデル都市」にも認定されている。SDGsという概念がまだなかった頃から100年後に地域がどうあるべきかを考えてきた梼原町だが、他の中山間地域と同様に過疎と高齢化に直面している。「梼原が梼原らしい姿を維持するためには森林を守っていくことが必要。そのためには、梼原での暮らしを持続するための担い手の育成が急務だったんです」と立道さんは言う。そこで2020年(令和2)に誕生したのが、林業の担い手を育成する「梼原令和の森林づくり協議会ReMORI(以下:ReMORI)」。林業事業体や建設事業体などの地元事業者と林業の担い手候補を結ぶことで、林業の経験がない人であってもじっくりと経験を積んでいくことができる団体だ。

時代に合わせた方法で林業技術者の育成を
「ReMORI」の隊員は、段階的に技術を修得できるようさまざまな事業体で研修を受ける。長年活躍してきた熟練の林業家から直接指導を受けるとともに、高知県立林業大学校などで開催される講義にも参加。林業で生計を立てていくために必要な資格も取得する。そうして林業を営むのに欠かせないスキルを育んでいく。
といっても単に林業技術を身に付けてもらい、林業従事者を確保するための育成機関ではない。林業研修を受ける中で、今後どのように森林と関わりたいかを考え、自分の目指す方向性を定めて、それに向かってスキルアップできる。森林を整備することの大切さを伝え、人間が森林や自然と寄り添うような暮らしの在り方を考えていくためのナビゲーターとしての役割も担う。「森の現場には、膨大な量と幅広い役割の仕事がある。それぞれの興味や能力に合わせた働き方を選択して梼原で定住してくれるといい」と立道さんは話す。
「ReMORI」にはこれまで、3年間の研修期間を終えて卒業した人を含めて6人の隊員が在籍。研修期間中に、並行して自分の興味に合った実践的な副業に取り組む隊員もいる。下村智也さんは、森林のことや林業について知っていく中で「伐採だけではなく、次の木を植えないと次世代に森林資源を残せないと感じた」と言う。そこで、森林を育て、森林の大切さを伝えるための任意団体「KIRecub(きりかぶ)」を発足。「ReMORI」の隊員のほか森林に関心のあるメンバーとともに育林作業や育苗作業を請け負いながら、広葉樹の苗を植える「植林体験」などのイベントを行っている。
今までの林業にとらわれない形に挑戦する、新たな時代の林業の担い手たちが木々のようにスクスクと育つのは、温かく見守り支える周囲の理解があってこそ。先人たちが守り続けてきた梼原町の森林は、100年先の未来へ向け新たな魅力を得て生き続けていく。




お問い合わせ
住所 | 高知県高岡郡梼原町梼原1426-2 地域活力センター「ゆすはら・夢・未来館」2階 |
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担当部署 | 高知県梼原町 森林の文化創造推進課 |
電話番号 | 0889-65-0811 |
URL | https://yusuhararemori.jp |